ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章10話 セシリア、誘う。(2)
「まず、前提から確認しておきたいんだけれど、光属性の魔術適性が10、つまりマックスなんだよね?」
「うん」
「すごいなぁ~、セッシーでさえ9なのに」
すごい人に、君の方がすごい! と、言われても、なかなかイヴは本気に思えなかった。
いや、本気に思えない、という言い方をするから、イヴがセシリアを疑っているように感じるかもしれないが、そうではない。
単純に、現実味が帯びなかったのだ。
しかし、セシリアは違う。彼女は本気も本気で、いつかこの子は自分さえも超えるカーディナルになるかもしれない、と、期待を込めてその発言をしたのだった。
「で? 【絶光七色】も使える?」
「うん」
「ふむふむ」
資料に間違いはなかったし、失礼は重々承知の上だが、調査のためにウソを見抜く魔術をキャストしているが、ウソの反応は一切見当たらない。
なのでセシリアは問題なし、と、判断して、次の話に――、
「イヴちゃん、この世界には、論理的な人間と感覚的な人間がいます」
「うん? う、うん、わたしもそうだと思うよ?」
「イヴちゃんはどっちかな?」
「たぶん、感覚の方」
「そっかぁ、なら、頑張って、なるべく言葉にして、ツァールトクヴェレで、お姫様の身体から闇の魔術の匂いがした時のことを説明できるかなぁ?」
「説明って言っても……そこまで言葉にすると長いモノじゃないよ?」
「と、いうと?」
「セシリアさんは味覚には3段階ある、みたいな話を聞いたことありますか?」
「3段階? 甘い、辛い、苦い、酸っぱいの4つみたいなヤツじゃなくて?」
セシリアが訊くも、イヴは首を横に振る。
で、セシリアは頭の上にクエスチョンマークを浮かべることに。
「3段階っていうのは、料理人レベルの味覚、一般人レベルの味覚、味覚音痴の味覚、ってヤツだよ」
「ああっ、感覚の鋭敏さの話だね♪」
「たぶん、わたしの闇属性の魔力の残滓に対する感覚は、言うなれば料理人のレベルなんだよ。みんなが気付かなくても、ただ感覚が鋭敏という、それだけの理由でわかっちゃうんだよ」
「うんうんっ、なるほど、なるほど~」
セシリアはお気楽そうに相槌を打つが、しかし、彼女だって頭の中は真剣だった。
なぜならば、その理屈でいうと、やはり、特務十二星座部隊の自分よりも、イヴの方が敵の魔術を察知する才能に秀でている、ということだから。
そして、セシリアは(どうしよっかなぁ~)と腕を組んで天井を見上げる。
今日、この日、セシリアが参謀指令室から言い渡されたことはいくつかある。
本当に光属性の魔術の適性が10であることと、【絶光七色】が使えることの確認はもうクリアしたので、残りはより深い事情聴取と、魔術による全身のスキャンと、そして『2つのとある提案』であった。
「ねぇ、イヴちゃん、座ったままでいいんだけど、魔術をキャストしてもいいかな?」
「魔術って、どんな?」
「子供の頃、魔術の適性を検査したことがあったよね? あれの、超! 超! 超! 精密バージョンと思ってもらえればOKかな」
「うぅ、注射とかする?」
「あはは、しないしない。セッシーは枢機卿だけど、医師の資格は持っていないからね」
「なら、どうやって?」
「子供の頃に血液を採取したのは、血液からソウルコードと呼ばれるモノを分析できるから。王国の各所に点在する地方都市には、それ相応の研究施設があるけれど、流石に子供たち全員を、馬車に乗っけてそこまで連れて検査して、また馬車で送ってあげる――なんてことしたら、予算を食うしね。だから、子供たちの身体の代わりに、血液だけを運ぶのさ」
「――つまり、身体があれば注射の必要はない、ってこと?」
「そういうこと」
「わかった、なら、どうぞだよ」
「うんっ、ありがとー」
お礼を口にすると、セシリアは指をパチンッ、と、鳴らして、イヴに魔術の適性、厳密に言うならば、ソウルコードを解析する魔術をキャストした。
瞬間、魔術陣がイスや服ごと、イヴの頭の先からつま先まで、繰り返すこと5回ほど、上下に行ったりきたりする。
そして、スキャンが終了しそうになると――、
「ぅん?」
と、訝しむような声をセシリアが漏らす。
「ど、っ、どうかした?」
「いや、ううん、なんでもない、なんでもない!」
誤魔化しながらセシリアは、立ち上がり、スキャンの結果が自動で出力される、いわゆる魔術による自動手記の方へ足を運ぶ。
そして魔術による自動手記で出力された紙を確認すると――、
(なに、このソウルコード? 健全なる魂は健全なる肉体に宿る、とはよく言ったもので、魂と肉体は切っても切り離せない関係にあるんだけど……、なんかイヴちゃんのソウルコード、生まれる前の時点で改竄されていない?)
例えば、この世界にも整形手術は存在する。
が、顔でも身体でも、整形すればそのぶんのしわ寄せがどこかの場所に現れるのは道理というものだ。二重まぶたの手術なら、全然目立たないとはいえ、まぶたに糸を留めることになる。豊胸の手術なら、もしかしたら胸の形、やわらかさが不自然になる、ということもある。
つまりイヴのソウルコードの改竄は――、
(なんていうか、言っちゃ悪いけれど、でも的確な表現が他にないから言わせてもらうけれど、改造人間に近いのかな? いや、改竄されたのが生まれる前という意味では、この間、発表されたばかりの言葉を使うなら、デザイナーベビー? とにかく、身体じゃなくて魂という、一見、目に見えない部位だから、そこまで露骨になっていないけれど、魂が整形されまくり。果たして、光属性の魔術に特化させるための整形なのか――、はたまた、別の理由の整形なのか――)
そして――、
それから約1時間後――、
「イヴちゃん、今日はありがとうね?」
「ううん、こちらこそ、お忙しいところ、ありがとうございました、だよ」
大聖堂の敷地の前、石畳の歩道で別れの挨拶を交わすイヴとセシリア。
すると、セシリアはなぜか、一瞬だけ逡巡したような様子を見せる。
なにか言い忘れたことでもあったのだろうか?
なにか言うか言わないか、迷っていることでもあるのだろうか?
なんとなくそう思ったイヴが、可愛らしく小首を傾げる。
しかし、セシリアは確かに逡巡したが、後ろめたかったからそれをしたのではない。この提案をしたら、イヴがどんな反応を示すか考えてしまい、計算してしまい、それが逡巡に繋がったのだ。
「イヴちゃんに、2つ、提案したいことがあるんだけど、最後に少しいいかな?」
「? うん」
「まず、1つ、これからも七星団に協力してほしいの。魔王軍を倒すために。主な役割は闇の魔術に対してのセンサー、なんて、地味な役割になっちゃうと思うけど」
「了解だよ!」
「そんなあっさり決めていいの?」
「うん! 七星団に協力するってことは、お兄ちゃんの役に立てるってことでもあるんだよ」
「そっか――、なら、次の提案の方が、イヴちゃんにとっては重要なのかな?」
「?」
「所属したら、1つの組織で2つの部隊に所属することになる、なんて展開も、イヴちゃんの場合は充分にありえると思うけれど――」
「――――」
「センサー、魔術解析班とは別に、イヴちゃん、戦闘要員として、七星団に入団してみない?」
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