ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章1話 ロイ、忙しい!(1)



 前回の魔王軍との大規模戦闘と経て、ロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクはグーテランドの王女、ヴィクトリア・グーテランド・リーリ・エヴァイスと結婚し、ついには王族の一員として名を連ねることとなった。
「きゃ~~っ、ロイ様~~っ♡」「大好きです~~♡ ずっと憧れていました~~♡」「ご結婚おめでとうございます~~っ♡♡♡」「ロイ様が幸せなら私たちも幸せです~~っ♡♡♡」
 そしてロイが王族になった日から十数日後、星下せいか王礼宮おうれいきゅうじょうの敷地の入り口には多くのロイファンが集まっていた。
 1年が始まって3番目の月、アクアマリンの月の16日、日曜日。 なぜこの日に限って多くのロイファンがここに集まっているのかというと――、
『みなさん、こんにちは。ロイ・グロー・リィ・テイル・グーテランド・フェイト・ヴィ・レイクです。あはは、まだ自分の名前にグーテランドって入れるのに緊張しますね』
 ふいに、ロイが星下王礼宮城の、王族が演説をするためのデッキから姿を現した。 しかも声を大きく反響させる無属性・音系統のアーティファクトを手にしながら。
 瞬間、集まっていたロイファンの女性たちが一斉に黄色い悲鳴を上げる。
『今日はボクが王族になって初めての国民のみなさんとの交流の日です。国王陛下が1日でも早く国民のみなさんにボクのことを覚えてもらえるよう、恐縮ながらセッティングしてくれました。ほんのわずかな時間ではありますが、今日こうして、ここに集まってくれたみなさんとお話できれば幸いと思います』
『みなさま、ごきげんよう。ヴィクトリア・グーテランド・リーリ・エヴァイスですわ。本日はわたくしの夫であるロイ様との交流の日。節度は保ってほしいものですが、王族の先輩として、ぜひぜひ、ロイ様とは交流を深めていただいてほしいですわ。どうぞ、心ゆくまでお楽しみになさってくださいまし』
 こうして、交流の日――ということにはなっているものの、集まった国民の99%が女性のロイファンということを鑑みるに、事実上、ロイとの握手会となっているファン感謝デーは始まった。
 ちなみにヴィクトリアは王女として、ロイがいる演説をするためのデッキに並んでいるが、彼女の他には――、
『みなさま、列の移動を開始するお時間でございます! えぇ、っと、徹夜組の整理券の番号は104番まででございますね。それでは! 105番のお方から、順番に! 番号を守って! そして並んで! 焦らず急がず! ゆっくりと! お進みください!』
 どこからともなく音響を操作するアーティファクトを使っているクリスティーナ・ブラウニー・ハローハウスロウの声が聞こえてくる。 が、実はクリスティーナはすでにロイの後ろで控えていた。 単純にロイの背後であいさつが終わる頃合いを見計らって、そのタイミングでアナウンスしただけだ。
 そしてアナウンスを終えると、クリスティーナは可愛らしい小走りで、ロイのすぐ近くまで寄ってくる。
「ご主人様も存じているはずでございますが、一応、わたくしが交流会場となっている大広間までご案内させていただきます♪」「うん、ありがとう、クリス」
 自分の主が多くの人から好かれて嬉しそうなクリスティーナ。 そんな彼女にロイは見ていて気持ちがいい笑みを浮かべた。
 結果、ロイとヴィクトリアとクリスティーナは、3人揃って握手会の会場まで赴くことに。
「それにしても、王族ってこういう国民との交流もするんだね」「微妙なところですわね。ロイ様は特別ですもの」
「特別?」「王族とは国家の象徴で、国民の代表ですわ。そしてロイ様は今や魔王軍の幹部の1人を討った王国の英雄ですわよね? 当然、お父様はロイ様に国民のみなさまと、ただ触れ合うのではなく、王族としての自覚を持つために、改めて触れ合ってほしいと願っているはず。それでも、大臣たちにロイ様を利用する計画がないと言えば、恐らく否ですわね」
「利用?」「ご主人様、僭越ながら恐らく、王国上層部のイメージアップのことでございます」「それぐらいなら、全然利用のうちに入らないよ」
「一応、わたくしも王国上層部の人間として言わせていただきますが、利用と言うと少し語弊がありましわね。そこまで悪いニュアンスではなく、ロイ様が国民と触れ合えば、ロイ様本人も王族としての自覚が芽生えますし、イメージアップにも繋がり、一石二鳥でラッキー。このような感じで、決して悪意があったわけではありませんわ。まぁ、大臣であるならば、催し物を企画することになった以上、一定の王国の益になる効果を出さないといけないわけですので、そこらへんは目を瞑ってくださると幸いと言いますか――」「全然お安い御用だよ。ボクなんかが1つの国家のイメージアップに努められるなんて、すごく名誉なことじゃないかな?」
 ロイが言うと、ヴィクトリアは上品に口元を手で隠して、楽しそうにクスッと笑った。
「あれ? ボク、なにかおかしなこと言ったかな?」「いえいえ、そうではありませんわ。ただ――」
「ただ?」「ロイ様はやはり、ロイ様ですわねぇ、と」
「? よくわからない……。クリスは?」「申し訳ございません、ご主人様。わたくしも王女殿下と同じく、今の発言を聞いて、ご主人様はやはりご主人様でございますね、と、思ってしまいました」
「えぇ、クリスまで!?」「そうでございますね――、なんと申し上げますか、ご主人様は平常運転と申しますか、前回の一件を経て、変わったようで、一番大切で優しいところは変わってないと申しますか――」
「人なんて、考えが変わることがあっても、人柄が変わることは滅多にない、ということですわね。ねぇ、クリス様?」「左様でございますね、王女殿下」
 仲良しな女の子同士の友達のように、ヴィクトリアとクリスティーナは微笑み合う。 その様子をロイは(なんか2人共、いい感じだね)と思いつつも、結局、なんで自分が笑われたのかを理解できず、少しだけ首を傾げてしまった。
「しかし僭越ながら、恐れ多くも王女殿下が、メイドであるわたくしを様付けでお呼びになられる必要は――」
「誰に対しても様付けで呼ぶ。これはわたくしの理念ですわ。メイドがいなければその主人は不便を覚えてしまう。庭師がいなければ庭の手入れが行き届かなくなる。コックがいなければ美味しいディナーが食べられない。身分に貴賤きせんはあっても、仕事に貴賤はありませんもの。王族であろうと使用人であろうと、みんながみんなで、1つの王国を築いている。だからこそ、わたくしは王族として、王国を成り立たせている1人1人を様付けで呼ぶんですの」
「――そうでございましたか。これは大変、申し訳ございませんでした」
 言うと、クリスティーナはヴィクトリアにさらに微笑む。 ヴィクトリアの方も、気分をよくしたようで、わずかに足音が軽くなった。
「それで、ご主人様っ、そろそろ会場に到着でございますが、改めて本日の予定をご確認いたします♪ ただ今の時刻が9時47分。10時丁度に国民のみなさまと交流開始。13時まで続けたあと、1時間の休憩を挟み、さらにもう2時間、国民のみなさまと交流でございます。あくまでも、どれだけ時間がかかってもこのぐらいには終了が見込める、という形でございますが。さらに16時からは新聞記者の取材と撮影が入っております。そして大臣のみなさまと友好を深めるためにディナーをいただいたあと、七星団の一員として訓練でございます」
「そういえば、最近、ロイ様のことを巷では騎士王子って呼ぶそうですわね。王族になったあとも七星団に所属していますので」「えぇ……、なに、その、ハンカチ王子と姫騎士を足して2で割ったような愛称……」
 ハンカチ王子と姫騎士という単語の意味がわからなくて、小首を傾げるヴィクトリアとクリスティーナ。 一方でロイは(これが日本だったら労働基準法に違反するのかなぁ?)と、漠然と今の忙しさにそんな感想を抱いた。


「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ペンギン

    いい忙しさですね!w頑張ってください!

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