ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章10話 肉! そして酒!



 空は雲1つない清々しいほどの晴天。
 降り注ぐのは麗らかなお日様の光。
 冬にしては比較的暖かい気温で、冷たい北風は休業日。

 そんな日和にリタは大きな声で元気よく――、

「第1か~~い! みんなで焼肉大か~~いっ!」

「いえ~い!」 と、可愛らしくシーリーン。

「さぁ、今日は体重を忘れて食べまくるわよ!」 と、ご機嫌なアリス。

「みんなで焼肉なんて初めてですわ!」 と、瞳をキラキラさせているヴィクトリア。

「リタばっかり司会してズルいよぉ~っ!」 と、プンプンしているイヴ。

「まぁまぁ、もともとリタちゃんが弟くんと約束していたことですしね」 とにこやかなマリア。

「はぅ……、美……味しそうな匂い……が、し、ます……」 と、わかる人にはわかるが、いつもよりワクワクしている感じのティナ。

「みなさま、なにか足りない物がございましたら、わたくしまでご用命ください」 と、ここでもパーフェクトメイドさんスマイルを浮かべるクリスティーナ。

 そう、ロイとヴィクトリアの初夜から数えて初めの土曜日。
 もともとリタがロイと約束していたこともあり、ロイたちは焼肉パーティーをすることになったのである。

 場所は、ヴィクトリアの参加を王国の頭が固いお偉いさんに許してもらうために、まさかの星下王礼宮城の庭の一部。
 参加者はロイとリタはもちろんのこと、先刻発言した女の子たちに加えて――、

「ったく、なんで俺まで……」
「いいじゃないですか、先輩。このお肉、国王陛下からの頂き物ですよ?」

 おまけでレナードも参加することになっていた。
 まさか今回の焼肉パーティーへの招待でお相子にできるとはロイも考えていないが、今回、彼はレナードに返しても返しきれない借りを作ってしまったのだ。犬猿の仲とはいえ、ケンカするほど仲がいい、と、いうことで、焼肉パーティーに招待してもバチは当たらないだろう。

「――、俺を招待したこと、後悔すんじゃねぇぞ?」
「どういう意味ですか?」

 と、ロイは不思議そうに首を傾げる。
 が、そんなロイのことを無視して、レナードは先ほどから足元に置いていた、持参してきたバッグの中に手を突っ込む。
 そこからできてきたのは――、

「酒だアアアアアアアアアアアアアアア!」
「まだ真っ昼間ですよ!?」

「安心しろよ、妹とワン子とニャン子には、流石に飲ませねぇからよォ」
「あらあら、レナードさん。お酒の趣味がいいですね」

 いつの間にか近付いてきたマリアが、まだバッグの中に残っていた酒のラベルを見て感心する。

「そういえば、社交辞令じゃなく、まともに話すのは初めてだなァ、ロイの姉貴」
「あっ、以前にも言わせていただきましたが、弟くんの件、本当にありがとうございました」

「ハッ、もう何回も聞いたっつーの。それに、俺の方もロイが死んだままだと、張り合う相手がいないからな」
「クス、弟くんはいいライバルに巡り合えたようですね」

「やめてよ、姉さん。そう言われると恥ずかしい……」
「アッハッハッ、珍しいモンを見せてもらったぜ。女の子たちにモテモテのロイでも、姉貴には敵わねぇようだな」

 からかうようにレナードは笑う。
 と、そこでシーリーンとアリスもやってきた。

「うわぁ、高そうなお酒だねぇ」

「っていうかレナード先輩、これ、けっこうありますけれど、何人分のつもりですか?」
「知るか、誰がどのぐらいのペースで何リットル飲めるかなんて知らねぇし、飲めるヤツが飲めるだけ飲めばいいんだよ!」

「あぁ~っ、お兄ちゃんたちだけズルいよぉ!」
「アタシもお酒、飲みたい!」

「いやいやいや! イヴもリタも、まだお酒飲めないでしょ!? ここ、星下王礼宮城の敷地内だからね!? この国で一番、法律を破ったらいけない場所だよ!?」
「みなさま、お酒もよろしいですが、そうこう話している間に、クリスティーナお手製の焼肉もできあがりつつありますからね♪」

 …………。
 ……、…………。

 そして、数十分後、中等教育の下位の3人とクリスティーナを除いた全員は――、

「オイ! ロイ! テメェ、今度はお姫様と一線超えたんだろ!?」
「レナード様……っ、なんてことを言うんですの!?」

「先輩、セクハラですよ!?」
「アァ!? オイ! アリスとシーリーンも聞きてぇよなぁ!? ロイとお姫様の初めての夜をよォ!」

「あはははははは、ロイくん、話して~っ」
「そうよ、ロイ! 話なさい!」

「えぇ……」
「おっと、ロイ、酒がまだまだ足りてねぇよォだなァ! 気化する前に、ほら! イッキ、イッキ!」

「今、気化って言いました!? あまつさえ、そんな物をイッキしろと!?」
「おおっと、ヴィキー、いい飲みっぷりだねぇ! シィも負けないよ!」

「あ~~っ、あ~~っ、わたしは聞きたくありませんからね~~っ! 弟くんの夜の営みなんて、姉として聞きたくありませんからね~~っ!」
「そう言ってマリアさん! ちゃっかりウソを見抜く魔術をキャストしているじゃないですか! あはははは!」

「ヒック……、アリス様! うるさいですわ! 今、わたくしがロイ様とのアレを思い出して実況して差し上げようと思いましたのに!」
「なにを!? ねぇ!? 今、ヴィキーはボクとのなにを実況しようとしたの!?」

「そりゃナニだろ! あはははははははははは!」
「先輩、表に出ろ!」

「オイオイ、ロイも酒、回ってきてんじゃねぇか! ここ、すでに表だぜ!?」
「あぁ! そうだ! レナード先輩!」

「なんだァ!? アリス!?」
「ずっと言おうと思っていたんですけど!」

「あぁ! ロイを振ってか~ら~の! 俺に愛の告白か!?」
「違います!」

「ゴハァ!?」
「でも! 以前、先輩のことを振ってすみませんでした! けれど! 交際を断った私が言うのも、先輩の気持ちを考えていないことになりますが! 私と友達になってくれませんか!?」

「――――」
「ロイくん! 先輩が喜びのあまりに気を失ったんだけど!?」

「水をかければもとに戻りますかね?」
「水はないんで酒で我慢してください、先輩!」

「ごっばばっばばばばば! ロイ、テメェ、殺す気か!? 水がねぇわけねぇだろ!?」

 ――盛大に酔っぱらっていた。

 …………。
 ……、…………。

「ねぇ、クリス? 今、アリスさん、レナード先輩にけっこう大事なこと言ったと思うんだけど……あれでいいのかなぁ?」
「お嬢様にはまだわからないとは存じますが、あれでいいのでございます。こういう日に、こういう集まりで、お酒を飲みながら、酔いから醒めたら忘れるとしても、大事なことなのにこんな適当な会話で伝えることになったとしても、ほら、楽しそうではございませんか?」

「――うん、そうだよね。――確かにそのとおりだよ!」
「そ、う、い、え……ば……、レナー、ド……先輩、って、ア……リ……ス先輩に、振られた……ん、でした、よね……?」

「まぁ、だから、あの2人の間にあったギクシャクも、お酒のおかげで解消ってことじゃないの? 恋人としては無理だけど、友達として、って。いいと思うぜ、アタシは。普通、告白を断ったら互いに気まずくなるはずなのに、それでも友達になれるっていうのは――なんか、こう、いいよな!」
「リタ、語彙力が少ないよ」

 そして、ふと、イヴは酒を飲んでいて、いつもからは想像できないほどはしゃいでいるロイに視線を向けた。

 楽しそうだった。本当の本当に、心の底から、楽しそうだった。
 ただ生きているだけではなくて、生き生きとしている。

 アリスの時に、ロイは今までの自分に対しての答えを出して成長した。
 なら今は、成長した自分に対しての答えを出して、さらに成長したのだろう。

 それに気付くとイヴは(なら次は、さらに成長した自分に対しての答えを出して、さらにさらに成長するのかな? それなら無限ループだよ!)と心の中で呟くも、しかし、言葉にするのはやめて、気付けた事実を心の内に秘めておく。

 たぶん、他のみんなも気付いている。
 それでも声に出して言葉にしないのは、きっと、野暮だからだ。

 年齢のせいで酒を飲めなかったのは残念だったが、しかし、イヴは自分の兄を見て、ロイを見て、「お兄ちゃん、よかったよ」と、小さく呟いた。

 終わり良ければ総て良し。
 先日、ロイが気に入り始めた言葉を、彼の酔いながらも笑った顔を見て、イヴもまた好きになり始める。

 イヴに知る由はないが、特務十二星座部隊のシャーリーは、ロイが直るのは難しいと断言してしまった――が――意外なことに、少しずつだが、しかし確かに、ロイは今、現在進行形で直り始めている。
 もしかしたら、ロイが直る日も、そう、遠くはないのかもしれなかった。

 と、そんなことをイヴが思っていた一方で――、

「そういえばヴィキー?」
「ヒック、なんですの?」

「ヴィキーが酔っているから、覚えておいてほしくなから、今のうちに訊いちゃうんだけど……」
「? なにかありましたの?」

「ヴィキーにとっての好きか否かの基準って、相手と結婚できるか否かなんだよね? なら、相手と結婚できるか否かの基準ってなんなのかな?」

 別に、今のロイの質問に深い意味はなかった。
 本当の本当に、話題として以前からストックしてあったから、なんとなく今訊いただけだ。

 しかしヴィクトリアは上機嫌に頬を赤らめながら――、
 ロイに抱き付いて――、

「そんなこと、わたくしも存じませんわ」

「自分のことなのに?」
「でも、ロイ様と結婚できるのは事実ですわ。と、いいますか、実際に結婚しておりますし」

「そうだね」
「だって、そうではありませんか! ロイ様はいわば勇者。そして、勇者と結ばれるのはお姫様だと、昔から小説でも演劇でも、相場が決まっているのですもの」

「イジワルを言うけれど、相場だからボクと結婚したの?」
「まさか! 繰り返しますが、ロイ様は勇者ですわ。そして勇者ともあろう者が――」

 するとヴィクトリアは少し背伸びして――、
 ロイの頬にチュッ、と、キスしたあと――、

「――カッコよくない、なんて、ありえないですわ」

「――――」

「その勇敢さに、王国のお姫様が慕うようになってしまい、結ばれ、それで、物語はハッピーエンド! ですのっ」

 優しくはにかむヴィクトリア。
 対して、ロイはこそばゆくて、照れくさそうに微笑むばかり。

 つまりヴィクトリアは、相場だから結婚したのではなく、結婚するのが相場、と、そう言いたいわけだ。

 嗚呼、まさしくヴィクトリアの言うとおりだろう。
 勇者の勇敢さをお姫様が見初めて、それで物語はハッピーエンド。

 こうして、ロイの物語の第2部は終わるのだった。


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コメント

  • HARO

    いいね~
    こんな、どんちゃん騒ぎやってみたい

    2
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