ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章5話 幼女の姿、そして伏線回収(2)
「まず前提として、ロイさんはこの間、ようやく七星団の一員になってくれました。つまりこれで、説明する理由はなかったとしても、仮にあった場合、やりようによっては、それこそ今のように説明できる条件は整えられるようになった、ということですわね」
「――――」
「それで、理由についてなのですが、いろいろと自分なりに考え、何個か理由がある中、その何個かある理由の共通点は、すでにロイさんには幼女の姿を見せている、ということですわ」
「あっ、そういえば、遠征前の挨拶の時は大人バージョンでしたよね?」
「ええ、そう、人前では極力、大人バージョンでい続けて、幼女の姿の時はアリシア以外の名前を使っていますわ。だから、ロイさんには中途半端に隠すよりも、全て情報を与えて、周囲に隠す必要性を理解してもらった方が合理的ですわねぇ、と」
「そうです――、ね? ……あれ?」
「どうかなさいましたか?」
いや、待て、と、ロイの脳裏でなにかがざわつく。なにかが違う。なにかが間違っている。なにかがなにかを隠すように被さっている。直感にすぎないが、しかし致命的に。
ロイは物事を論理的に考えるのが苦手だ。例えば、誰かになにかを理路整然と説明されれば理解することも難しくないが、同じく例えば、自分が誰かになにかを論理的に説明するのは苦手だった。
だから、ロイは考えることをせず、記憶をよみがえらせる。
そちらの方が自分の性にあっていたから。
そして――、
「なるほど、謀りましたね、アリシアさん」
「――――」
真剣な顔付きで指摘するロイ。
翻ってアリシアはニコニコしているだけ。
「アリシアさんはすでにボクに幼女の姿を見せているから、ボクに事情を説明した、って説明してくれましたが、そもそも、ボクが最初にあなたの幼女の姿を見た時、あなたはまるで隠そうとしていなかった」
ロイが思い返すのは初対面だったレナードとライバルとして初めて決闘する時、その1日前のことと、十数分前のことの、2つ。
1日前にロイはお遊びと称されてアリシアと戦って――、
その翌日、レナードとの人生で1回戦目の少し前に、学院長室に呼び出されて、そう、大人バージョンではなく幼女の姿のまま、自分は特務十二星座部隊のアリシアだ、と、自己紹介されて――、
――どこからどう考えても事情を隠そうとしていない。
むしろ、アリシア・エルフ・ル・ドーラ・オーセンティックシンフォニー=幼女の姿ということをひけらかしている感じさえある。
「――つまりアリシアさんは、意図的に幼女の姿をボクに見せて、無論、説明するハメになってしまうが、それと引き換えに、ボク、つまりエクスカリバーの使い手を、いずれ七星団に徴兵して自分の近くに置けるように、あの時、あの段階から計画していた。そうですよね? 説明する必要性があるということは、一見するとデメリットかもしれませんが、説明するためにはボクを入団させる必要性、つまりメリットがあるということですから」
ロイが指定すると、アリシアは心底嬉しそうに口元を緩める。
やはりこの少年は別格だ、と、表情だけで言葉が伝わってきそうなぐらい。
簡単にまとめると、アリシアの作戦は、意図的に秘密を明かして、秘密を説明するから仲間になってね~、という白々しいモノだ。小説なんかでよくある、仲間以外に秘密がバレたから、その人を仲間にすれば問題ない、仲間以外に秘密がバレたことにならない、というアレを意図して逆手に取ったわけである。
「正解ですわ。私はあの時からロイさんのことをほしかったから、その段階で幼女の姿をひけらかしていたわけです。ですが、勘違いしないでほしいことがいくつかあります」
「勘違い?」
「まず、ロイさんを私の側近にする、という計画はアリスの結婚騒動の時点でありましたが、アリスの結婚騒動を都合がいいから使わせてもらう、と、考えてあのような展開になったのではありませんわ。感覚としてはアリスも救いたいし、ロイさんに関することもクリアしたくて、どちら1つを選べないから一石二鳥を狙って、そして成功した、という感じに近いです」
「他には?」
「もともと、それこそロイさんがエクスカリバーを例の石から抜いた日から、あなたが七星団に入団することは既定路線でした。まぁ、本当はあと数年、様子見のはずだったのですが、ロイさんが優秀なのでこんな早くになってしまいましたが」
「それで?」
「以前にも言ったかもしれませんが、私はあなたとジェレミアという貴族の息子との決闘を、エルヴィスさんに誘われて観戦していました。そこで、私はあなたに入れ込むようになり、例え七星団の一員になっても比較的、安心でき、生存率も高い自分のグループに入れようと考えたわけです」
「入れ込む?」
「あらあら、うふふ、そこまでおかしなことでしょうか? アリスのようにあなたのことを男の子として好き、恋しているというわけではありませんが、しかし――ロイさん、あなたは人として立派です。好ましいです。充分に、私に限らず他人から好かれる性格をしているのですよ?」
性格は違うものの、こういうところはアリスと血が繋がっているなぁ、と、ロイは思う。
アリスももともとは、ロイのことを人として尊敬できる、誠実、と、言っていて、恋愛感情はシーリーンを救う勇姿を見て、偶発的にあとから、言ってしまえばおまけとして付いてきた。
それと同じで、アリシアもロイのことを、カッコイイ男の子としてではなく、人としての本質を理解してあげるような視点で見ているのだろう。
そういう、他人を外見や功績で判断しない娘を2人も育てるとは、ロイはよほど2人の父であるアリエルの教育がよかったのだろう、と、シンプルにスゴイと感じた。
「ふふっ――それで、ロイさん? 私のことを信じてくれますか?」
と、幼女の姿だからだろうか、やたら無垢な瞳でアリシアは問う。
そしてロイはバレないように心の中で溜息を吐いて――、
「わかりました、アリシアさんは師団長で、ボクはその師団の一員です。下の人間が師団長を信じないなんて言語道断。特に、王国七星団は軍事力を持った組織ですから。ガクトのような人間もいるかもしれませんが、アリシアさんはそれに当てはまらないと信じています」
「あらあら、うふふ、ありがとうございますわ、ロイさん。私を、信じてくれまして」
言うと、アリシアは外見よりも大人びた感じで上品に笑ってみせた。
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