ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
4章4話 イヴ、そしてアサシン
一方で、いつの間にか姿を消していたイヴとアサシンは、少し離れた場所で想像を絶するような死闘を繰り広げていた。
地を這う津波のような紅蓮の炎が轟々と迫るたび、イヴは何重にも重ねた極光の最上級魔術防壁を以って防ぐ。翻って、イヴが自身の才能に任せて超暴力的にして超破壊的な絶望の体現とも言える七色の閃光で闇夜を照らすたびに、アサシンはなぜか別の地点に出現する。
アサシンが空気に猛毒を混ぜれば、イヴはそれを察知して一定領域内の世界そのものを浄化。イヴが自動追尾の閃光を放てば、アサシンは自分と追尾してくる光の間に、光を吸収する闇を展開し無効化。また、アサシンが魔術に頼らない複数のナイフによる投擲でイヴの首を狙うも、一定領域内に入った物、その悉くを叩き落すオートカウンターの光で失敗。イヴがアサシンの動きを先読みして回り込み、肉眼で視認できる距離で【絶光七色】を撃とうとしても、いつの間にか気配は消えている。そう思えば、アサシンはイヴの背後から雷速の攻撃、つまり雷属性の魔術を放つも、自動生成された【聖なる光の障壁】の5重層を前に、貫くことができない。
幾度繰り返されたことだろう。
再度、イヴの【絶光七色】が弩々々々々々々ッッ!! と、7回連続で地面を穿った。
しかしやはり、閃光を撃つ前には確かにそこにアサシンはいたはずなのに、なぜか当たらない。
光は言わずもがな光速だ。どんな生き物でもそれを動体視力で見切って、その上、回避を成功させるなんて絶対に不可能と断言できる。
だとすれば、推測できるのは時間停止か瞬間移動。
しかし、その発想に辿り着いた瞬間、イヴは頭を振ってそれを否定する。
(普通に考えて、時間停止か瞬間移動を何回も繰り返せるなら、すでにわたしは死んで、決着は付いているはずだよ……。しかもこんなに連続でそれができるということは、魔術師としての実力はオーバーメイジやカーディナル以上だよ……。つまり時間停止か瞬間移動がトリックである可能性は現実的じゃない……)
となれば――、
「気配、存在感をでっち上げる魔術――ッッ!」
『ハハハハ、実にアサシンらしい魔術だと思わないか?』
イヴが答えに辿り着いた瞬間、彼女の脳内に直接アサシンの声が響く。
明らかに煽っている哄笑を受けて、イヴは奥歯を強く軋ませた。
そして当たり散らすように攻撃を撃とうとすると――、
『360度、全範囲を攻撃で埋め尽くすか? やめておいた方がいい。貴様の大切な兄の別荘を壊さないためにもな。貴様が全範囲攻撃なんてしたら、あの結界が簡単に壊れるのは、理解できるだろう?』
「――――」
『どうした、なにか言ってみろ』
なぜが無言を貫くイヴ。その静寂は、なぜか不気味さを感じさせるモノだった。
少しだけ、積雪の闇夜に誰の声も響かないわずかな時間が生まれる。張り詰めたような空気は冬の夜ということもあってかなり冷たい、あるいは寒い。だというのに身を焦がすように熾烈な戦闘に興じているのだ。身体は充分に熱くなって、呼吸も荒い。
平行線を歩くような拮抗状態の戦いに、イヴは疲れてしまったのかもしれない。
が、それはもう、ここで終焉にしよう。
イヴは深呼吸して落ち着くと、ついに、その無音状態を破るべく、そして決着を付けるべく、花の蕾のように桜色の唇を開いた。
「――お前、今、自分で墓穴を掘ったよ」
『――ハ?』
アサシンは遠視の魔術でイヴの表情を確認して、ゾッッ、とする。
彼女の笑みはまるで戦闘狂のそれに酷似していた。
「お前は今、360度、全範囲を攻撃で埋め尽くすか? やめておいた方がいい。って、言ったよね? つまり、それは、いかにもそれらしい理由を取り繕ったところで、結局、それをされたら自分が困るってことだよ。お兄ちゃんの別荘なんて、わたしたちにとってはともかく、お前にとっては無価値な物だし」
やたら自信満々で、イヴはそのように主張した。
アサシンは拍子抜けする。先刻、彼女の表情にビビッてしまったが、それも杞憂か、と。
ならばこちらが怯える道理はどこにもない。
結果、アサシンはバカにするように反論をしてみせる。
『ハッ、確かにそのとおりだ。しかし、それをしたら別荘が壊れるという事実がなくなるわけではない』
そのとおりだ。イヴの光属性の魔術においてアリシアを上回る才能ならば、ここら辺、一帯を破壊の光で満たして、地域ごとアサシンを殺すことは可能だろう。だが、その場合、間違いなく別荘と、それを守るクリスティーナの結界も壊れてしまう。
威力調整をすればなんとかなるかもしれないが、他の規模が小さい魔術ならいざ知らず、超高範囲攻撃で1ヶ所だけ穴が開くように殲滅の光を降らすなんて、そんな器用で都合がいいことはイヴに限らず誰にだって不可能のはず。
だから――イヴは別の方法を考える。
「だったら、その場合! わたしなら『こう』するよ!」
『なっ――ッッ!』
言うと、イヴは目を強く瞑って下を向き、自分の真上、頭上に【絶光七色】を撃った。
そして世界、辺り一帯は眩いばかりの一等星のごとき輝きに包まれる。
その時だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
音響の魔術を使った念話ではない、本物のアサシンの声、耳を劈く絶叫が積雪の丘に木霊した。その耳障りで甲高い悲鳴は、もはや断末魔さえ連想させる。地獄に堕ちて業火に焼かれた魂だって、ここまでヒステリックな泣き声を上げないだろう。
そしてさらに、イヴから少し離れたところから、ドサ、というなにかが木から落ちる音がする。
で、当然ながら、イヴはそちらの方に歩いていく。
一歩、また一歩、わざとゆっくり、足音が聞こえるように。積雪に足跡を刻むように。
「知らないなら教えてあげるよ、【絶光七色】について。【絶光七色】は世界に存在する光の全ての特性を宿している万能の光。なら当然、Sランク魔術の割に例え戦い方が姑息だと嘲笑われても、この光で敵を失明させるぐらい、わけないんだよ」
「ふ、ふざけるな! 味方が巻き添えを喰らったら……ッッ!」
「そう、そこが一番大事なポイントなんだよ」
そうして、イヴは雪の上に倒れているアサシンの横に辿り着く。
アサシンは雪の上で、両手で両目を抑えて、熱した鉄板の上に置かれた芋虫のように、その身体を捻って、悶えていたが、イヴの気配を察した瞬間、恐怖で痛みさえ忘れる。
すぐそばで聞こえるイヴの声。もう、アサシンは生きた心地がしなかった。
「実を言うとね、威力を調整したんだよ? 範囲攻撃の威力調整が難しくても、これぐらいなら可能だからね。具体的には、10秒間ぐらい目が使い物にならなくなるけれど、絶対に失明はしないって断言できるレベルに」
待て、と、アサシンは心の中で焦燥を隠せなくなる。
それではどう考えてもおかしいのだ。
「ならどうして私は実際に失明している!?」
それに対して、イヴは深い溜め息を吐くと――、
「だってお前、普通の眼球と、それよりも光を圧倒的に吸収しやすい遠視の魔術で、2重に【絶光七色】を受けたよね?」
「ば、馬鹿な! 遠視の魔術を使っているとわかるわけ……ッ」
「だから言ったよ、自分で墓穴を掘ったよ、って」
「まさか……」
遅まきながら、ようやく、アサシンは自分の失態に気付いた。
「お前は墓穴を2つも掘った。もう1つの墓穴は、やはり1つ目の墓穴と同じく、わたしがイライラして適当に攻撃しようとしたそのほんの直前に、別荘のことを持ち出した例の発言で、わたしの攻撃を中断させたことだけど……1つの発言で2つも墓穴を掘るなんて器用だね」
「あ……ぁ……」
「あれは明らかに、どこかでわたしの挙動を見ていた証拠だよ。逆に、遠視の魔術を使わなくても問題ないぐらいの距離でわたしを見ていたなら、わたしの方だってお前に気付くしね♪」
「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
9,171
-
2.3万
-
-
780
-
1,307
-
-
134
-
420
-
-
1,389
-
1,152
-
-
1,175
-
1,984
-
-
176
-
61
-
-
4,194
-
7,854
-
-
66
-
22
-
-
449
-
727
-
-
269
-
597
-
-
4,631
-
5,267
-
-
756
-
295
-
-
5,039
-
1万
-
-
1,745
-
5,632
-
-
161
-
757
-
-
208
-
841
-
-
2,860
-
4,949
-
-
187
-
610
-
-
213
-
937
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
1,034
-
1,714
-
-
315
-
601
-
-
3,152
-
3,387
-
-
14
-
8
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
902
-
2,532
-
-
265
-
1,847
-
-
27
-
2
-
-
5,469
-
6,129
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
1,301
-
8,782
-
-
6,198
-
2.6万
-
-
1,667
-
2,934
-
-
664
-
2,340
-
-
159
-
267
-
-
83
-
250
-
-
1,246
-
912
-
-
6,680
-
2.9万
-
-
1,658
-
2,771
-
-
1,295
-
1,425
-
-
2,629
-
7,284
-
-
1,528
-
2,265
-
-
3,588
-
9,630
-
-
6,675
-
6,971
-
-
1,576
-
3,510
-
-
2,799
-
1万
-
-
2,814
-
4,848
-
-
999
-
1,512
-
-
3,653
-
9,436
-
-
512
-
880
-
-
3万
-
4.9万
-
-
1,521
-
2,512
-
-
218
-
165
-
-
9,896
-
1.4万
-
-
1,339
-
2,106
-
-
428
-
2,018
-
-
397
-
3,087
-
-
432
-
947
-
-
76
-
153
-
-
1,923
-
3,761
-
-
6,725
-
8,803
-
-
9,544
-
1.1万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
395
-
2,079
-
-
215
-
969
-
-
2,684
-
7,182
-
-
1,651
-
4,503
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1,863
-
1,560
-
-
297
-
792
-
-
103
-
158
-
-
108
-
364
-
-
1,748
-
3,411
-
-
1,059
-
2,525
-
-
614
-
1,144
-
-
8,189
-
5.5万
-
-
2,951
-
4,405
-
-
6,236
-
3.1万
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
71
-
63
-
-
65
-
390
-
-
33
-
48
-
-
7,717
-
1万
-
-
9,709
-
1.6万
-
-
1,838
-
5,329
-
-
1万
-
2.3万
-
-
2,177
-
7,299
-
-
1,926
-
3,286
-
-
3,190
-
5,064
-
-
3,548
-
5,228
-
-
418
-
456
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
270
-
1,477
-
-
116
-
17
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,709
-
1.6万
-
-
9,544
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,171
-
2.3万
コメント
颯爽
イヴさん………?