ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章6話 姫、そして脱衣(2)
「でも、仕方がないことですけれど、ロイ様から教わったテクニックを使って、そのロイ様自身に挑もうとしても、いくらかの運が絡まないと勝てそうにありませんわね」
「あはは……でも、ヴィキーは友達であるボクに、接待プレイをされたらイヤでしょう?」
「愚問ですわ!」
そのぐらい、ロイだってわかっている。
立場を気にすることと、礼儀を気にすることは、似ているようで別のことなのだ。
親しき中にも礼儀あり、という諺があるように、親しくても必要な程度の礼儀は弁えるべきだし、礼儀を気にするあまり、本来親しいはずなのに、あるいはこれから親しくなれるはずなのに、立場を過度に強調するのも、時と場合によっては、なにか違う。
だから、ヴィクトリア、否、ロイの友達であるヴィキーとの関係は、こういう感じでイイのだ。
「さて、ポーカーはロイの勝利として、次はなにをいたしましょう?」
「う~ん、ヴィキーはチェス、したことあるんだよね?」
「あら? ロイ様、わたくしにチェスを挑む気ですの?」
「ボクは基本的に、ゲームはエンジョイするガチ勢って方針だからね。ヴィキーが相手だとしても、楽しむことも、全力を出すことも、どっちもやめないよ」
「上等ですわ!」
で――、
さらに十数分後――、
チェスの勝敗がどうなったかというと――、
「チェックメイト、ですわ♪」
「――ハァ、参りました。ヴィキー、チェス強いね」
「ふふん、とーぜん」
ドヤ顔で、少し間延びした発音で、十数分前と同じように大きな胸を、タユン、と、張るヴィクトリア。
わずかに接戦まで持ち込めた戦局もあったものの、基本的にヴィクトリアがロイを攻め続ける形でゲームは進行し、そして今、ロイの負けでヴィクトリアの勝ち、という状況に至る。
「ロイ様、アナタ、チェスの定石ってご存知ですの?」
「そりゃ、知っていることには知っているよ? ただ……カッコつけたクセにヴィキーに劣っただけであって……」
自分でも情けないことを言っている、と、心の中で落ち込むロイ。
翻って、なぜかヴィクトリアは嬉しそうだった。
「なら! 今度はわたくしがロイに教えてあげる番ですわね! ポーカーではなくチェスになりますが」
そうして、今度はヴィクトリアによるロイのためのチェス講座が始まる。
が――ふいにヴィクトリアは立ち上がり、ロイの背後に回ると、彼に背中から抱き付くように、盤面を弄り始める。
きっと盤面を弄り、実例を見せる形でロイにチェスのことを教えるのだろうが――、
「ヴィ、ヴィキー……、っ」
「なんですの? 少し静かにしてくださいまし」
「いや……、その……」
「? ロイ様にしては珍しくハッキリしませんわね?」
「せ、背中に……胸が、当たっているんだけど……」
「~~~~っ」
バッ、と、ヴィクトリアはロイから飛び離れる。
彼女の顔は熟れた果実のように真っ赤に染まっていた。
そんなヴィクトリアの顔を、ロイは極力、見ないであげることにしても、かといって、背中にあった胸の感触が即効で消えてなくなるわけではない。
シーリーンの胸がふわふわ、アリスの胸がぷにぷに、このような感じだとすると、ヴィクトリアの胸はムニムニで、より具体的に言うならば、2人よりもさらに肉感的な胸であった。
いくら人間として誇らしくあろうとしているロイだとしても、まだ年頃の男の子だ。
背中に女の子の胸が当たって意識するなという方が無理である。
確かにロイの恋人はシーリーンとアリスの2人で、翻ってヴィクトリアは異性とはいえ友達だが、恋人の胸に触れるよりも、友達の胸に当たった方が、胸に触れるための正当性というか、理由に欠けている気がして、つまり背徳的であり、シーリーンとアリスと同じぐらい、強く、強く、意識してしまう。
「ヴィ……ヴィキー?」
「……なんです、の?」
「……別のゲーム、しようか?」
と、いうわけで、次のゲームをすることになったロイとヴィクトリア。
ヴィクトリアに限っていえば、彼女は服を正し、元の椅子に大人しく戻った。
次のゲームは互いに実力が拮抗しているモノがいい、と、2人の意見が合致したことにより、トランプの中でも一番簡単そうなババ抜きをすることに。
で、結果は――、
「ハイ、ボクの勝ちだね」
「ぐぬぬ……悔しいですわ」
ロイの勝ちで、ヴィクトリアの負け。
ヴィクトリアはいわゆる、ぐぬぬ顔を披露して、微妙に瞳はウルウルしていた。
ロイに負け越して悔しいのだろう。
だが――(たとえ悔しくても負けた事実が消えるわけではありませんわね)と、ヴィクトリアは静かに、再び椅子から立ち上がる。
そして、不思議そうな表情《かお》をするロイに対して――、
「少しの間、目を瞑っていてくださいまし」
「えっ? う、うん……」
ヴィクトリアがなにをする気なのかはサッパリわからなかったが、一先ず、ロイは指示されたとおりに目を瞑る。
わずかに聞こえる衣擦れの音。
ヴィクトリアの情けない「うぅ……」という声。
「もう……目を開けてもよろしいですわよ」
音も声もしなくなり、数秒後、あるいは、もしかしたら1分を数秒だけ超えたぐらいの体感時間のあと、ようやく、ロイの耳にヴィクトリアのか弱い声が聞こえてきた。
なにがヴィクトリアの声をそうさせるのか。
ロイは微かな不安を覚えつつも、先ほどと同じように、指示されたとおりに、今度は逆に目を開く。
「~~~~っ」
「ヴィキー!? なんで裸に……っ!?」
ロイの視界のちょうど中央、そこには今まで着ていた服を全て脱ぎさったヴィクトリアが、頬を赤く染めて、瞳を涙で潤ませて、所在なさげに身体を揺らし、大切なところを両腕で隠すように、そう、立っていた。
「友達とはいえ……殿方の前で服を脱ぐのは、その、恥ずかしいですわね……」
「ならなんで裸になったの!?」
「先ほど仰った金銭を賭けてポーカーをしていた騎士の方々が、仲間の方に対して、金を払えない状態で負けたら脱げよwww と、仰っていたもので……」
「もしかして、最初から負けたら脱ぐ予定で、脱げば免罪と勘違いして、ボクに、金銭を賭ける気はない、って、言ったの……?」
コクン、と、小さく、本当に小さく頷くヴィクトリア。
それに対してロイは、一瞬、頭を悩ませたあと――、
「ヴィキー、ポーカーよりも先に、キミには『友達』がどういうものかを教えるよ」
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