ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章8話 シーリーンとアリス、そしてベッド
深夜、日中に決めたように、ロイと同じ寝室で寝るのは、奇数の日の場合、シーリーンとアリスで、偶数の日の場合、イヴとマリアだった。
そしてこの日はガーネットの月の9日で、つまり奇数の日。
シングルベッドが2台ある部屋で、片方のシングルベッドだけに、ロイを中心にシーリーンとアリスが両手に花の状態で添い寝する。
無論、少々、1人あたりのスペースが狭くなってしまっているが、3人で密着しているので問題は少ない。
流石にロイは普通の寝間着だったが、シーリーンとアリスの2人はネグリジェだ。
純白で可愛らしいフリルが付いているネグリジェのシーリーン。
翻って、ブラックでアダルトな雰囲気を演出する刺繍がきめ細やかに施されているネグリジェのアリス。
双方とも、神様が選んでくれたのでは、というぐらい、ネグリジェ姿が似合っていた。
「あはっ、ロイくん、大好き♡ 早く結婚したいね?」
恥ずかしいことは恥ずかしいのだが、それよりも大好きな恋人とくっ付いていたい気持ちが大きくて、ラブラブ一直線な雰囲気を出しながら、ロイの左腕にかなり豊満な胸を押し付け、デレデレしているシーリーン。
「な、なんでシィはそういうことをストレートに言えるのかしら……羨ましい……」
一方でアリスは、頬を赤らめながら、何度も肌を重ねている事実があるのに、この日に至っても恥じらっていた。だが、恥じらっているか否かは、隣に大好きなロイがいる、という事実になにも影響を与えるわけもなく、下着にエッチなシミを作ってしまうアリス。
「ところで、ロイ」
「? なにかな?」
ふいに、アリスは自分の方にロイの腕を引っ張った。
なにやら話したいことがあるようである。
「今日の日中と夕方、リタちゃんとティナちゃんと、なにをしていたのかしら?」
今、時計の針は頂点を過ぎている。寝室の灯りはもうとっくに消しているし、寝室でかろうじてアリスの顔が確認できるのは、窓から差し込む月明かりのおかげ。そして、科学が発展していないがゆえの、満天の星々の瞬きのおかげ。
ほの暗い寝室。
だが、例えほの暗くても、アリスの頬がわずかに子供っぽく膨らんでいるのは、見間違えることもなく確認することができた。
「もしかして……妬いているの?」
「…………」 と、無言でロイの頬を軽くとはいえ抓るアリス。
「痛い、痛い、ゴメン……」
「違くて、ロイが私とシィに秘密を作っているのが少しモヤモヤするだけよ」
そのセリフを口にするのが恥ずかしかったのか、アリスは顔を隠すように、自分の頭全体をロイの腕、身体の方に寄せた。
これでロイは少し無理をして首を足の方に傾けないと、アリスのことを確認できない形になってしまったが、別にそのようなことをする必要はない。
なんとなく、アリスの顔を確認しない方が、この恋人同士の雰囲気をよりよくできると思ったから。
ゆえに、ロイは一言だけ、こう口にした。
「――そっか、そう思ってくれて、ありがとう」
「ロイくんはアリスにそう思われるの、好きだもんね」
「なによ、シィまで私のことをそんなふうに言うなんて……」
言うと、アリスはますますロイの身体に近付いた。
否、もうすでに、抱き付いている、と、形容しても問題ない距離感であった。
で、するとシーリーンもアリスに対抗するように、さらにロイの身体に抱き付いてくる。
シーリーンの髪からはバニラの香りがして、アリスの髪からはバラの香りがした。
「でも、ナイショのことを作られるのはモヤモヤしちゃうのだけれども、別に、リタちゃんやティナちゃんと、年下の友達という意味でも、少しだけ意識している女の子という意味でも、どちらにしても親密になることに関しては、なにも問題視しないわ」
「えっ、そうなの?」 と、疑問を感じるロイ。
「あぁ~、シィもアリスの気持ちわかるなぁ」
翻って、どうやらシーリーンはアリスの発言に共感を覚えることができるみたいだ。
仲間はずれは自分だけのようなので、割と真剣に、ロイは自分のことに置き換えて考えてみることに。
今日、ロイはリタとティナの2人と、成り行きを考慮するならば必然的に、イベントを重ねることになった。で、もし、アリスが今日の自分のように、必然的だったとしても流れで、自分以外の男性とイベントを発生させることになったら――と、考えると、ロイは少しイヤな気持ちになってしまう。
(無論、ボクだってアリスに過度な束縛はしない。ボクに説明できて、アリス自身が堂々としていられる理由があるなら、他の男の子と2人きりで会ってもいいんだけど……そうだね、理屈と感情は別物かな)
結局、ロイはアリスの発言に共感できなかった。
そういうケースになった時、そうなった経緯を説明されれば『理解』するかもしれないが、十中八九、『納得』はできないだろう。理屈でわかっていても、感情は、アリスには他の男性とどのような理由があっても一緒にいてほしくない、と、叫ぶかもしれない。
「クス、ロイくん、アリスがなんでこんなことを言ったのか、わかっていないでしょ?」
唐突、シーリーンがからかうように微笑み、そして同じくからかうように、自分側のロイの頬を、白くて細くて、スラリと長い人差し指でツンツン、ツンツン。
意外と、シーリーンはロイの感情によく気付く。
否、ロイ以外の他人の感情にも気付きやすい。
なぜかと言えば、人を見る目に長けている、なんて無機質な理由ではなく、他人に共感、気持ちを理解してあげられるという、人、ではなくフーリーだが、フーリーとして優しくて尊い心に富んでいるからだ。
玉に瑕なのは、感情に気付けても、フォローそのものが少し苦手、というところなのだが。
「シィはわかるの、アリスの気持ち?」
「もちろん♪」
「なら――」
と、ロイが言葉を続けようとした、その時だった。
「ダメよ、シィ。私が自分で言うわ」
と、ロイの言葉を遮るアリス。
すると彼女は少しだけ、今まで抱き付いていたロイの身体から、自分の身体を離し、熱っぽくって潤んでいて、そして真剣な目で、彼と視線を合わせる。
ほんのわずか20cm前後ぐらいしかない距離で、見つめ合うロイとアリス。
ガラス細工のように繊細で、どことなく夢の世界のような雰囲気が広がる。
数秒後、アリスは艶やかな桜色の唇を開いた。
「私はね、ロイ、リタちゃんも、ティナちゃんも、すごくイイ子だと思うわ」
「うん、そうだよね」
「でも、たぶん、普通の女の子なら、例えイイ子でもカレシにその子と仲良くなってほしくはない、って、気持ちを抱くと思うわ」
「それは、まぁ……」
「でも私は――逆のことを思ったのよ」
「逆って?」
「ロイには、老若男女を問わず、もっと、他人と関わってほしい、って」
「――――」
瞬間、ロイは言葉を失った。
悪い意味ではない。放心という状態に限りなく近いが、それでもプラスな意味合いでロイは口を開いたのに、その喉の奥から声を出すことができない。
すると、今のロイの状態を、その意味まで含めて察したアリスは、彼の頬に口付けを添える。
で、その次の瞬間にはシーリーンも逆側の頬に。
「私の言った言葉の意味、ロイならわかるわよね?」
無言で、ただ静かに頷くロイ。
アリスの言うとおり、意味はわかる。
だが、口を開いてそれを明言するのは、野暮なように思えた。無粋なように感じた。
そして、次はシーリーンがロイに、まるで愛の告白のように言う。
「シィも似たようなことを言うとしたのに、アリスに譲る形になっちゃったね」
言うと、シーリーンは今まで身体を寝かせていたのに、その上体を起こす。
次いで、ネグリジェを脱ぎ始めた。
シーリーンの色白の肌が、月明かりに晒される。
「えっ、……ちょっ……シィ? もしかして……?」
アリスが慌てたようにシーリーンに問う。
だがシーリーンは言葉を返さない。彼女はただ、優しい微笑みをロイとアリスに向けるだけ。
「――まったく、わかったわ。私も、今夜はそういう気分になってしまったのだし」
シーリーンに続くように、アリスも上体を起こしてネグリジェを脱ぐ。
彼女のブロンドが月明かりに照らされて煌く。
そうして、3人は今宵、初めて3人一斉に愛し合った。
アリスがロイに告げた言葉。
あれは断じて、ロイの前世とは一切関係がない。
強いてヒントらしきモノを挙げるなら、それは前世ではなく現世に関係している、ということ。
そのことを確かに胸の奥にしまいながら、ロイとシーリーンとアリスは、午前1時の幸せに溺れていくことに。
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