ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
4章8話 作戦会議室、そして魔王軍幹部
時と場所は移り、魔王軍の王国隣接ライン戦線の作戦会議室――、
そこには魔王軍の幹部である1人の死霊術師と、その側近が集まっていた。
死霊術師の男を一番奥に座らせて、その右と左の両方に、U字型のテーブルの外側を囲むようにその側近が座る。
「偵察に行っていた魔物が1人やられたようです」 と、側近の1人が言う。
「誰に?」 と、魔王軍の幹部である死霊術師が厳かに訊いた。
「――ロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイク」
側近の1人が答えると、ハッとしたあと、死霊術師は心底愉快そうに嗤った。
倣うように、側近の数人もクツクツを口に含んだように笑いを堪える。
「そいつだって愚かではないだろう。常識的に考えて、偵察が1人ではないことに気付いているはずだ。まぁ、少数で行っていることには変わりないが。で、だ。その少年に他の動きは?」
「特にありません。殺された魔物の担当は『例の少女』の監視で、その際に足が付いたのかと――」
「要するに、その少年、他の偵察を倒そうにも、倒してしまった魔物以外の居場所を知らない感じか」
まだまだ件の少年も、やはり学生か、と、ほんの少しだけ死霊術師は落胆した。
が、それでも学生だというのに魔王軍の一員を、1人とはいえ殺しきったのは、正直、称賛に値する。
平和ボケした王国の学生に、命のやり取りをこなす本物の騎士がいるとは、敵といえどもなかなか侮れないものである。
普通の学生ならば、剣というのは一種の武芸で、七星団にでも入団しない限り、殺し合いなんて怖くて、恐ろしくて、到底できるようなものではない。自明だ、誰だって自分の命は惜しいのだから。
だというのにロイという学生――敵なのが惜しいぐらい見込みがある。
「さて、そのロイとやらは、どこまで気付いたのだろうな」
「恐らく、我々が七星団の中にスパイを紛れ込ませ、王女すらフェイクに使ったところまでかと」
「そうだな、王女を殺そうと思えば我々はいつでも殺せた。事実、スパイが王女に逃亡の手伝いをする際、魔術をキャストしているからな。この情報だけでも、敵にいくらかの動揺は与えられるはずだ」
死霊術師が断言すると、肯定するように側近たちは静かに、各々頷く。
それを眺めて気分を良くした死霊術師は、さらに会議を続けた。
「王女よりも早急に殺害しなければいけない存在、ソウルコードの改竄者、か」
背もたれにどっぷり座り、腕かけで両腕を休ませながら、死霊術師はソウルコードとやらについて思いを馳せた。
ソウルコード。
この世界では魂という概念がある程度、解析されている。
DNAが遺伝情報を記録している物質、遺伝子とはDNA上のタンパク質の作り方を記録している場所、そして、生物にとって必要不可欠なワンセットの遺伝情報のことをゲノムと呼ぶ。
ソウルコードとは、魂のゲノムだった。
つまり死霊術師が言いたいことは――、
――ソウルコードを意図的に誰かに改竄された者が、王国にはいる。
――そして、そいつを王女よりも早急に殺さねばならないということ。
「いかがしますか? 第1の作戦は失敗に終わってしまいましたが」
「王女をわざと逃亡させて、作為的な情報操作によりソウルコードの改竄者一行を反逆者に仕立て上げる。直接殺した方が手っ取り早かったが、こちらの方が我々の存在、暗躍を気付かれなかったのだがな……」
「スパイに関しても、魔物や死霊術師、あるいは暗殺者や狂戦士ではなく、もともと王国に強い恨みを持っていたただの人間、王国民ですからね。少なくともスパイから我々の存在が露見することはないでしょう……」
「それだけに、偵察の1人が殺された、つまり、戦闘の痕跡を残したのはマイナスですね」
「わざわざ制限が強いといえ、運命を改変する魔術までキャストして、我々が王国内部でも比較的行動が容易い国境付近まで誘き出せたのに……」
少しだけ死霊術師は黙考する。
そして数秒後――、
「当たり前だが、我々の目的に変更はない。予定どおり、ソウルコードの改竄者を殺すだけだ」
「「「「「――――」」」」」
「そして、ロイ少年との戦闘行為は原則として禁止だ。これは返り討ちに遭うかもしれないからではなく、ロイ少年に、ソウルコードの改竄者の守護者としての役割を果たさせないためだ。守護者として絶対に覚醒する! と、断言はできないが、かといって覚醒なんてするわけがない、と、言い切ることもできない。不用意に藪を突くな。ヘビが出る恐れがある」
「「「「「――了解」」」」」
ロイがこの会議を聞いたら驚くだろう。
まさか自分が、ソウルコードの改竄者の守護者、などと大それた呼び方をされているのだから。
「次の作戦は、最初の作戦の失敗を魔王様に報告してから考案を開始する。報告と連絡と相談を怠っては、魔王軍幹部の名折れだ」
「「「「「――――」」」」」
「だが、だとしても依然、目的が変わらない以上、標的にも変わりはない。
標的はソウルコードの改竄者。
即ち、イヴ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクだ」
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コメント
Kまる
えっっ!なんだって?
ペンギン
え!イヴなんですか!?マジですか!?
これは...ロイの出番ですねw
今回も頑張ってください!ロイ!