ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章7話 再会、そして依頼



 宿に戻ったロイはイヴのヒーリングで両手の火傷を直すと、早々にベッドに入った。
 流石、光属性の適性がマックスというだけあって、イヴのヒーリングはすごい。応急処置でした自分のヒーリングとはわけが違う。

 で、イヴのヒーリングのおかげで安心を得たがゆえに、ロイがベッドに入って完璧に意識が闇に落ちるまで1分もかからなかった。

「――あれ、ここは?」

 が、完璧に意識が落ちた瞬間、ロイは不思議な空間に案内される。

 ロイは椅子に座っていて、演劇が行われている舞台に立っている主役のように、自分の周りだけが白いスポットライトで照らされている。

 音は何もしない。
 香りも何もしない。

 ただ、強いて言うなら、左右に満天の星が輝いていた。奥行きは1万kmや1億kmや1兆kmなんて程度の低い距離じゃない。きっと、この左右に広がる空間に、終わりなんてないのだろう。比喩表現ではなく、正しい意味で無限なのだ。終わりという概念が存在しないのだ。

 だがしかし、普通は星が輝いている上を見ても、そこにはなにもない。
 天になにもない代わりに、左右の無限の奥行きを持つ空間に星が瞬いている。

「――お久しぶりです」
「ッッ、あなたは――!?」

 忘れるわけがない。忘れたくても忘れることなんてできない。

 唐突に現れた女の子。
 外見から察する年齢は15歳ぐらいだろうか。

『神秘』を意味するパステルなパープルの長髪は現実という感じが一切せず、幻想的で、少年が今まで見てきたどんな色彩よりも美しい。

 パッチリとした二重の瞳はアメジストをはめ込んだような紫眼しがんで、その双眸は少年が今まで生きてきた2つの世界、その両方のどの宝石よりも綺麗だった。

 花の蕾のように艶やかで可憐な唇は、女の子らしい桜色。

 健やかに発育した胸に、細くくびれた腰、ぷにっ、と、したやわらかそうなおしりにかけての滑らかな曲線は、まさしく人としての女性の美しさを超えた圧倒的な魅力を秘めている。

 彼女の白くて細い指に自身の胸板をなぞられたら、さぞかしゾクゾクするだろう。
 彼女の艶やかな色香をかもし出す脚は、誇張抜きに一種のアートのようにしか思えない。

 彼女は、世界中の男性の誰もが可愛いと思い、美しいと思い、いじらしいと思い、あざといと思い、清楚だと思い、艶やかだと思い、どうしようもなく劣情を駆り立ててきて、処女を奪いたいと思うのに、しかし純潔のまま大切に近くに置いておきたいと思える、世界一女の子らしい女の子だった。

「――神、様」
「はい♪ 15年ほど前にあなたを転生させた神様です」

 神様の女の子は優しく、そして可憐に微笑む。

 シーリーンやアリスに悪いと思いつつも、ロイは神様の女の子の笑みにドキドキしてしまった。
 当たり前である。この神様は、今2人がいる時空に案内された人の、最も理想的な異性、否、異性に限らず恋愛の対象の姿になるのだから。

「ついに魔王軍の一員と交戦したようですね」

 と、どこか遠い目をして神様が独り言のように呟く。
 ロイはそれに対してなにかを言おうとしたが、適切な返事をなかなか見つけることができず、一回言葉に詰まってから――、

「それで……急かすようで申し訳ないですが、ボクがここに案内されたわけって――」

 と、話を進めることにした。
 すると、神様の女の子は少し疲れたかのように、気だるげに溜め息を吐く。
 そのようなマイナスな感情を宿した行為でも可愛いと思えるのだから、神様は本当に女の子の中の女の子だ。

「普通に考えれば、これから、王国と魔王軍の戦争は激化の一途を辿り、あなたもそれに巻き込まれることでしょう」

「やっぱり、王国七星団が第1級警戒態勢を敷いていたのって――」
「魔王軍との大規模戦闘が近づいているからです」

「で、その先行部隊があの温泉街に入り込んでいて、そのうちの1人とボクが戦った?」
「はい、その解釈で問題ありません。それと――」

「それと?」
「予め言っておきますが、私は世界を見渡すことができますが、未来予知はできません。ですから、恐縮ですが、戦争はどっちが勝つのか、なんて訊かれても答えられませんので……、そのぉ……ゴメンなさい」

「なっ、なら、未来を予知することができなくても、現段階で決まっている魔王軍の戦略、戦術をボクに教えることは――っ」
「それでもできません」

「――――っ」
「ロイさん、心して聞いてください」

 ふいに、神様は真剣みを帯びた声で、ロイに前置きする。
 それをロイは固唾を呑んで聞こうとした。

「王国側が私、つまり神様の存在に気付いていないのとは裏腹に、魔王軍の方は、すでに私の存在に気付いています」
「な――っ」

「それどころか、私に介入する魔術さえ、ある程度は研究を完了させている段階です」
「そ……そんな……」

「今日、私がロイさんを呼べたのは、子供っぽい言い方ですが、私が頑張ったからです。ですが、そう簡単に何回もロイさんをこの空間に案内できるわけではありません。加えて、案内できたとしても、魔王軍の情報を伝えようにも、対神様用のジャミング魔術で、伝えられることは本当に限られます」
「魔王軍は、もう、そこまで……」

 ロイは深刻そうに呟く。神様の女の子も、ロイの呟きに頷いた。

「ロイさん、あなたに、1つ依頼をしたいのです」

「依頼、ですか?」
「――魔王軍、いえ、魔王本人に関して言える数少ない情報ですが……」

「――――」
「魔王の最終目標は、私、つまり神様そのものを掌握して、世界を征服することです」

「バカな……そんな子供じみたこと、本気で実行するヤツがいたのか……。しかも、それが敵軍のトップだなんて……」
「ですから、私からの依頼は、ただ1つ」

「それは、やっぱり――」



「魔王を倒して、私のことを助けてください」



「――――」
「今だから明かしますが、そのために、あなたを転生させたんです」

 ふと、ロイは考える。
 まず、いくらなんでも超展開すぎる。15年ぶりに再会した神様に、魔王を倒してほしいとお願いされるなんて、このような経験、未来永劫、ロイしか経験しないだろう。

 そして、自分を転生させた理由が魔王を倒すため。なぜそれを転生の手続きの時に伝えておかなかったのか、理解に苦しむ。なにかしらの制約があるのは察しているが、もう少しやりようはなかったのだろうか、と、ロイは困ってしまう。

 だが(――困る、か)と、ロイは少しだけ口元に笑みを浮かべる。

 ロイは自分自身に問いかける。
 つまりは自問自答する。

 人を助けるのに、性別、年齢、種族、宗教は関係あるのか?
 恋人とか、友達とか、王族とか――果ては神様とか、誰かを助けるのにその誰かの肩書きを気にする必要があるのか?

 答えは――否、だ。

「わかった、ボクはキミのことを絶対に救ってみせる」

「~~~~っ」

「困っている誰かを助けるのに、理由なんていらないんだから」



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コメント

  • ノベルバユーザー366207

    さて、悪とは正義とは?
    それは真実なのか?
    主人公は、些か軽薄すぎる

    0
  • ノベルバユーザー359879

    たらしやな

    1
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