ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章1話 謁見の間、そして国王(1)



 時刻は19時を少し過ぎたところ。
 場所は魔王軍の領土に相対するように作られた、癒しの都、ツァールトクヴェレから近い最終防衛ラインの七星団の要塞。

 そこにロイとシーリーンとアリス、イヴとマリア、そしてリタ、ティナ、クリスティーナが案内されていた。

 ふと、要塞の中を歩きながら、ロイは自分の身体を確認してみる。
 驚くべきことに、異常はまるで見受けられない。

 そう、特務十二星座部隊の星の序列第9位、【人馬】、王国最強の錬金術師であるフィルと戦った傷は、もうすでにロイの身体から消えていた。
 七星団の医療魔術師のおかげなのだが、完治したと言っても過言ではないだろう。

「諸君、ここだ」

 8人の先頭に立って案内していたフィルが、ゆっくりと、とある扉の前で足を止める。
 ロイたちも足を止めるが、少しだけ、フィルに倣ったわけではない。別の理由があった。

 つまりは、目の前の扉を見上げるためである。

 なに、これ――、と、ロイたちは一様に扉を見上げて放心した。その扉が、あまりにもすごすぎたからである。この豪奢な扉1枚分の値段であっても、ロイの故郷の村は向こう30年ぐらい裕福に暮らせる、それぐらいゴージャスな扉であった。

 貴族ということで、この中では比較的高価な物に馴染みのあるアリスですら、この扉を見上げた瞬間、あまりにも桁違いすぎて、呼吸を忘れてしまうほどである。
 装飾として宝石がいたるところに埋め込まれているだけではない。そもそも扉の材料そのものが、なんらかの高価な材料でできていた。

 高さは5m以上あり、幅は8人が手を繋いで並んでも、端から端まで届かないだろう。

「入るぞ」

 フィルは扉に向かい、一歩、足を踏み出した。
 すると、ロイの体重の何倍もありそうな扉が、厳かにも自動で開き始める。
 驚愕を隠せないロイ。魔術で動いているのだろうが、この世界に訪れて、初めて自動ドアを目の当たりにしたのだから当然か。

「――――」

 8人は恐る恐る、しかし姿勢を正して扉の向こうに入ろうとする。

 普通の緊張なんて生易しい程度ではない。緊張のあまり足がすくみ、身体の表面が痺れるようで、頭の中が、なにも考えられなくて真っ白というわけではないが、逆に、脳が破裂しそうなぐらいいろいろ考え込んでしまい、目を開いているはずなのに、なにを見ているのかわからない感覚に陥る。

 ある程度、フィルは歩みを進めると、彼は赤い絨毯の上で片膝を付いた。
 不慣れな感じで8人もそれに倣う。

「国王陛下、特務十二星座部隊の一翼、【人馬】ことフィル・オウ・スロー・ド・ピース・ド・アーがここに、くだんの8人をお連れいたしました」
「よろしい、おもてを上げろ。フィルだけではなく、8人も」

 やはり恐る恐る、ロイたちは顔を上げた。

 そこにいたのは――国王陛下、アルバート・グーテランド・イデアー・ルト・ラオム。
 そして彼の横には、お姫様としての衣装を身にまとったヴィキー、否、ヴィクトリア・グーテランド・リーリ・エヴァイス王女殿下の姿が。

「さて、なにから話したものか――」

 と、アルバートが厳かに口を開く。
 すると、唐突に玉座から立ち上がり、玉座とロイたちの間にあった数段しかない階段を下りて、8人の前に立った。

 ロイも、そして他のみんなも、身が震えそうになってしまう。

 許されるのならば、今すぐこの場から立ち去りたい。
 自国の王を前にして早々に退散したいというのは無礼かもしれないが、だとしても、このままだと緊張のあまり発狂するかもしれない。糸を極限まで張り詰めた、なんて、その程度の言葉では片付けられない。それぐらいの空気がそこには漂っている。

 しかし――、

「まずは謝罪だな。娘が迷惑をかけた。申し訳ない」

 と、アルバートは頭を下げる。
 瞬間、謁見の間にいた護衛兵たちからどよめきが湧きたった。

 加えてロイたちも、あまりに信じられない光景に、どのような反応をしたらいいのか、本気でわからなくなってしまう。

「陛下! 一国の王が民に対して頭を下げるなど……っ!」

 あまりのことに、壁際に控えていた大臣であろう男性がアルバートに言う。
 しかし、アルバートは冷静に、こともなく返した。



「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く