ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章9話 ワイン、そして赤らんだ頬(1)



 他のみんなが寝静まったあと、ロイとシーリーンとアリスは、3人で自室のベランダでワイン、カクテルを飲んでいた。
 グーテランドの法律では、ワインなどの嗜好品は15歳から飲んでも大丈夫なのである。ロイもシーリーンもアリスも、みな、15歳以上であった。

 3人で飲んでいるため、男女が1対1で向き合うことはできないので、片方の長椅子にロイ1人、もう片方の長椅子にシーリーンとアリスが座るという配置。
 ワインを一口、口に含み舌の上で転がすロイ。

(そういえば、ボク、前世では20歳になる前に死んだし、現世では特に飲む機会もなかったし、これが初めてのお酒なんだよね。お酒というかワインだけど)

 思った以上に不思議な味だった。

 前世で父親は、ただ美味しい物を飲みたかったらジュースでいい。お酒よりもジュースの方が美味しいなんて多々ある。でも、酔っ払うことはアルコールでしかできないから、アルコールは酔っ払うためにあるんだ――、と、言っていたが、わかる気がする。

 なんとなく、ほろ酔い気分は心地がいい。

「美味しいわね、シィ」
「うんっ、あっ、アリス、もう顔が赤いよ?」
「シィだって赤いわよ?」

 ほろ酔い気分が心地いいのは目の前の2人も同じなのか、瞳をトロンとさせて、頬に乙女色を差しながら、女の子同士だというのに、親しげにボディタッチを交わす。

 アリスに対して優しくて穏やかで、ちょっぴり眠たそうな表情かおを向けるシーリーン。
 翻って、アリスはシーリーンの頬を人差し指でツンツンしたり、彼女自身に頬ずりしたりして、甘えん坊になっていた。

 シーリーンとアリス、年頃の女の子同士の仲良しな光景を、ただ、ロイは嬉しそうに口元を緩ませながら眺めている。

「最近、ボクとシィ、あるいはボクとアリスと同じぐらい、シィとアリスも仲がいいよね?」
「ふふっ、だってもう、シィとアリスは親友と言っても過言じゃないぐらい、月日を積み重ねてきたもん。最初の頃はロイくんを通じてだけど」
「あはは、なにかしら、ロイ? もしかしてヤキモチ妬いているのかしら?」

 アリスは少し酔いすぎだった。

 人は、そしてフーリーやエルフも、酔ってしまうと素の自分が出るもので、普段はシーリーンが甘えん坊な感じで、アリスがしっかり者の、いわゆる委員長タイプだったのだが、今に限ったことを言えば、シーリーンの方が年上っぽく、雰囲気が落ち着いているお姉さんという感じで、アリスは少し、浮かれていてはしゃいでいた。

「普段、抑圧していたのかな?」
「抑圧?」

 シーリーンが追求してきたので、ロイはやわらかく笑んでそれに答える。

「アルコールを摂取すると、よく、理性が取っ払われて本当の人格が出るって言うよね?」
「それがなによ~?」

 アリスはシーリーンに抱き付きながら、ロイにさらに訊く。
 先ほどまで乙女色だった頬は、もう果実のように赤くなっていた。

「理性が取っ払われた本当の人格でも、充分に正しんだけど、人によっては誤解しているパターンもあるんだよ。厳密には、理性が取っ払われた人格、と、いうよりも、抑圧から解放されたありのままの自分、っていう方が正しいね」
「むぅ……今の私じゃ、よくわからない……」

 段々と眠くなってきたのか、シーリーンに抱き付いていたアリスは、いつの間にか、シーリーンに抱きしめられていた。まるで母親の胸の中で微睡む赤子のようである。

「例えば、今のアリスに当てはまりそうな、テンションが高い、普段よりよく喋る、普段から想像も付かないぐらい笑う、って酔い方だと、真面目で、そして欲求不満……って言い方だとアレだけど、日常ではなにかしらの我慢が多い、最後に神経質で緊張しやすい、っていう傾向があるんだ」
「そっかぁ、アリス、今までずっと、我慢してきたもんね」
「あはは……そんなこと……、うぅ、少し眠くなってきたわ……」

 シーリーンの胸の中でうっつらうっつら、と、舟をこぐ感じのアリス。
 こんな様子の彼女の髪を、シーリーンは優しく撫でてあげた。

「アリスが眠る前に1つ訊きたいんだけど――」

「? なぁに、ロイ?」
「ボクに、前から言おうとしたこととか、ないかな?」

「前っていつぐらい?」
「えっと……、ボクとレナード先輩の戦いが終わったあたりだけど」

 ぼんやりしている頭で考えるアリス。
 そして数秒後、アリスは答えを見つけた。答えは、確かにアリスの中にあった。

「ロイ」

「な、なに?」
「――大好き」

「えっ」
「――私、は――、ロイのことを、愛している、わ」

 そういうと、まるでアリスは糸が切れた人形のように、ついに寝落ちしてしまった。
 残されたのはロイのシーリーンの2人だけ。
 そしてシーリーンは、ロイに小首を傾げて、イジワルそうに微笑みながら訊く。

「ロイくんは、本当はなにを訊こうとしたの?」
「転生のことだよ」

「あっ、だからレナード先輩との戦いが終わったあたり、って言ったんだ」
「うん、ボクがアリスにそのことを伝えたのはそのぐらいだったから、言おうとしたことが生まれるなら、絶対にそのあたりだし」

「ねぇ、ロイくん?」
「ぅん?」

「顔、赤くなっているよ?」
「知っている」



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