ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章7話 プリズム、そして後輩(1)



 3人で部屋に戻ると、シーリーンとアリス、そしてクリスティーナの姿はあったものの、リタとティナの姿がなかった。

 なんでも、リタが「探検に行く!」と、ティナを連れて外出したきり、戻ってきていないという。
 誰かに襲われているという可能性は低いかもしれないが、リタのことを考えると、迷子になっているという可能性はかなり高かった、残念なことに。

 結果、売店で飲み物を買うついでに、ロイは2人を探すことにした。

「リタが行きそうなところは……けっこう子供っぽい言い方になるけど、冒険の匂いがするところかなぁ」

 表現が抽象的な割に、ロイのその推測は的を射ていた。

 そしてロイも、前世で6歳とか7歳の時にその心を持っていたので、というか、今でも微妙に残っているので、リタが行きそうな具体的な場所を絞るのは、そこまで困難ではない。

 森、山、川、街の入り組んだところ、が、有力候補だろう。

「マズイ、迷子の可能性が高まった……」

 …………。
 ……、…………。

「あっ、センパイだ!」
「え、えっ……、本、当……っ?」
「まったく、少しだけど探したよ」

 よくよく考えればリタだけならば森や山、川などに行ったかもしれないが、今回はティナが付いている。ティナの性格を考慮すれば、遠くには行くかもしれないが、その代わり危険な場所にはいかない。結果、危険ではないが冒険の匂いがするところ、即ち、森でも山でもなく、川あたりが妥当、と、推測できた。

「夜も遅いし、そろそろ戻ろう?」
「でも、センパイ、少しでいいから、これ見てよ!」

 3人は今、川の近くの舗装された道にいたのではなく、そこから少し進んで、河原、あと数m進めば川に入れるところで話していた。
 そこからリタは、川の方ではなくロイの背の高さほどの草が生い茂る方に進み、そして突っ込み、姿を消してしまう。

「ティナちゃん?」
「――――」

 リタが姿を消したすぐあとに、ティナがロイのコートの裾をチマっと摘まんだ。
 顔を恥ずかしそうに赤らめて、事実、恥ずかしいからロイと、恋い慕っている先輩と、視線を合わせることなんてできない。つまりは、顔を俯かせてしまう。

 しかし、それでも小さな勇気を振り絞って、ティナは――、

「あのっ……ワタ、シ、も、先、輩……に……見……て、ほしい、で……す」

「見る?」

「は……い、も、し……、よ、ろしけ、れ……ば、えっ、と……、その……、っ、いっ、一緒、に……っ、っ、見た、い、なって……思って……」

 ロイのコートの裾を摘まむティナの手。わずかに、ティナはそれに力を込めた。

 ロイは考えてみるが、見る、ということはなにかの物か、なにかの景色だろう。あまり危険はなさそうである。強いて言うならば、夜だから足元が覚束《おぼつか》ないぐらい。

 それぐらいなら、と、ロイはいったん、ティナの手をコートから離させて、改めて彼女の手を自分の手で繋いだ。

「あっ……」 と、さらに頬を赤らめるティナ。
「それじゃあ、行こうか。でも、少しだからね?」

 誰から見ても好ましい笑顔を浮かべるロイ。
 彼のその表情に、ティナの胸は切なくなって、同時にドキドキした。抑えることができないぐらい、高鳴った。

 これではまるで、ティナが少年向け小説のヒロインではなく、ロイが少女向け小説のヒーローのようである。それこそ、ティナが行きの汽車の中で読んでいたような少女向け小説の。

「~~~~っ」

 いつも遠くから隠れて見るだけだった先輩が、隣にいる。
 どんな名目があっても声をかけられそうになかった年上の男の人に、今、喋りかけている。

 ティナは今、満足しているのに、なのに、もっと隣にいたくて、喋り続けていたかった。
 ティナに限らず、初恋は誰にとっても、胸が締め付けられるように苦しくなって、キュン――、と、してしまうモノなのだろう。

「センパ~イ? 早く~っ」

 茂みの奥で、リタがロイのことを急かしてくる。
 それに少しだけ苦笑交じりに微笑んで、ロイはティナと手を繋ぎながら、茂みを掻き分けて、リタのいる奥の方へ進む。

 すると――、
 そこには――、

「わっ……すごい……」



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