ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

2章3話 混浴、そして一糸まとわぬ姿(1)



 夜――、
 夕食をいただいたあと、ロイたちはいよいよ温泉に入ることになった。
 温泉で有名な癒しの都に、温泉旅行という名目ではるばる訪れてきたのだ。これで温泉に浸からないなんてことは、あってはならない。

 で――、
 ロイたちが泊まっている温泉宿には、大きく分けて2種類の温泉がある。

 即ち、大浴場と、部屋ごとの浴場。
 より細かく言えば、大浴場には日光の湯、月光の湯、星光の湯、と、3ヶ所浴場があるのだが、今はあまり関係ない。
 かなり豪勢なことに、部屋ごとの浴場とは文字どおりモノで、この温泉宿の全ての客室には、それぞれ個別の温泉が引かれていた。無論、ロイたちの部屋にもそれはある。

「はい、大浴場と部屋ごとの浴場、みんながどっちに入りたいかアンケートを取ります」

 なんて、ロイが部屋で宣言する。
 部屋にはロイ以外にも、全員が揃っていた。

「シィはロイくんと混浴したいから個別浴場かな♪」
「私にはシィが抜け駆けしないように、きっちりと見張っておく必要があるわ」

「わたしもお兄ちゃんと一緒に温泉に入るよ! だって家族だもん」
「それはわたしにも言えることですね」

 と、あまり学生としては褒められたことではないが、ここまではロイの予想どおりだった。が、予想できないのはここからである。

 まず、ロイはリタに目を向けた。
 リタはベッドをトランポリンの代わりにして遊ぶのをやめて、ロイと向き合う。

「リタちゃんはどうしたい? どっちがいい?」
「ぅん? みんなで入った方が楽しいじゃん! アタシは個別浴場でワイワイする派」

「そっか、なら、流石にリタちゃんと混浴するわけにはいかないし、ボクは時間をズラ――」
「えっ、そうしたら、アタシの前に意思表明した4人の意見が変わっちゃうじゃん。もしかしたら、だけど。センパイが1人そう言うだけで、全員に影響がいくんだぜ?」

「なんで今に限って微妙に意見が鋭いのかなぁ……」
「それに! アタシはセンパイと混浴でも一向にかまわない! 水着と同じぐらいの肌面積になるんだし、タオルで身体を隠せばヘーキヘーキ!」

 言うと、リタは「にひっ」と親しみやすい笑顔を浮かべた。

 ここで、ロイは確信した。リタは同い年の女の子より胸が、つまり女の子として『男子との違い』が育っているのにも関わらず、十中八九、性に目覚めていないんだ、と。カレシなんて存在に憧れているらしいが、なにも知らないという意味では、あのティナよりも純真で、実際にカレシを作っても友達の延長線で終わる可能性が高い。

 余談だが、リタは自慰行為すらしたことないだろう。

 要するに、なにが言いたいのかというと(リアちゃんに混浴は避けた方がいい、って、注意しても、意図っていうか、伝わってほしい感覚が伝わらないんだろうね)ということである。

 よって、早々にロイは、リタに諦めてもらうことを諦めた。

「なら、ティナちゃんはどうする?」
「わ、わわわわっ、……ワ、タシで、すか?」

 まるで沸騰したように、頭から煙が上がりそうなぐらい、ティナは顔を真っ赤にする。
 口をアワアワさせて、さらには両手までアワアワ動かす。

 この様子だと、リタとは違い、男の子と女の子が一緒に温泉に入ることが、少なくとも今の自分にとっては刺激が強いことだと自覚しているはずだった。
 まして、ティナにとってロイは憧れの先輩だ。好きな人の前で一糸まとわぬ姿になるなんで、想像しただけで、顔から火が出そうではないか。

「ワ……っ、タシは、大浴……場…………」
「でもさ、ティナ、そしたら1人で大浴場に行かなくちゃならなくなるんだよ? ティナにそんなことできるの~?」
「ワタシ、も……っ、個、別浴、場……が……いい、ですっ」

 イジワルそうにニヤニヤするリタ。彼女の煽りを受けて、ティナはあっけなく意見を曲げてしまった。

 それにティナにだって、恋い慕っている人と混浴したいという気持ちはあった。
 当たり前だが、性欲があるのは男の子だけではない。女の子にだって、ティナにだって、エッチなことに対する興味はある。

 言ってしまえば、混浴は恥ずかしかったが、リタの一言のおかげで、混浴に参加する理由とまではいかないが、大浴場に行きづらい理由はできた。ティナは無自覚ではあるが、それをラッキーに感じて、言い方は悪いが便乗したのである。本当は、もっと、より、便乗というよりは恋する乙女として切実な感覚なのだが。

「最後に、クリ――」
「ご主人様のいるところが、わたくしのいるところでございます♪」

 と、いうわけで、少年1人と美少女7人は、にわかには信じられないことに、ウソ偽りなく混浴することとなった。

 流石にティナがいるということで、恥ずかしがり屋な彼女のために、まずはロイが1人で脱衣所に入り服を脱ぎ、温泉に浸かり、頃合いを見計らって女の子たちがロイの次に脱衣場に入る、という形を取る。

 それにしてもティナの、混浴は許せるけど脱衣しているところは見られたくない、というのは、理解できるし共感もできるが、まさにザ・複雑で繊細な乙女心である。

 このようなことをロイが温泉に浸かりながら考えていると、ようやく、脱衣所の曇りガラスの引き戸に、女の子のシルエットが表れた。

 シルエットだけでは誰が誰だから判別が付かないが、みな、一様に楽しそうに服を脱いでいる気がする。
 そして数分経つと、ガラッ、と、曇りガラスの引き戸が開いた。

「――――」

 と、言葉を失うロイ。
 嗚呼、夢のような楽園がそこにはあった。



コメント

  • ノベルバユーザー366207

    けっ、、、、けしからんっ!

    0
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