ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章7話 イヌ耳、そしてネコ耳(1)
ラピスラズリの月の21日、土曜日の18時――、
焦げた赤茶色のレンガを積み重ねてできたようなオラーケルシュタット駅の駅舎。そしてその正面の噴水と平和の女神の像の前に、一行は集まっていた。
噴水は冬の夜ということで綺麗に水抜きされている。
平和の女神の像には真っ白な雪が降り積もっていて、それに、これから未明にかけて、ますます降り積もることだろう。
夜空はくすんだ黒色で、地面は対比するような純白。
往来する人々はみな一様にコートを着込んでいて、沁みるような冷たい北風から身を守っていた。
だが、なんとなくロイは、雪が降り、ガス灯が橙色を灯し、白い吐息が躍る西洋の街並みはオシャレだと感じる。
「初めましてっ、リタ・クーシー・エリハルトです! ご覧のとおりクーシーで、イヌ耳と尻尾がチャームポイント♪ みなさん年上ですので、気軽に、リタ、と、呼び捨てしてください」
ニッ、と、軽やかに笑うリタ。自分で言うように頭にはイヌ耳、おしりにはイヌの尾が付いていて、髪は本物のイヌを連想するぐらいフワフワ毛並みのポニーテールで、色はオールドゴールド。瞳は宝石でいう琥珀のような色をしていて、ツリ目がちで意思の強い性格が表れている気がした。
クーシーという種族であること、そしてまだイヴと同い年であること、その2つのせいか身長は135cmもなかった。もしかしたら、ギリギリ130cmにも届いていないかもしれない。だが、身長の低さと第二次性徴に入っていないか否かは関係ない。種族のせいで身長が130cmに届いていなくても、第二次性徴には入っているらしく、胸は思春期、つまり、性に目覚める時期の女の子らしく、健やかに膨らんでいて、女子としての発育の良さを窺わせた。
「あっ……あの……、っ、その……っ、ティナ・ケットシー・リーヌクロス…………です。ケットシー、で、えと、えと……ネコ耳とネコの尻尾……が、あり、ます、け……ど、お気にせ、ず、仲、良く……してもらえると……嬉しい、……です」
恥ずかしさと照れくささが混じった感じで、頬を乙女色に染めてこそばゆそうに微笑むティナ。育ちの良さが窺えて、優しくて、さらに控えめで、さらに大人しい性格も同時に伝わってきた。誰にでもフレンドリーそうなリタとは逆に、特に異性に対しては、初心で、清純で、奥手なのかもしれない。
髪の色はシルバーグレーで編み込みセミロングで、瞳は宝石でいうところの真珠のような色をしている。おっとりとしたタレ目は、彼女の穏やかさを象徴しているよう。
リタと似た感じの種族、ケットシーということで、身長がかなり低い。130cmはかろうじて超えているものの、135cmはないだろう。そして、リタの胸は年頃の女の子としてやわらかそうに実っていたものの、ティナの胸はぺったんこだった。
(こういう言い方は失礼かもしれないけど、リタがボクの前世でいうところのロリ巨乳っ娘で、ティナが王道ロリっ娘か。――っと、いけない。やっぱり、こういう見方は女の子に対してNGだね)
なんてロイが2人に対して感想を覚えている間に、今度はロイたちが2人に自己紹介する番になっていた。
とりあえず、ロイ、シーリーン、アリス、マリア、クリスティーナの順番でリタとティナに自己紹介する。
「わぁ! すごい! 本物のロイセンパイだ! ねぇ、ねぇ、今カノジョっているんですか? いないなら立候補しちゃおっかなぁ? にひっ」
「だ、ダメだよ……リタちゃん……。確……か、ロ、イ先輩、って……、そ、の……シーリーン先……輩……と、っ、……アリス、先輩、と、……お付き、合い、していたはず、だし……」
「リタちゃん? すこ~し、シィのカレシさんであるロイくんから離れようね~?」
なんて、シーリーンが早速、リタを牽制し始めた。前にも自分で話していたが、ハーレムは認めるし、フーリーという種族的にむしろ推奨しているが、そのメンバーは自分が認めた女の子でないと少し許せないらしい。
「まったく、シィも年下相手になに意地になっているのよ……」
と、ジト目のアリス。
どうやらアリスの方はシーリーンと比べて余裕があるようである。そもそも、リタがロイに対して本気でない、と、当たり前のことに気付いているからであるが。
その点、シーリーンはリタの年相応のはしゃぎっぷりにも目を瞑れないあたり、ロイに対してヤキモチ屋さんである。
「クリス、そろそろですかね?」
「さようでございますね。みなさま、汽車の乗車券をお配りいたします。なくさないように注意してくださいませ」
クリスティーナは言うと、ここに集まった全員に乗車券をしっかりと手渡す。
ふと、ロイが自分の乗車券を見ると、そこには番号が刻まれていた。どうやら、指定席らしい。
そして――、
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