ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章4話 クジ引き、そしてチケット(2)
「さて、でしたら、旅の準備はわたくしにお任せくださいませ!」
「いいの?」 と、ロイ。
「もちろんでございます! 主の旅の準備を代行させていただけるのも、メイドの務めでございますから。メイドの腕の見せ所でございますっ」
「もしかして、シィも……」
「はいっ、シーリーンさまがよろしければでございますが、シーリーンさまのメイドと協議して、わたくしもなにかしら準備の代行をしようと思いましたが、いかがですか?」
「はわわ、そ、それじゃあ、お願いします」
「承りました! メイドとして、ご主人様方の旅路を、完璧にサポートさせてみせましょう!」
腰に手を当てて、たゆん、と、低い身長、小さい身体に不釣り合いなほど大きな胸を張るクリスティーナ。ロイには少し難しい感覚だったが、彼女にしてみれば、本当にメイドとしての腕の見せ所なのかもしれない。
「これで準備は楽チンになったよ。あとは、残り2人を誰にするかだよ」
「イヴが決めていいよ。それはイヴが当てたチケットなんだし」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
ベッドの上で、イヴは「う~ん」と小さく唸りながら考え始める。
そして数秒後、イヴはふと、顔色を窺うようにみんなにあることを訊く。
「温泉に連れていくの、わたしの友達でもいい?」
「イヴの友達?」
「うん、お兄ちゃんたちは会ったことないけれど、いつも講義では近くの席に座って仲良しで、温泉にも一緒に行きたいなぁ、って、思ったんだけど……ダメ?」
小さく首を傾げ、潤んだ瞳で上目遣いしてくるイヴ。すごく甘やかしたくなる雰囲気を振り撒いていて、可愛らしくて、本当に可愛らしくて、いかにも幼い女の子らしい仕草であった。
これを断るのは少なくとも男子にはムリ、と、ロイは内心、イヴの可愛さに降参する。
しかしそれを抜きしても、チケットの所有者はイヴなのだ。
イヴの決定にロイが異を唱える権利はない。
「ダメじゃないですね。ただ、お友達のご家族に確認を取ってからですからね?」
「うん、お姉ちゃん」
「ちなみに、イヴちゃんのお友達って、どんな子なの?」
シーリーンが興味を持った様子でイヴに訊くと、イヴは少しだけ天井を見上げて、自分の友達である2人をイメージした。
「1人はリタちゃんで、もう1人はティナちゃんだよ」
「女の子か、よかった……」
ロイは思わず深い息を吐く。
別に妹に男子の友達がいてもかまわないが、それを想像してみると、意外とモヤモヤしてしまう。だが、それだけならば自分の過保護で済むのだが、仮に温泉旅行にまで連れてこようとする男友達がイヴにいたならば、なんというか……、こう……、隠しなさい、という気分になる。
「なに、お兄ちゃん? 男の子だと思ったのよ?」
「……、少しだけドキッとしていたのは事実だね」
「大丈夫だよ! わたしの将来の夢はお兄ちゃんのお嫁さんだから、他の男の子には興味ないよ!」
「それはそれでどうなんだろう?」
「それでお嬢様、続きは――」
「リタちゃんもティナちゃんもわたしと同じ魔術師学部のヒーラー学科。わたしはつい最近ヒーラーからシスターになったばかりだけど、2人はもうすぐビショップになれるかもしれない、ってレベルのシスターだよ」
「ほうほう」
実はロイがルーンナイトにまで昇進する裏側で、イヴの方も1ランク昇進していたのだ。
とりわけ、イヴは座学よりも実技の方が得意で、練習よりも本番で実力を発揮できるタイプなので、そこそこ余裕でヒーラーからシスターになれたのである。
「2人とも家から通っていて、貴族というわけでもないけど、寄宿舎生というわけでもない。リタちゃんの家族はパン屋さんで、ティナちゃんの家族はカフェを経営しているらしいよ」
「それでそれで?」
「でね、お兄ちゃん?」
「うん? なに?」
「リタちゃんの本名はリタ・クーシー・エリハルトで、ティナちゃんの本名はティナ・ケットシー・リーヌクロスなんだけど……」
「ん? クーシー? ケットシー?」
それはロイが前世の時から知っていたファンタジーにおける種族だった。
即ち、クーシーとケットシーとは――、
「2人ともとってもいい子だから、イヌ耳とネコ耳が付いていても、嫌いにならないでよ?」
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