ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章2話 冬の始まり、そして両手に花(2)
「それで、アリス、実際いろいろどうなったの?」
「私とお父様で先方に謝りに行ったわ、当たり前だけれど」
「うんうん」 と、シーリーン。
「でも先方も、レナード先輩との賭け、外ウマに負けたから、あれこれ吠えても貴族としての自分の評価を下げるだけだ、みっともないだけだ、って、まぁ、悔しそうにはしていたけれど、この結果を認めていたわ」
「うん、それで?」 と、ロイ。
「あと、私個人はお父様にも謝ったわ」
「ボクとレナード先輩も一緒に謝った時とは別に?」
そう、ロイとレナードの対決が終わったあと、2人はエルフ・ル・ドーラ家の屋敷に赴いて、アリエルに散々謝罪しまくった。当然、ロイとレナードがアリエルに頭を下げるのが筋なのだが、実際に頭を下げてみたところ、アリエル曰く「これは決闘の結果だ。それも、君たちは命を懸けていた。謝る必要はない。君たち2人は、欲するモノを欲することを諦めなかった。そしてそのために、全てを惜しまなかった。フッ、勝者が敗者に謝るなど、むしろ失礼だぞ。勝利を誇りたまえ」とのこと。
が、それとは別に、アリスはアリエルに謝っていたらしい。
「そうよ。それでね、ロイ?」
「ぅん?」
「お父様が、お家のことを抜きしても、孫の顔が早く見たい、って」
「普通結婚の方が先なんじゃないの!?」
「なんか、お父様の中ではロイと私、結婚しているも同然らしいわ」
「た、確かに……花嫁強奪なんてしちゃったからね」
「ロイは……イヤ、かしら? 私と、結婚するの」
悲しげな顔で、寂しそうな声を漏らすアリス。不安げに潤ませた瞳でロイのことを見上げて、珍しくオドオドした様子で、ロイからの答えを待つ。
アリスはこのように訊くが、ロイの答えなど、訊かれる前から決まっていた。
「イヤじゃないよ。むしろ、アリスと結婚できるなんて、幸せなことだと思う」
「~~~~っ」
自分から聞いたクセに、アリスは恥ずかしくて声にもならない声で嬉しさと気恥ずかしさの入り混じった乙女心を表現する。
と、ここでシーリーンがまたしても、ロイの腕を自分の方に引っ張った。
「ロイくん? シィとも結婚してくれるよね?」
「もちろん」
「あはっ、ロイくん、大好き♪」
ロイもだいぶこの世界に染まってきた。いや、もう15年以上も住んでいるから染まるのも当たり前なのだが、より正確に言うならば、前世の常識よりも現世の常識の方が根強くなってきた、と、言うべきか。
この年で結婚を視野に入れて交際するのは、前世では現実味を帯びないが、現世では普通にありえる話である。
要するに、前世よりも現世を優先するようになってきた。日本で生まれた人間が渡米して、いつの間にか日本よりもアメリカの常識を優先するようになった、という話のまんまである。
「コホン、まぁ、いろいろあったけれど、政略結婚についての後処理は、数日前に全て終わったわ」
「そっかぁ、ならよかったよ。ボクが実行犯なのに、一度謝罪に行ったあと、アリスに任せっきりだったから、気が気じゃなかったんだ」
「気持ちはわかるけれど、ロイの場合、できることが謝罪ぐらいしかないでしょう? 逆に謝罪以外、できることなんてあったかしら? 私に任せっきりでいいのよ。少なくとも今回は」
「ぐぬぬ……」
唸るロイ。
その後、3人は降り積もった雪に足跡を作りながら、学院の門扉に辿り着いた。
そこにいたのは2人の黒髪の美少女姉妹、イヴとマリアだった。
「むくぅ! お兄ちゃん、遅いよ! 寒くて死んじゃうかと思ったよ!」
「ゴメン、イヴ。で、どうしたの?」
ここ最近、王都では頻繁に雪が降っていたので、雪が降っている日は無理して一緒に帰らずに、早く講義が終わった順に帰ろう、とみんなで決めていたのだ。
だというのに、現に今、イヴとマリアは学院の門の前でロイのことを待っていた。
「少し買い物がしたかったんですよね」
「ああ、荷物持ちが必要だった?」
「ゴメンね、弟くん?」
「ううん、大丈夫だよ、姉さん」
「それにしても――」 と、マリア。
「お兄ちゃん――」 と、イヴ。
「? どうかした?」
「これじゃあ、お兄ちゃんの両腕が塞がっていて、わたしがお兄ちゃんと並んで歩けないよ!」
「わたしは我慢できるけど、お姉ちゃん的には、少し寂しいですね。弟くんの姉離れが深刻で」
「イヴちゃん! マリアさん! ロイくんはシィの婚約者さんだから、ロイくんのお隣はシィで決まりなんです!」
「ちょっと、シィ! ロイは私の婚約者でもあるのよ!」
コメント
ノベルバユーザー359879
めっちゃおもろいやん
たく
300話突破おめでとうございます!!