ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
4章9話 みんなの前で、ただ1人に伝えたくて――(2)
「――私は、ロイが好き。――私を、あなたの恋人にしてください」
まるで魔法で時が止まったかのような感じ。
果てしない時の流れは永遠で、その永遠からほんの一瞬だけを切り取って、さらにそれを永遠と同じ長さまで引き延ばしたような、少し不思議で、ほんのり淡い、そして儚い、特別な時間の流れ。
ロイはアリスの顔を見る。
透明感のある白い頬をほんのり染めて、その表情で、告白の返事は二の次で、想いを伝えること、それそのものが大切だった、と、言葉以外のナニカを伝えてくるようだった。
まさに、恋する乙女の顔。
ふと、ロイはシーリーンとイヴとマリアの方に視線をやった。
シーリーンはウィンクして、イヴはグッ、と、親指を立てて拳を突き出して、マリアは静かに目を伏せて頷く。
どうやら、アリスは事前に3人に気持ちを明かしていたようだ。
特に、シーリーンにも。
再び、ロイはアリスのことを正面から見据える。
そして動かせない右手の代わりに、左手で、アリスの頭を撫でた。
さらさらで、手の表面が心地よかった。
それで、数秒経ってようやくアリスの頭から手をどけると――、
「どうして、アリスはボクのことが好きなのかな?」
「優しいからよ」
「シィならわかるけど、アリスには――」
「ロイは、私だけを特別扱いしないで、他の人にも、それこそシィにも優しい。だから、私だけに優しくしてほしいと願うようになったのよ」
「――――」
「誰か1人を特別扱いしないロイを好きになって、好きになったから、ロイに特別扱いされる1人になりたかった。クス、ワガママかしら?」
「ううん、すごく、年相応の女の子らしいと思うよ」
ああ、アリスのそれはワガママだった。恐らく10人に訊いたら7人か8人ぐらいはわがままと思うだろう。
だが、可愛げのあるワガママではないか。
実に、微笑ましい駄々っ子ではないか。
そして、真剣なのに小さな、叶えてあげてもいいと許せるぐらいのエゴではないか。
「ボクは――、ずっとアリスのことを友達として見てきた」
「……っ」
ふいに、アリスは切なそうに、手を胸の前できゅっと握る。
そして不安で揺れるアリスの瞳。
「レナード先輩にも、友達としてアリスとの交際を認めるわけにはいかない! とか。アリスを好きな先輩のことが気に食わない! とか。そんなことを散々言ってきた」
「…………」
「でも、さ」
「? なにかしら?」
「普通、好きでもない女の子のために、そこまで必死にならないよね?」
「――えっ」
「普通、友達だからって理由だけじゃ、ここまで暴れる理由として足りないよね?」
「ロイ、それって――」
「それに、病院の廊下ですれ違った時、先輩にも言われたよ。結婚式ぶっ壊して、アリスを好きな俺をぶん殴って、それで責任を取らねぇなんて男らしくねぇよなぁ? って」
ハッ、とするアリス。
対して、ロイは情けなさそうに笑って、左手の人差し指で自分の頬を恥ずかしげに掻いていた。まるで、面目ない、と、アリスに許してもらいたさそうに。
それを認めた瞬間に、アリスの目尻に、大粒の雫が溜まる。
「アリス。ボクもキミのことが好きだ」
「~~~~っ」
嗚咽を漏らしそうになるのを堪えるために、アリスは泣きそうになりながらも、自分の口を両手で覆う。
その様子を見ていたシーリーンとイヴとマリアは、よかったよかった、と、3人で顔を見合わせてニコニコする。シーリーンは、フーリーという種族柄、みんなで幸せになれることを喜び。一方で、イヴとマリアだって、少し納得いかなくて、少し羨ましくても、幸せな瞬間をきちんと幸せと認識できて、他人の幸せを自分のことのように喜べる、人として大切な感性を持っているのだ。
「アリス」
「――っ、はい」
涙声で、震えた声でアリスはロイの呼びかけに応える。
「これからよろしくね、アリス」
「ええ……っ、ロイ、大好き――」
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コメント
ノベルバユーザー359879
やるやん
ノベルバユーザー264601
羨まし~い✨