ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章9話 晴天の下で、リベンジマッチに――(3)



「先輩!?」 と、叫ぶロイ。

 そう、レナードは覚悟していたとはいえ、現実、片方からの【魔術大砲】を彼は直撃してしまう。爆発による煙が収まると、そこには左腕を危ない方向に曲げ、左脇腹の制服をボロボロに炭化させ、そこから抉れてドブドブと血を流すレナードの姿が。

 幸いにも右半身はそれなりに無事だったが、もうこの決闘では、左手で剣を持つことは不可能だろう。

「クッッ……」
 レナードには悪いが、彼にあれだけの【魔術大砲】を撃ったならば、今、アリエルには多少の隙が生まれているはず。少なくとも、次の魔術発動までには時間が絶対にある。

 なら、そこを衝かない道理はない。
 ロイは風を斬る音を鳴らして聖剣を振るう。刹那、飛翔剣翼を発動し片方のアリエルに向かって突き進む。

「馬鹿め、大技を使った反動で魔術が使えないのなら、普通に、身体で躱せばいいのだけの話だ」

 飛翔剣翼を躱すアリエル。明らかに肉体強化の魔術を自らの肉体にキャストしていた。
 だが、ロイはそれを読んでいた。そもそも、アリエルの肉体強化は前回の決闘ですでに見ている。だというのに対策していない方がおかしいだろう。

 ゆえに瞬間、ロイは大きく叫んだ。

「爆散しろ!」
 事実、エクスカリバーの持ち主であるロイはそう命令すると、その聖剣は彼のイメージを汲み取って飛翔剣翼を爆発させた。

 先ほどの【魔術大砲】と比べても引けを取らない規模の爆発である。
 ステージの床はまるで国を挙げての戦争の跡のように破壊され尽くされてしまい、まだ勝負の決着は付いていないのに、この決闘の激しさを物語っているようであった。

 だが、爆発の砂煙が収まると、そこには信じられない光景が広がっていた。

「そんな……無傷……?」
「察していると思うから答え合わせをするが、肉体強化の魔術を1つだけキャストしているわけではない。多重キャストしていたのだよ」

「――ッッ!」
「そして――」

 アリエルが、そして、と言う前にロイは気付いていた。
 もう片方のアリエルがロイの近付いていることに。

 マズいマズいマズいマズいマズいッッ! アリエルは肉体強化の魔術を多重キャストしているのだ。それも、エクスカリバーのスキルを使った爆発を直撃しても無傷ですませられるぐらい。ならば、それはもう片方の方のアリエルも同じと考えるのが普通である。

 事実、もう片方のアリエルは現実と認めることができないレベルの速度でロイに迫りくる。

 エクスカリバーを振って牽制するロイ。
 しかしアリエルはそれを悠々と躱して、ロイの腹部に拳を叩き込む。

 ゴッッ、と、鈍い音がした。間違いなくロイの腹部に位置する内臓がダメになった音だ。
 それを証明するようにロイは口から大量の血を吐く。

「――これで終わりかな?」
 と、アリエルは空を仰いで呟く。

 ふざけるな、これで終われるわけがない。ロイにしたって、レナードにしたって。
 ロイは倒れそうになる身体を剣で支えて、光が消えそうな目でアリエルを正面から見据えた。逃げない。逃げるなんて、ありえない。

 だがしかし、翻ってレナードはまだ倒れたまま。

(ふざけるな……っ、ロイのクソ野郎が立っているのに、この俺が立てねぇだと! こんな時に、身体張って笑えねぇ冗談やってる場合じゃねぇんだよォオオオオオオ!)

 が、いくら身体に力を込めても立つことは叶わない。

(せめて、あのクソ親父の魔術発動の原理さえわかれば。――ぶっちゃけ、もう『身体の部位を鳴らして魔術を発動させていること』はわかっている。だが、なぜ身体の部位を鳴らすと魔術が発動するんだよ、意味わかんねぇ!)

 レナードは立てない。だからこそ、立ち上がるまでは頭に力を入れるのだ。

(術式っていうのは複雑なモノだ。普通の詠唱なら空気の振動で、詠唱破棄なら脳波で大気の魔力に波を立てている。だが、身体の部位を鳴らすだけじゃ、魔力に波を立てることはできても、術式を組み合わせて魔術として成立させることは不可能のはず。身体の部位を鳴らすだけじゃ波として単純すぎる)

 つまり、どういうことか――?
(もしかして、最初からある程度成立しているモノを利用しているのか? 例えば15%成立している術式、20%成立している術式、25%成立している術式、30%成立している術式、これらのパーツをかき集めて、残り10%だけ、自分が手を加えるということか?)

 ということは――?
(そうだ……っ、俺はなに馬鹿なことを考えていた! 勉強をサボっても現時点である知識を駆使するのが俺じゃねぇか!)

 そして――、
(俺の仮説が正しければ――ッッ)

 次の瞬間――、
「癒せ、癒せ、癒せ! 唱えるたびに祈りは強く、祈るたびに、光は優しく! 【優しい光サンフテスリヒツ】!」
「「――――ッッ!?」」

 瞬間、レナード本人にはもちろん、アリエルにリンチされていたロイにもヒーリングが発動した。
 そしてロイはアリエルの隙を衝いてレナードの方に駆け寄った。
 これで奇しくも、初期配置と同じように、ロイとレナードが並んで、2人のアリエルと対峙している状態になった。

「先輩! 気絶していたんじゃ……っ」
「お礼が先じゃねぇのか!? アァ!?」

 しかし、先にやるべきことがあったので、レナードは「ゴホン」と咳払いする。

「エルフ・ル・ドーラ侯爵、アンタの魔術発動の原理は完璧に暴いた」


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コメント

  • ノベルバユーザー359879

    やるやんレナード

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