ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章6話 結婚式で、花嫁を好いている2人の少年は――(2)



 瞬間、チャペルの中が痛々しいぐらいの静寂に包まれた。
 シン、と静まり返ったというレベルではない。時の流れが冷却されたと言っても過言ではないレベルだった。

 誇張抜きに、卒倒する人まで現れ始めている。
 だが、アリエルは努めて厳かにこう答えた。

「いいだろう。だが、これで最後だ」

 その時、レナードは内心、ほくそ笑んだ。
 作戦の第一段階がクリアされたのである。

 ここで聖剣を下ろすロイとレナード。
 次いで、レナードは今度、アリエルではなくカールの方に、とある相談を持ちかけた。

「オネス・ト・エ・フォート公爵」
「な、なんだ……っ」

「貴公にも、俺は決闘を申し込む」
「ハァ!?」 と、唖然とするカール。

「公爵様だって、ここまでされたら面目丸つぶれだろ? 所詮、俺は粋がっているだけの学生だ。楽勝だと思うぜ?」
「待ちたまえ、レナード君。君は今、俺は決闘を申し込むと言った。オネス・ト・エ・フォート公爵に対する決闘に、ロイ君は参戦しないのかね?」

 釣れた。
 レナードの作戦にものの見事にアリエルは引っかかってしまう。

「まぁ、公爵様が野蛮なのがお嫌いならば、武力を持ちえない方法で決闘しましょうよ」

 レナードが考えた作戦の『鍵』は2つある。
 1つは、ロイとレナードがアリエルとの決闘を認めてもらえるということ。
 そしてもう1つは、今朝、空を飛んでいた時に確認し合ったように、カールは偉くても強くはないということ。

「外ウマ、って、ご存知ですか?」
「……っ、例を挙げると、決闘が起きた際に、AとBが戦う。そしてAとBのどちらが勝つかを予想してCとDがギャンブルする。そしてCかDのどちらか、予想を当てた方が勝ち、だったか……?」

「俺は『ロイ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイクとレナード・ハイインテンス・ルートラインが勝つ』に賭けるが、公爵様はどう考えても立場上、『アリエル・エルフ・ル・ドーラ・オーセンティックシンフォニーが勝つ』に賭けるしかないよなァ? 俺たちに賭けたら、まぁ、ぶっちゃけ意味不明、敵を応援することになるし」
「ぐぬぅ……っっ」

「別に決闘を認めなくてもいいぜ? そん時は、顔に泥を塗られたのに決闘を受諾しなかった臆病者と噂されるだけだ」

 やられた、と、カールは自分の失態を悔やむ。
 この少年たちは自分が戦いにおいて弱いことを知っている。そこは別に驚くようなことではない。

 問題なのは、決闘が弱いのは恥ではないにしても、決闘のジャンルを武力からギャンブルという、戦闘力が関係しないカテゴリーに変えさせてもらっても、それでもなお、決闘を受けないということだ。

 これでは、自分が弱いから、という言い訳が使えない。
 実際にレナードは自分にベットしているからケガをするだろうが、アリエルにベットする自分は一切ケガをする可能性なんてない。自分の代わりにアリエルが戦ってくれるのだから。

 これで逃げたら本当に、臆病者扱いされてしまう。

「クッ、なら君たちを不敬ざ――」
「不敬罪にするのはやめておいた方がいいぜ」

「なんだとォ!?」
「――、さて、ロイ、俺は講義をサボってからよく知らねぇけど、不敬罪って禁錮、何年だ?」

「禁錮、3~15年だけど、今回は軽く見積もって5年は絶対に超えるでしょうね」
「ハッ、だよなァ」

 瞬間、アリエルがレナードの作戦に気付いた。否、本当に気付けたのは、作戦ではなく、ロイとレナードの覚悟というべきか。なるほど、確かに生半可な決意でここにきて、今、胸を張って立っているわけではないらしい。

 だが、それゆえに口惜しい。
 彼らがここにこなかったら、2人には間違いなく輝かしい未来が待っているというのに。

 悔やんでも悔やみきれないほど残念だ。

 だが、こうなってしまったものは仕方がない。
 アリエルは、ロイとレナードの覚悟を汲んで、2人に問う。

「――決闘、か。それは王国の法律で認められている立派な物事の解決の手段だ。貴族といえども、私とオネス・ト・エ・フォート公爵に決闘を挑むこと、それそのものに問題はない。それで――」

「「――――」」

「――それで、キミたちはなにを懸ける?」

 レナードは内心で笑ってしまう。
 ロイの方は、自分たちの意図を察したアリエルに、感謝さえした。

 なにを懸けるか、だって?

 愚問だ。
 この場を収めるために合理的な対価は1つしかない。
 そして合理的か否かは無視したにしても、自分たちのアリスに懸ける熱意を認めてもらう対価も、同じく1つしかない。

 咎めるような目をしているアリエル。事実、本当に咎めているのだろう。
 それに、ロイは奥に炎を宿した瞳で、レナードはギラギラした凶暴な双眸で応じる。

 往くぞ――、
 もう、否、最初から、後戻りなんてできない――、
 ならば、無茶でも、無謀でも、愚かでも、救いようがなくても――、

 ――がむしゃらに! 全力で! 前に進むだけ!



「「貴族にケンカを売るんだ! 命を懸けるッッ!」」



 その場にいた全員が絶句する。
 察していたアリエルでさえ、実際に耳にして、それを疑った。

「さぁ! 楽しもうじゃねぇか!」
「一世一代、ボクたちだけ命が懸かったギャンブルを!」



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コメント

  • ノベルバユーザー359879

    イケメンすぎるやん///

    1
  • HARO

    命掛ける、とか
    かっこいいかよ

    3
  • rui

    追い詰められたが故の言い訳じゃない「命を掛ける」
    いいと思います

    5
  • ペンギン

    すごい覚悟ですね...
    好きな人のためや大切な人のためにそこまで懸けれるのは、「尊敬」しますね...
    二人とも絶対に勝ってください!

    4
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