ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章9話 挑発のあとで、決闘を――(3)



 魔術を使えない状態にすれば、魔術師が騎士に勝てないのは自明だ。
 しかしこの状況は、自分だけ魔術が封じられているのに、相手は魔術を使える状態である。両者が互いに魔術を使えない状態とはお世辞にも言えない。

 結果、ロイは今、肉体強化もヒーリングすらもできない窮地に陥ってしまった。
 無論、爆発ぐらいでアリエルの魔術を封じられるとは思っていなかったが、それでも、詠唱破棄ぐらいは阻止できると踏んでいたが……これではロイだけが損をしてしまったのと同義である。

「今度は私から往くぞ」
 再びアリエルは右手の親指と人差し指を鳴らす。

 そして顕現する【魔術大砲】。正面から、今度は5つである。
 まるで飛翔する竜のような速度で迫ってくる5つの魔力でできた砲弾。
 肉体強化にしろ、魔術防壁にしろ、風にしろ、魔術を使えない状態でロイが眼前に迫りくる攻撃を躱すのは難しい。

 唯一、突破口があるとすれば、今、自分が両手握っている聖剣をおいて他にない。
 だが先ほども、エクスカリバーの飛翔剣翼で【魔術大砲】を相殺しているが、同じ手が2度通用する相手とも思えない。また砂煙を発生させようにも、同じ轍を踏むだけであるのは火を見るよりも明らか。

(考えろ考えろ考えろ! 想像するんだ! 想像した分だけ、エクスカリバーは応えてくれる!)
 瞬間、ロイの頭の中に1つの策が閃く。

 控えめに言ってバカのやり方だ。失敗したら自分が敗北する。だが、やればわずかにでも勝てる可能性があるのだ。なにも挑まなければ敗北は必然なのに、挑めば勝機が生まれる。ならば、挑まない道理はどこにもない。

 思いっきりやればいい。
 やらずに後悔するよりも、やって後悔した方が絶対にマシなのだから。

 ロイは聖剣を自分の真上に掲げて構える。
 使う技はロイが持ちうる最強の技、アリシアとの戦いでもレナードとの戦いでも使った聖剣の波動。

 だが――、
 ――ただの聖剣の波動にあらず。

 想像するのだ。
 ただ聖剣の波動を撃つのではなく、それが当たったら、盛大に爆発するイメージを!

 往くぞ。振りかざす純白の輝き。纏うのは黄金の風。

「エクス――ッッ、カリバアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 弩ッ、轟――ッッ! と、竜がそのあぎとから放つ破壊光線咆哮のごとき極光が、エクスカリバーの切っ先から放たれる。大気中の魔力を燃やすように熔かしながら、聖剣の波動は5つの【魔術大砲】に向かって世界を鳴動させながら突き進む。

 1万分の1秒にも満たない時間のあと、聖剣の波動と【魔術大砲】が激突した。

 そして同時に王都のこの地域一帯を揺らすような爆発が起きた。
 幸いにもその爆発は空中で起こったため、地上、ステージの上にいたロイとアリエルは無事だったが。

「ロイ君、この私に、同じ手が通用するとでも?」
「――――」 と、ロイは答えない。
「しかも、1回目ですら失敗に終わった手を」

 すっ、と、アリエルは右手を構えてロイに向けた。魔術を使う気である。

 しかし、瞬間、アリエルの表情かおに、この決闘で2回目の焦燥が滲む。

 それを確認して、ロイは口の端を吊り上げた。

「どうですか? 今度こそ魔術が使えないでしょう?」
「なん……ッッ、だと!?」

 何度指をパチン、パチン、と、鳴らしても、一向に魔術は発動しない。
 ロイがしたことは、火と酸素の関係を知っていれば誰でも思い付くモノである。

「爆風消火 ver. 魔力」
「爆風消火……!?」

「――『油田火災』ってご存知ですか? これは、言ってしまえば油の海が炎上する火災なのだから、当然、普通の火事よりも規模が比べ物にならないほど大きいです」

 事実、ロイの前世のイラクでは、3ヶ月以上も鎮火できなかった油田火災も存在した。

「そんな油田火災で普通の消防手段よりも効果が見込めるのが『爆風消火』という消火方法なんです。火事の現場で意図的にダイナマイトを使い爆発を起こす。結果、酸素が急激に消費されて、酸素がなくなれば火は消えるので、瞬間的に鎮火してしまう。かなり、本当にかなり端折はしょって説明すれば、それが爆風消火」

「馬鹿な……、そんな技術が存在したのか!?」
「ボクはそれを魔力に応用した。聖剣の波動に爆風消火 ver. 魔力のイメージを流し込んだんです。結果、聖剣の波動の余波にキャストされた爆風消火 ver. 魔力によって、周囲の魔力は急激に消費されて、その周辺にいる者たちは魔術を使えなくなる」

「――――ッッ」
「名付けて――消滅のほむら



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コメント

  • ノベルバユーザー359879

    ええやん

    1
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