ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章7話 挑発のあとで、決闘を――(1)



 紛うことなく、ロイがアリエルに白状したことは不敬だ。ゆえに、アリエルがロイに礼節を払う道理などどこにもない。
 だからアリエルがロイに応えるのは、礼節ではなく、この少年に覚悟には応じなければならないという、一種の良心である。貴族としてのプライドといっても過言ではない。

 なんでもかんでも不敬罪にすればいいというものではない。
 アリエルは、目を見てロイの真価を量る。
 王国における上流階級、いわゆる上の民として、この下の民である少年になにをほうじればいいか。

 自明。

 目の前の少年の双眸に宿る覚悟は『戦う覚悟』だ。
 ならば、戦ってやるのがアリエルの義理である。

「私が勝てば、娘、アリスは連れていく」
「ボクが勝てば、娘さん、アリスさんを学院に留まらせてください」

 実はアリエルはグーテランド七星団学院の卒業生である。
 幸いにも、学院の決闘場は、学院の卒業生でも使えたので、こうして今、ロイとアリエルは決闘に挑もうとしている。

 観客はシーリーンとアリスと、イヴ、そしてマリアの4人しかいない。
 その4人の想いを一身に背負って、ステージの上で、ロイはアリエルと対峙する。

 もう空は完璧に夜だった。まるで寿命を迎えそうな星が煌々と燃えるように、西の城壁の果てに夕日がほとんど沈む。最後の淡い茜色より赤い橙色の光。

 それを背に、ロイは右手を前方にかざした。
 まだこの日を終わらせるわけにはいかない。
 純白の輝きを瞬かせ、渦巻くは黄金の風。

「 顕現せよ、エクスカリバー 」

 主に勅令を命じられた騎士のように、颯爽と、エクスカリバーはロイの右手に顕現する。
 己が聖剣を両手で構えて、ロイは気高く光る切っ先を貴族であるアリエルに向けた。

 翻ってアリエルは、いつでも魔術を撃てるように、右手をロイに向け、静かに、ゆっくり、息を吐く。次いで、調子を整えるように、右足を2回足踏みさせた。

 そして――、

「来たまえ」
 たった一言で決闘は始まる。

「――――ッッ」
 早々にロイは肉体強化の魔術を詠唱破棄で自分の身体にキャストする。
 疾ッッ、と、風と同じ速さでロイはアリエルに速攻を仕掛けようとした。

 対してアリエルは、自分の左足を2回その場で足踏みさせるだけ。

 が、それでロイの速攻は阻まれた。
 突如、ロイは走っている最中に身体のバランスを崩して、前方につんのめる。

(これは、魔術を無効化する魔術の【零の境地ジィロ・イミネンス】!? Aランク魔術の詠唱破棄!?)

 なんとかロイは身体のバランスを立て直す。
 だがその時すでに、アリエルの次の一手は発動していた。

 アリエルは右手の親指と人差し指を高速で3回鳴らす。
 まるでリズムと取るように。

「これは……ッ!?」
「――【魔弾ヘクセレイ・クーゲル】の上位互換魔術、【魔術大砲ヘクセレイ・カノーナ】だ」
「それを詠唱破棄でトリプルキャスト!?」

 大気が唸るような重低音を木霊しながら、3つの魔力の砲弾がロイを肉薄にしようと轟々と迫る。ダメだ。これは【聖なる光の障壁バリエラン・ハイリゲンリヒツ】では防げない。そう判断したロイは、3つの【魔術大砲】にエクスカリバーの飛ぶ斬撃、飛翔剣翼を同じく3つ撃った。

 瞬間、決闘場そのものを揺らすような大爆発が発生する。
 爆風がシーリーンたちのいる観客席まで届き、竜巻を彷彿させるような上昇気流がステージに荒れ狂う。

「ハッ」 と、アリエルは鼻で笑う。

(この目くらましで少しでも時間を稼げれば……!!)
 が、ロイが砂煙の中から聖剣を構えてアリエルに突撃しようとした、次の瞬間だった。

 砂塵が舞う領域から、ロイがアリエルの立っている近く、視界が開けている地点に行くと、あろうことか、アリエルはロイが砂煙の中から突撃してくるのを察知していたのか、すでに右手の親指と人差し指を鳴らす構えで向けていた。

「索敵魔術で目くらましを無効化!? しかも詠唱は聞こえなかったのに!?」
「――爆ぜたまえ」

 刹那、至近距離で発動する【魔術大砲】。
 以前、ジェレミアに受けた【魔弾】とは比較にならない、高密度の魔力の塊がロイに襲いかかる。左右にステップしても避けきれないし、バックステップしたところで【魔術大砲】の射線からは外れない。


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コメント

  • ノベルバユーザー359879

    勝ってほしいやん

    0
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