ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章3話 ひとりで、抱え込んで――(1)



 昨夜、シーリーンには事情を説明したものの、イヴとマリアはまだ本当のことを知らない。
 政略結婚することになっているなど、アリスでなくても、あまり大っぴらにしたい事実ではない。偽とはいえ一度、恋人同士になってしまったのだから、誤解を解く場合、その過程で、どうしても政略結婚のことを話さなければなくなる。

 アリスは後ろめたさがあったものの、それを良しとしなかった。
 ロイの方も、アリスの気持ちを優先して、イヴとマリアには伝えないことに決める。

「お兄ちゃ~ん、大好きだよ~♡」
「弟くん、両手に花ですねっ♪」

 だからイヴとマリアが対抗心を抑えられず、ロイに甘えてくるのも必然だったのかもしれない。
 放課後、王都、城下の街のメインストリートを、いつのも5人は歩いていた。
 いつもの5人とは、言わずもがな、ロイ、シーリーン、アリス、イヴ、マリアの5人である。

「ねぇ、アリス、イヴちゃんとマリアさんはどうしたの?」
「シィに加えて表面上は私までロイと付き合うことになったから、お兄ちゃん、もしくは弟くんを奪われないように対抗心を燃やしているんじゃないかしら?」

 事実、そのとおりだった。
 ロイと、彼の両腕に抱き付く姉妹を少し後方から眺めながら、シーリーンとアリスは、前の3人に聞こえないように会話する。

「にしても、ぐぬぬ……、アリスはともかく、シィは本物の恋人さんなのに、シィの目の前でイヴちゃんもマリアさんも、ロイくんにくっ付きすぎだよぉ……。シィもロイくんとイチャイチャしたいのにぃ……」
「すっかりシィはロイにメロメロなのね」

 軽く、少しだけ呆れたようにアリスは言う。
 対してシーリーンは、小柄な身長に不釣り合いなほど大きい胸を自信満々に張った。

「アリスもシィの立場になったらわかると思うよ? 本当にロイくんは、白馬の王子様みたいだったもん♡」
「ロイの目線でみたら違うかもしれないけれど、ヒロインであるシィの目線で見たらそうでしょうね」
「ふふ、シィはロイくんにとってヒロインかぁ。アリスも嬉しいことを言ってくれるね」

 嬉しそうに微笑むシーリーン。
 そんな彼女の隣を歩いて、ふいに、アリスは少しだけ寂しい感じになる。

「シィはすごいわね」
「シィが? ロイくんじゃなくて?」

「言っていたでしょ、ハーレムを認められるって」
「うん、それが?」

「私もハーレムについては本人たちが幸せならいいと思うけれど、シィほど前向きにはなれそうにないから」
「? どういうこと?」

「仮に私に好きな人ができて、その人がハーレムを作ったら、私にまで愛情は回ってくるのか、想像したら不安で、ね……」
「なら、ロイくんなら安心できるかも」

 シーリーンは即答する。瞳に疑心はなく、口調にも迷いはない。
 心の底からロイのことを信頼していて、彼と恋人であることに安心しているのだろう。
 彼女の言葉を受けて、アリスの胸は、一度だけ、トクン……と鳴った。

「ロイくんなら、きっと、絶対、ハーレムを作ったとしても全員を平等に愛してくれると思うよ?」
「それ、ロイのことを持ち上げすぎ、よいしょしすぎじゃないかしら?」

「そうかなぁ?」
「なら、シィはなにを根拠にロイのことを信じているの?」

「ふふ、信じたいことが信じることの根拠だよ?」

 そう言い切ってみせるシーリーン。
 無論、ロイは悪い人間ではない。人として当たり前な優しさを持っているし、なにかを彼と約束するような時は、大半の人は彼に一定のレベルの信頼感を抱くはず。

 だがシーリーンはそれ以上だった。
 自分がロイのことを信じたいから全面的に信じている。
 相手であるロイではなく、シーリーン自身の中に信じられる理由、根拠がある。

 なんとなく、アリスは――、

(そんな関係、羨ましいわね)

 ――と、ロイとシーリーンの関係が眩しく感じた。


「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ノベルバユーザー359879

    おもろいやん

    0
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