ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章7話 決闘場で、学部最強の騎士と――(1)
エクスカリバーとアスカロン。聖剣と聖剣。
その剣戟の余波は凄絶なモノだった。
すでに世界は夕闇に染まりつつある時間帯なのに、純白の輝きと紫電のごとき燐光が決闘場のステージ周辺を煌々と照らす。そして黄金の風の風圧と、どこからともなく噴出された蒼炎が、轟々とステージを抉り、そして焦がした。
「アアアアアアアアアアッッ!」
ロイはレナードよりも腕力に秀でていた。それをこの戦闘における強みとして、一撃一撃、一振り一振りに万力のごとき重圧をかける。轟ッ、と、エクスカリバーの刃が風を斬り、大気を唸らせて、レナードに迫るではないか。
「――――ッッ」
レナードはロイよりもテクニックに長けていた。それを自覚すると、ロイのエクスカリバーにアスカロンを撃ち合わせて、巧妙に、紙一重で斬撃を躱していく。パワーで劣るならばテクニックでその差を補えばいい。そう言わんばかりに撃ち合わす聖剣と聖剣。決闘場にぶつけ合う刃同士の金属音が高鳴った。
「エクスカリバーッ! 斬撃の四重奏!」
ロイがエクスカリバーにイメージを流し込む。そのイメージが鮮明であればあるほど、それを完璧に再現してくるのはエクスカリバーのスキルだ。
ロイが想像するのは、一振りで4つの斬撃を生み出す現象。
瞬間、エクスカリバーの刃は時空を歪めて、一振りでレナードの首、右手、脇腹、左脚を斬ってしまおうと襲来する。
「どうですか! 聖剣とはいえ、たった1本じゃ4つの斬撃を対処できないでしょう!?」
「舐められたものだなァ……っっ!」
レナードは吼える。そしてアスカロンを、エクスカリバーの4つの斬撃、その1つに撃ち合わせた。鳴り響くやたら甲高い金属音。
無論、本来ならこれでエクスカリバーの軌道を逸らせるのは4つの斬撃のうち1つだけだ。
だが、たった1つ軌道を逸らされただけで、他の3つの軌道まで逸らされてしまった。
偶然、そしてロイの必死の機転により、奇跡的にも斬撃の1つがレナードの頬を掠めたが、それだけで斬撃の四重奏はほとんど無効化されてしまう。
そして、いったんお互いに距離を置くロイとレナード。
「やるじゃねぇか。完璧に4つ全ての軌道を逸らした手応えがあったのに、とっさの判断で1つだけでも当ててくるとは」
心底愉快そうに、レナードは頬の掠り傷から流れ始めた血を、制服の裾で拭う。
「先輩こそやるじゃないですか。今のが、聖剣・アスカロンのスキル……っ」
一方で、実はロイの方も楽しそうに口元を吊り上げる。
久しぶりだったのだ。自分と同じぐらい強い相手と戦えるのが。
拮抗した実力に、互いの剣のスペックも同じぐらい上々。これで男の血が、騎士としての血が、滾らないわけがない。
「なら次は――っ」
少しバックステップするロイ。そしてなにもない目の前の空間をエクスカリバーで2回斬った。その瞬間、生まれいずるのは2つの『飛ぶ斬撃』。その技の名を、飛翔剣翼という。
レナードを肉薄にするために2つの、比翼のような斬撃が飛んでくる。
しかし同時、レナードはとある詠唱を唱える。
「聖なる光、形を以って、顕れよ。神のご加護を、その者に。――【聖なる光の障壁】!」
「っ、【聖なる光の障壁】ごときでは、ボクの飛翔剣翼は防ぎきれませんよ!?」
「急かすんじゃねぇよ」
と、レナードは不敵に笑う。
そして、なんと信じられないことに――、
「――本番はこれからだ」
「なん……っ」
自分のアスカロンで、自分で展開した【聖なる光の障壁】を斬った。
だが、【聖なる光の障壁】に一切の目に見える変化は訪れない。アスカロンの斬撃を受けたのにどこにも斬撃の跡は見当たらないし、かといって魔力の密度が上昇して普通より、より強固なモノになったわけでもなかった。
そして数瞬後、ロイの飛翔剣翼とレナードの【聖なる光の障壁】が激突する。
聖剣から飛ばされた斬撃ということで、激突の衝撃により、神聖なるオーラが辺りに奔流するように拡散された。
だが、レナードはそんなロイの攻撃を嘲笑う。
「俺の【聖なる光の障壁】に、ンなモンは効かねぇ!」
「そんな……ッ、掠り傷1つ残らないだと……!?」
理解不能だった。普通に考えて飛翔剣翼が【聖なる光の障壁】を突破できないわけがない。まして、レナードは魔術師学部ではなく騎士学部に所属しているのだ。魔術が極端に苦手というわけではないだろうが、どちらかと訊かれれば、無論、剣術の方に今までの人生で比重を置いてきた。
だというのに――、
――レナードが展開した【聖なる光の障壁】には、1mmを切れ目が入っていない。
「アスカロンのスキルの効果……っ」
「ハッ、流石にバレるか」
苦虫を噛み潰したような表情をするロイ。苛立ち交じりに奥歯を軋ませた。
翻ってレナードは余裕をあらわにして再び剣を構える。
「アスカロンで斬ったモノの性能を向上させるスキル? 斬ったモノを壊れづらくしたり、再生させたり、破壊や攻撃に対するアンチテーゼのようなスキル? 違う! そんな単純なモノじゃない!」
「オラァ! とっとと次ィ往くぞ!」
レナードは【聖なる光の障壁】を解除すると、ロイが先ほど飛翔剣翼を撃つためにそうしたように、なにもない空間をアスカロンで斬る。
結果、当たり前だが空気が動いた。
しかし言わずもがな、それだけでは終わらない。
大気がうねりを上げて、轟々と渦巻きながら、風の大砲となってロイに撃ち放たれる。
「我は強さを渇望する! 腕には力を、脚には速さを! 戦争の神よ、与え給え、我に我が敵を打ち倒す精神を! 【強さを求める願い人】!」
「肉体強化で躱すつもりか!? だがッッ、甘ぇ!」
確かにロイは風の大砲の直撃は避けた。だが、どうやら風の大砲は1方向に対する攻撃ではなく、レナードの前方のほとんどに対する広範囲攻撃だったようだ。
竜の突進のような、勢いが強い突風に煽られて、ロイは暴力的なまでの衝撃を受けてしまい、胃の中の物が出そうになりながら、ステージの上を転がる。
そして、エクスカリバーを地面に突き立てて、杖の役割をさせながら、息を乱しながら立ち上がった。
「どうしたァ!? ジェレミアを倒したヤツが、この程度で終わるわけがねぇよなァ!?」
「――、言っておきますが」
「アァ?」
「ボクは転んでもタダじゃ起きないですよ?」
言うと、いったん攻防はやみ、ロイはレナードを強く睨み、レナードもロイを見下す。
「少しずつだけどわかってきましたよ、アスカロンのスキル」
「ほぉ……」
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Kまる
かっ…かっこええ…