ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章11話 路地裏で、幼女を押し倒して口付けを――(3)
「わかりきったことを――。【聖なる光の障壁】を展開したのは、重力増加を防ぐためではないのでしょう? 通常よりも広い面積の【聖なる光の障壁】を展開して、重力増加を私が使ったら、私を私自身の魔術で押し潰す算段だったのでは?」
そう、今しがたロイが展開した【聖なる光の障壁】には、ジェレミアとの戦いの時のように、従来以上の重力をシャットアウトする効果はキャストされていなかった。
要は幼女が指摘するとおり、【聖なる光の障壁】という、言ってしまえば超硬い板で、幼女を押し潰そうとしたのである。
それも失敗に終わってしまった。
しかし、タダで起きるロイではない。
「キミの『概念を我が身に降臨させる魔術』、今回は『速さ』という概念を降臨させたんだよね?」
「ええ、ええ、アナタの推測どおりです」
「だからキミは今、ボクを殺せなかった」
「――へぇ」
「例えば、馬は人間よりも速い。竜は馬よりも速い。でも、いくら高速で動いていても、障害物を無視できるというワケではない。馬は目の前にハードルがあればジャンプするし、竜も目の前に崖が見えてきたら高度を上げる。むしろ、高速で動く物体の方が、衝突時により大きい衝撃を受けるからね」
「博識ね」
「このぐらい一般常識だよ。――で、ボクをさっきの【絶滅の福音】で殺すには、いくらキミでも時間が足りなかった。ジェレミアとの戦いの時と同じように、魔術回路がオーバーヒートしてしまうから。他のアサルト魔術も同じ。キミならBランクぐらいまでのアサルト魔術を使えただろうが、それぐらいじゃ【聖なる光の障壁】を壊せない」
ちなみに魔術を無効化する魔術、【零の境地】はAランクの魔術である。
一方で、重力増加の魔術である【黒より黒い星の力】はBランクだ。
「そのとおり。2発目の魔術がどうとかではなく、1発目の【絶滅の福音】の時点で、私の魔術回路はオーバーヒートしてしまいます。この私でも【絶滅の福音】を2回連続で撃つには、まだまだ修行が必要なようです」
だが、こうは言っているが、この幼女、2回連続で【絶滅の福音】を撃てないだけで、1回だけならば【絶滅の福音】100%を撃つことが可能なのだ。
無論、仮に1度でも100%を撃てば、魔術回路はショートするが。
それをいったん置いといて、話は進む。
「対して、『概念を我が身に降臨させる魔術』は永続キャスト。恐らく、1度詠唱すれば一定の時間内なら好きにオン・オフできるのでは?」
「――正解です! それこそが――っ、この世界で、現時点で私しか使えない概念降臨の魔術【神様の真似事】!」
つまり、幼女がロイを今殺せなかったのは――、1つ、【神様の真似事】を使い速さという概念をその身に降ろしたとしても、ロイの背後に回るためには【聖なる光の障壁】が邪魔だったから。2つ、魔術回路のオーバーヒートのせいで、【聖なる光の障壁】を壊せるようなAランク以上のアサルト魔術を撃てなかったから。
だからこそ、幼女は真横に逃げるしかなかったのだ。
が――、
「でも、少し熱くなりすぎですわよ」
「――――ッ」
ロイは背後から声をかけられる。同時に、ロイの首筋には【そこに我はいない、故に咲き誇る純黒の花】の1つが当てられた。このまま首を斬られたら、当然、ロイは死ぬ。
「敵だけに集中するのは落第点。戦場全体を見渡す広い視野を持って、初めて及第点。そして、戦場以外の場所からアサシンやアーチャーが狙っている可能性も考慮して、ここでようやく平均点」
「まさか……」
「今までロイさんが戦っていたのは、私の分身ですわ」
背後から甘ったるい声で囁かれると、同じタイミングで目の前の幼女は霧散した。
嗚呼、今ロイの背後にいるのが、恐らく、本物の幼女なのである。
「ちなみに……」
「はい?」
「分身の方には本体のスペックの何%を受け継ぎさせましたか?」
「――5%」
つまり先ほどの【絶滅の福音】は、本体の5%しか強くない分身の30%だったということだ。
しかし――、
――ここでロイは慌てない。
先ほどもロイは心の中で明言した。つまり(発想力ッッ! 敵の意表を衝き、敵の万全な準備を覆す攻撃の発想! ボクに勝機があるとしたら、そこにしかない!)と。
それは本体が姿を現した今でも変わらない。
作戦は、すでに完了している。
「確かに、キミはボクよりも強い」
「うふふ、ありがとうございます」
「だが――っ、慢心しすぎだ!」
コメント
空挺隊員あきち
慢心しすぎDA☆!