ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章10話 路地裏で、幼女を押し倒して口付けを――(2)



「さて、ロイさん?」

 脈絡もなく、幼女は余裕の笑みでロイに呼びかける。
 声音は、まるで貴族のお嬢様が人の名前を呼び、語りかける時そのもの。穏やかで、淑やかで、常に気品と優雅さを忘れない。例えそれが戦闘中であろうと。

「貴方の本気、見せてくださいまし?」

「――っっ」
「先日の決闘、興味深く拝見させていただきました」

「それで……?」
「エクスカリバーの封印されたスキル、もう、お使いになれるのでしょう?」

 ロイは心臓を鷲掴みされた感覚を覚える。
 事実、ロイはエクスカリバーのスキルをもう使えるようになっていた。
 だというのに今回1回も使えていないのは、この幼女がそのたった1回の隙も与えてくれないから。

 その幼女が、わざわざ自分から、本気を見せてください、と、言う。

 つまり――、
 ――準備が整うまで待っていてあげます、という、舐めプレイ。

 ふと、ロイは心の中で呟く。――上等だ、と。
 真正面にエクスカリバーを構える。立ち位置、足を自分が一番動きやすい形にして、背筋を伸ばす。敵を視界の中心に置いて、しかし敵だけに注目はしない。視野を広く持って、限界ギリギリまで何事も見逃さない気負いで往くのだ。

 敵の魔術と自分の魔術の技量を比べたら、自分が劣るのは自明。
 敵が魔術を使い、自分が聖剣を使っても、99・9%勝てるわけがない。

 万が一、勝ちうるとしたら――、
 それは――、

(発想力ッッ! 敵の意表を衝き、敵の万全な準備を覆す攻撃の発想! ボクに勝機があるとしたら、そこにしかない!)

 聖剣が放つ純白の輝き。
 共鳴するように唸り、聖剣を中心に渦巻くような黄金の風。

 いざ――、放て。
 ロイは大きく息を吸い込むと――、



「エクス――ッッ、カリバアアアアアアアアアアアアアアアアア!」



 弩ッ、轟――ッッ! 
 戦争で使われる第1級指定・超々大魔術大砲のごとき轟音が響き、周囲の建物の壁や地面が剣圧だけで盛大に抉れる。同時、星々のように煌く聖剣の切っ先から穿たれる、人を飲み込まんばかりの極光。
 大気中の魔力の粒子は消滅し、ただ真っ直ぐ、正面から幼女を倒すために突き進む。

「あらあら、うふふ、これがエクスカリバーのスキル。情報によると、『使い手の剣に対するあらゆる想像・イメージを反映する』というもの」

 心底愉快そうに幼女は口元を緩めて、はしたなくないように、その口元を手で上品に隠す。眼前に聖なる極光が迫っているというのに、未だその顔からは余裕が表れている。
 ロイの全身全霊、全力全開の一撃を、あくまでも舐めプレイで迎撃する気だ。

「詠唱破棄! 【絶滅エクスキューション・ディス・福音エヴァンゲリオン】! 30%!」

 激突し合う聖剣の波動と破滅を司る魔術。ロイが持ちうる全ての気力と、幼女の30%の魔力が激突する。
 控えめに言って、幼女の30%は、全力の約1/3だというのに、下位の竜なら跡形も残さず屠れるレベルだった。中位の竜でも、10~15発撃てばだいたい殺せる圧倒的な攻撃力。否、破壊力や殺傷力と表現した方が適切かもしれない。

 ロイは知らない。知らなかった。
 この破滅を司る魔術、【絶滅の福音】は、魔術省の大臣ではなく、国王が自ら、あまりにも危険すぎるということで、禁術指定された神すらも冒涜する大魔術であることを。

 この魔術を撃てば、そして当たれば、理論上、神すらも殺すことが可能。
 となれば必然、ロイの聖剣の波動は負けてしまう。

「まだだアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「――――っ」

 初めてだった。この時初めて、幼女の表情かおに驚きが表れた。
 エクスカリバーで使える技の1つ、聖剣の波動。これは今のロイが使える最強の攻撃手段であった。事実、ロイ本人もそう自覚しているし、幼女の方も、それを見て、だいたい察して把握していた。

 その自身が持ちうる最強の攻撃を、あえてフェイントに使う。
 ゆえに、ロイの目的は別のところにあった。

「我は強さを渇望する! 腕には力を、脚には速さを! 戦争の神よ、与え給え、我に我が敵を打ち倒す精神を! 【強さを求める願い人クラフトズィーガー】! 加えて――、聖なる光、形を以って、顕れよ! 神のご加護を、その者に! 【聖なる光の障壁バリエラン・ハイリゲンリヒツ】!」

 そう、ロイは聖剣の波動を使い、それに幼女を注目させて、その隙に自身は幼女の真上へ跳躍する。
 以前、決闘の時、ロイは剣を振りかぶったタイミングで、ジェレミアに重力増加の魔術をキャストされた。今回も、『空中にいる』という状況を鑑みるに、重力増加の魔術をキャストされたらマズイ。

 だからこそ、最初から【聖なる光の障壁】を展開させておくのだ。
 他にもう1つ、2重の意味を込めて。

「あらあら、面白い戦い方をしますわねぇ」

 しかし、やはり幼女は『速さ』という概念をその身に宿して、誇張ではなく、本当に光と同じ速度でロイの剣を躱した。

 ようやく、戦いにひと区切りが付く。

 真上から幼女を串刺しにしようとして失敗したロイは、そのまま、エクスカリバーを地面に突き立てたまま、幼女を睨む。
 一方で、幼女は身体が昂ってきたのか、太ももをモジモジさせた。

 そしてロイは余裕綽々な幼女に対して――、

「――なぜキミは、重力増加の魔術を使って、ボクを地面に激突させなかった?」


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コメント

  • 空挺隊員あきち

    Yes!ロリータ!ノータッチ!

    0
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