ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

1章6話 ロイの隣で、満更でもなくて――(2)



「えっ!? ボク、アリスになにかしたっけ?」
「ジェレミアを懲らしめて、シィを登校できるようにしたでしょ?」
「確かにそうだけど……」

 シーリーンにはお礼を言われてもおかしくないけど、なぜアリスにまでお礼を言われるのだろう、という表情のロイ。
 翻って、アリスは可愛らしくはにかみながらロイに感謝を続けた。

「私、ロイが入学する前から、シィのことをどうにかしようと、ずっと思っていたの。って、前にも同じことを言ったわね」
「うん、覚えているよ」

「でも、私にはジェレミアに決闘を申し込む勇気もなくて、シィが嫌がっているのに、無理矢理に学院に行きましょう! って、手を引っ張ったこともあった」
「ああ……」

 ロイは少しだけ、それはマズかったかもしれない、と、心の中で突っ込んでしまう。
 そしてアリスも、今、省みれば、以前の自分の行動はダメだった、と、自覚できる。

「今にしてみれば、強引よね。もっとロイが提案した医務室登校のように、やり方を考えるべきだったわ。頭を使うべきだったわ。不登校の子に対して、初めから高い理想を押し付けるんじゃなくて、達成できる妥協点を探って、そのレベルを少しずつ上げるべきだったかも」

「正直、そうだったかもね」

「私、ロイのことを心の底から尊敬しているのよ?」

 そういうことを本人に直接伝えられるアリスのことを、ロイの方こそ立派だと感じた。
 こういうふうに他人のことを素直に褒めることは、普通ならば恥ずかしかったり、照れくさかったり、青くさかったりして躊躇ってしまう。まして、アリスはまだ学生だ。だというのにこうして素直に伝えられるのは、アリスの美徳だろう。

 アリスは、乙女色を差した頬をゆるませて、くすぐったそうに笑みを作りながら、ロイから視線を逸らさない。

「押し付けた善意は時と場合によって迷惑になる。私はシィに迷惑をかけちゃったけれど、ロイは、その……、なんていうか……、柔軟な対応って言うのかしら? 上手く融通が利くやり方で、シィを登校させてみせた」

「――――」
「シィを登校させた。ジェレミアを懲らしめた。シィをイジメから解放させた。そして、シィに自信を付けさせて、最終的には、自分の性別、自分の種族に、折り合いを付けさせた。ロイは、5つも私にできないことをやってのけたわ」

「そ、そうかな?」
「ええ、そうよ。だからね、ロイ――」

「アリス?」

 ふと、アリスは自分の花の蕾のような桜色で可憐な唇を、ロイの耳元に寄せる。
 アリスの髪からミントのような女の子の匂いがした。身体からはほのかな石鹸の香りがした。そのせいで、ロイは無意識のうちに、心臓をドキドキさせてしまう。

 そしてアリスは、年頃の女の子らしく可愛らしい声で伝える。

「私ができなかったことを、代わりにやってくれて、ありがと♪」
「~~~~っ」

 ロイの耳元から顔を、唇を離すアリス。
 耳まで顔を真っ赤にしながらロイはアリスの顔を見やるが、当のアリスはとぼけたように小さく首を傾げて微笑むだけだった。

「そ、そうだっ」
「ん? どうしたの?」

 唐突に、ロイは自分の両手を胸の前でパン、と、叩く。とにかく雰囲気を仕切り直したかったし、それと同じぐらい、動揺がバレたくなかったのである。思春期の男の子らしい見栄の張り方だった。

「アリス」
「なにかしら?」

「今日の放課後って時間、空いているかな?」
「うえ!? そ、そそそ、それって……っ」

「うん、アリスと一緒に遊びたいな、って」
「~~~~っ」

 今度はアリスが動揺する番だった。
 ロイの言葉に、アリスの心は自分でも制御できないぐらい高鳴ってしまう。顔が熱くなって、平然を取り繕うことができなくて、ロイの顔をまともに直視することができない。隣に座るただの友達の男の子に、アリスの乙女心は乱されっぱなしである。なのに、それが全然、イヤじゃない。

「ろ、ロイ……」

 自分で意識なんてしていない。だというのにアリスは、潤んだ蒼い瞳で、ロイになにかを期待するように、上目遣いで尋ねる。いつものアリスの強気な感じ、凛とした感じはどこかに消えて、不安と期待が入り混じったか弱い女の子らしい雰囲気だ。

「ま、待ち合わせは?」
「城下の街に、大きな噴水と女神の像がある広場があるよね? そこの女神の像の前で待ち合わせはどう?」

 アリスは知っていた。
 そこは恋人同士がデートする時によく使われる待ち合わせポイントであることを。
 アリスは顔をますます赤らめる。

「い、行き先とかは決まっているのかしら?」
「カフェに行ったあとで、フリーデンナハト川の夕日でも見ようかって考えていたけど」

 フリーデンナハト川は、王都・オラーケルシュタットを横断するように流れている大河である。

 ロイは前世の知識で理解していた。国や文明は、大きな川の近くにできやすいということを。ロイの前世でいう、ナイル川を起点に発展したエジプト文明然り、チグリス川とユーフラテス川を起点に発展したメソポタミア文明然り。前世で不登校だったロイでも、インターネットとスマートフォンのおかげで、普通に通学している学生と同じぐらい教養を身に付けられている。

 で、オラーケルシュタットも例外ではなく、フリーデンナハト川を起点に、都市が生まれ、階級が生まれ、文字が生まれ、国家が生まれ、そして現代まで発展してきたのだ。

(フリーデンナハト川、確かその西側って……恋人同士が夜景を見ながらイチャイチャするところじゃない! ロイは寄宿舎に住んでいて夜遅くに外出できないから、せめて夕日を楽しもうってこと!?)

 アリスはついに顔を俯かせて、ツーサイドアップの髪先を弄り始めた。
 心理学を根拠にするならば、女の子が髪先を弄る時は、退屈な時、つまらない時などだが、しかし、逆に異性にかまってほしい時や、異性に甘えたい時も、女性は髪先を弄ってしまう。

 無論、アリスの場合は――……

「それで、どうかな?」
「うん……、行くわ……」

 消え入りそうなか弱く、そしてか細い声で、アリスは返事をする。
 そしてこくん、と、小さく首を縦に振った。

 その時、休憩時間が終わったので、2人に限らず、実戦演習の講義を受けている学生は講師の元に集合することに。


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コメント

  • 空挺隊員あきち

    おお、ロイの猛烈アタックにアリスが落ちそうですね、女垂らしめぇぇぇえ

    0
  • 自称脳筋wwww

    kitchen from scratch from scratch from hell from scratch from scratch to return to go home (意味不)

    2
  • ノベルバユーザー89126

    ただの女たらし

    4
  • 小説家を褒めよう

    おや〜?

    5
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