ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

5章11話 月明かりの下で、世界一幸せな一瞬を――(2)

「シィは、シーリーン・ピュアフーリー・ラ・ヴ・ハートは、ロイくんのことが好きです」
「――――」

 ロイは声を出せない。その瞬間のシーリーンが、窓から差し込む月明かりに照らされて、どんな宝石より、どんな妖精よりも、愛おしいほど美しかったから。

 月の光を浴びてきらきらするブロンドも、
 つぶらでパッチリしている、二重で黒曜石のような大きな瞳も、
 白くて細い手の指も、滑らかな首筋も、赤らんだ頬も、

 まるで、『女の子らしさ』という概念の完成品と言っても過言ではないほど、女の子らしかった。

「あなたの優しいところが好きです。優しいだけじゃなくて、それを貫くカッコよさが好きです。人のために立ち上がって剣を握れる勇気が好きです。勇気があるだけじゃなくて、それを諦めない強さが好きです」

「――――」
「今すぐ、あなたに抱きしめてほしい。頭をなでなでしてほしい。耳元で、告白の返事を囁いてほしい。そして――こんなシィだとしても、キス、してほしいです」

「――――」
「シィは、あなたの全てが大好きです」

「――シィ」

 ふと、ロイはシーリーンを抱きしめた。
 そしてそのまま、シーリーンをベッドに押し倒すが――、

「……っ」

 一瞬、戸惑ってしまう。

 このまま、彼女の初めての秘密の夜を奪っていいのか?

 自分はこのまま彼女を愛していいのか?
 これでシーリーンは幸せになるのか?
 まだ出会って少ししか経っていないのに?

 戸惑いはもちろんある。でも、他にも、緊張もあるし、不安もあるし、動揺もある。
 要するに、迷って、迷って、それで前に進めない。

「――ロイくん」

 ロイが逡巡していると、彼の頬に、シーリーンの手が触れた。
 やわらかくて、そして温かい。まさに女の子の手という感じ。

「もしイヤなら、無理して、我慢してシィを抱かなくてもいいんだよ?」

「なっ……」

「えへへ……シィは、女の子であることを拒絶されることなんて、慣れているから」

 優しい声で、優しい微笑で、シーリーンはロイに逃げ道を用意してあげる。
 しかし、それが強がりということはバレバレだった。

(わかるだろ、ロイ?)

 ロイは自分自身に心の声で言う。
 あのシーリーンが、自分が女の子であることに懐疑的で不安を覚えているシーリーンが、男の子である自分に告白して、そして、本心では抱きしめてほしがっている。

 きっと、精一杯の勇気を振り絞ったのだろう。
 彼女の肩は小さく震えていて、不安で少しだけ泣きそうだ。

 イジメが終わっただけで、今の時点のシーリーンの自分に対する価値観が直るわけではない。
 そして、きっとこれが、直るための第一歩。

 自分はジェレミアを倒して、そして彼を否定したんだ。
 そんな自分が、シーリーンの『女の子であること』を受け入れなくてどうする。

 あるイジメっ子は、シーリーンのことを、将来の娼婦と言った。
 またあるイジメっ子は、シーリーンの性に関することをからかった。
 また別のイジメっ子は、シーリーンを汚いとバカにした。

(そんなこと、あるわけないじゃないか!)

 男の子にしろ、女の子にしろ、自分の性を否定されるなんて許されないことだ。
 自分の性をバカにされるなんて、残酷なことだ。

 そして――、
 シーリーンが、自分のことを好きだと言ってくれた女の子が、ここまで頑張っているのだ。ここで優しく抱きしめてあげないでどうする。

 だから――、
 ゆえに――、
 ついに――、

「ボクも、シィが好きだ。ずっと、ずっと、キミを守りたい」

「~~~~っ」
「シィ、目を瞑って」

「はい、――、――、――んっ」
「――――」

 2人の唇が重なる。

 出会ってまだ少ししか経っていない?
 そんなこと、知ったことではない。重要なのは、今と、そして本人の気持ちだ。

 ロイはシーリーンを守りたかったのである。
 ならば、守ったあと、その先の責任も取るべきだろう。

 それで、数秒後、お互いに唇を離すと、シーリーンが「ふはぁ」と息継ぎをした。

「ねぇ、ロイくん?」

「ん?」
「その……えっ、と、初めての女の子は、嫌い?」

「嫌いな男の子なんていないよ」
「――よかった」

 シーリーンは安堵すると、ロイの首に腕を回して、彼の身体を引き寄せる。

「シィのスキル、以前話したよね?」

「うん」
「フーリーに伝わるスキル〈永遠のエーヴィヒカイト・処女ユングフラオ〉。それは、神話の時代からなに1つ変わっていないんだよ?」

「と、いうと――」
「ふふ、〈永遠の処女〉の効果は3つ。創造主よって完璧な女性として作られたと伝えられているフーリーは、汗やツバ、排泄物ですらも、一切の穢れがない清らかなモノになっている」

 確かに、ロイはシーリーンにキスした時、彼女の唇に付いているツバに触れたが、甘かった気がする。そう、ロイはまだ知らないが、女の子の肌もしょせんは人間の身体。どんなに幻想を抱いていても、味なんて普通、するわけがない。しかし、シーリーンの身体、そして汗やツバは、この世のモノとは思えないほど、蕩けるぐらい甘い。

「そして、相手の男の子の精力強化。1晩で100人と交われるぐらい、男の子の精力を強化、増加するの」

「最後は?」
「最後のこれが、フーリー特有のスキルを永遠の処女なんて言わせる所以ゆえん

「それって――」
「フーリーは、朝日が昇るのと同時に、処女膜が再生するんだよ♡」

 そしてシーリーンは――、
 ロイの耳元でこう囁く――、

「ロイくん、毎日シィの初めてを奪ってね?」

 この日の夜。
 初めてシーリーンは、自分が女の子であることを心の底から大切にできて、自分の種族のことも、心の中で折り合いが付けられた。

 ロイとシーリーン。2人で秘めたお互いの肌。
 その光景を月と星だけが見守っていた。


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コメント

  • 空挺隊員あきち

    ここの濡れ場シーンだけコメント10件あって草www、でも良いね、パワーワード、毎日私の初めてを奪ってね?
    は来るねー、グッとくるねー

    2
  • cardinal

    今まで読んだ作品の中でも
    最高に面白いです!

    永遠の処女...
    貴方様がこの地に降臨なされた神か...

    7
  • ドラゴン2

    毎日血が出るのは大変そうだし、かわいそう...
    ただ、夢は見るものであるな

    8
  • 颯爽

    ……………………………………………………一言。
    尊い。

    6
  • s×9

    でも、毎回痛い目合うんだよね…
    それ考えると…

    9
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