ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

5章8話 決闘で、幻影のウィザードに――(3)


 そして、いつの間にかロイは拷問部屋にいた。
 これから、ジェレミアの幻覚が始まる。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 まず、最初の6時間は生きたまま身体に火を点けられた。
 無論、死ぬことは許されない。

 眼球の水分が蒸発して、パンッ、という軽快な音と共に破裂。
 皮膚は熔けて、原形をとどめられないぐらいドロドロの半液体状になって、入浴時、身体から泡を洗うように流れていく。
 肉と内臓はこんがり焼けて、ふと、ロイはいつも食べている動物の肉を思い出して吐き気を催してしまう。

 そして――、
 どんなに外側を燃やし尽くしても、身体の奥から新品の肉や臓器などの身体が、外側に押し出るように、奔出するように製造されるので、最終的に身体の全てが灰になることは許されない。
 身体が化け物のような形状になっても、ロイは五感の全てを弄られた世界で生きることを強制される。

「~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!!」

 次の6時間は空中の十字架に身体を磔にされて、硫酸が入ったカマに足の爪先から浸かっていった。

 6時間という長い時間をかけて、爪先が溶ける。足が溶ける。太ももが溶ける。性器が溶ける。大腸と小腸が溶ける。腹の表面が溶ける。胃が溶ける。肝臓が溶ける。胸部の表面が溶ける。肺が溶ける。そして、心臓が溶ける。

 だが心臓が溶かされても、ロイは死ぬことを許されなかった。

 その後も、肩が溶け、腕が溶け、首が溶け、顎が溶け、口に辿り着いた時点で、今さらかもしれないが口から硫酸が流れ込む。
 瞬間、首から下なんてとうの昔に溶かされているのに、硫酸が喉を通り、身体の内側を溶かすような感覚がした。まるで身体の内側の表面を、灼熱の炎魔術であぶっているようである。

 その間も口から上、頬、鼻、耳、眼球、額の順番で溶かされて、最終的に身体の全てを溶かされてしまう。

 本気でロイが(あっ……死んだ)と思った瞬間、五感は別の痛みを覚える。
 次の拷問が始まった。術にかかっているロイは知る由がないが、次の6時間が始まったわけだ。

「あああああああっっ…………、ああああああああああああッッ…………」

 次は生きたまま氷漬けにされる。

 ジェレミアの幻影魔術は実に器用なモノで、まず、ロイは身体ではなく、血管を流れる血液だけを凍らされた。脳が詰まる感覚なんて初めて知った。心臓は動いているのに血液が前に進まない感覚の違和感が凄まじすぎて、違和感で発狂しそうになる。

 例えば、人間は氷に触れれば『温かさ』を感じるわけがないが、『なにもかも』を感じないわけではない。この場合、『冷たさ』を感じるわけである。
 ゆえに、ロイは血液を全て凍らされても、なにもかもを感じなくなったわけではない。精神が崩壊しそうなぐらいの絶対的な冷気を感じた。

 その後は、四肢と胴体、次に内臓、首から上は最後まで取っておかれた。
 身体が1mmも動かせない。

 しかし無理に動かそうとしたその時――、
 ――そのせいで氷の彫像となったロイの身体は粉々になってしまう。

「――――ッッッッ――ゥゥアアアアアアアア……ッッ、――――ッッッッ!」

 ふいに、ロイがいた空間に、シーリーンとアリスとイヴとマリアが忽然と現れた。
 みんな一様に、桜色の唇から興奮した獣のように、年頃の女の子にあるまじき下品な涎を垂らす。

 そして4人は、なぜか動けないロイの肉体を食べ始めた。

 肉を焼くなんて真似はしない。
 美少女4人は、ハイエナのように、ロイの血抜きされていないがゆえに充血された真っ赤な生肉を食べる。

 だがそれでも、ロイは死ぬことを許されない。

 …………。
 ……、…………。

「ダメですねぇ、アレでは」

 VIP席で1人の幼女、アリシアが呟く。
 それにエルヴィスは返事した。

「ロイの方か?」
「いえいえ、ウィザードの方ですわ」

 心底つまらなそうにアリシアはコロシアムの中央、ステージで決闘中のジェレミアを睥睨へいげいする。

「魔術には、属性、系統に拘わらず、完成度というモノがあります」

 魔術の属性とは――無属性、炎、水、風、雷、土、光、闇、時、空の10つである。
 一方で系統とは――無属性魔術なら、その細分として性や、音や、色や、食(魔術で料理を美味しくする)や、清(魔術で特定の物を清潔にする)などがあり、これを系統と呼ぶ。

 そしてアリシアの言うところの完成度いうのが――、

「剣術にも存在しますわよね、完成度って」

「無論だ」 と、エルヴィス。

「あのウィザードの幻影魔術は、言ってしまえばレベル1ですわ。レベル1で全戦全勝できるだけであって、レベル1には変わりない。まるでレベルが上がっていません」

 言うと、アリシアはコロシアムの最前列で泣きながら必死に声援を送っている女の子4人組に目を向けた。
 それに気付いたエルヴィスが、アリシアに説明する。

「ロイの女友達のようだな。ブロンドの女の子が、今回の男同士の決闘の発端らしい」
「――、そういう言い方をすると誤解を招きますわよ?」

 …………。
 ……、…………。

「ロイくん! ロイくん! ――っ、ロイくん、起きて! 目を覚まして!」
「ロイ! あなた、絶対に負けないって言ったじゃない! しっかりしなさいよ!」

「お兄ちゃん! 死んじゃヤダよぉ……っ!」
「しっかりしてください、弟くん!」

 4人の女の子の視線の先、そこでロイは、エクスカリバーをステージの床に落としたまま、死体のように突っ伏していた。

 決闘に相応しい激しい剣戟もなければ、芸術のような魔術も撃ち合いも飛び交っていない。
 ただ、死体のようなロイから少し離れたところに、ジェレミアが立っているだけ。

 しかし――、

「…………っぅ」

 なぜか、圧倒的な優位に立っているジェレミアの額に、わずかに脂汗が浮き始めた。

 おかしい。なにかがおかしい。
 術者であるジェレミアにはわかるのだ。

 幻影魔術は予め、6時間ごとの別種の苦痛を4つ用意していて、それを1セット、合計で24時間、つまり1日としている。そして4つ目の苦痛が終われば、1つ目の苦痛に戻るようにも予め術式を組んでいる。

 そして幻影魔術の中での1日は、現実世界でいうところの1秒。
 なのに――、


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コメント

  • 空挺隊員あきち

    おおっと?ロイのターンktkr

    0
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