ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

5章4話 控え室で、相談を――(2)



「さらに次、幻影魔術の発動条件は?」
「ジェレミアが五感で感知できる領域の全てよ。決闘の開始直後はお互いに向き合っているから、回避するのは本当に難しい。詠唱破棄が不可能っていっても、ほぼ100%捕まってしまうわ」

「続き、仮に幻影魔術にハマったとして、脱出する方法は?」
「ないわ。あるとするなら、ジェレミア本人が魔術を中断する時ぐらいね」

「回避できないし、脱出もできない。二重の意味で逃げられないんだね」
「そうね……、私でも、絶対に逃げられないわ」

「さらに続き、幻影魔術は直接身体にダメージを与える魔術じゃなくて、痛みはあくまでも幻で、術をキャストされた本人がどう感じているからともかく、周りから見たら傷は負わないんだよね?」
「ええ、術をキャストされた本人にとって、幻影魔術の痛みは本物。いくら幻ってわかっていても、我慢することなんてできないわ」

「つまり?」
「幻影魔術は生き物の脳みそに直接作用する魔術なのよ。身体にはなにも触らず、脳に直接、五感でなにかを感受したって結果を刻む」

(そういえば、前世の科学にも似たようなモノがあったよね。目を閉じている人間の脳に電極を貼り付けて、なにも見えていないはずなのに適当な景色を見せるってヤツ)

 ロイは前世のインターネットで得た知識を思い出す。
 恐らく幻影魔術は、アレの科学ではなく魔術バージョンなのだろう。

「まぁ、それは置いといて問題ないんだけど、身体に異変が起きないなら、どうやってジェレミアと審判は、ジェレミアの勝利を判断するの?」
「ジェレミアは幻覚で相手の心を壊す、精神を狂わせるだけよ。すると、ジェレミアが魔術に仕込んだ術のコードによって、心を壊された相手は自ら敗北宣言、ギブアップして、それを条件に魔術が解かれる。まぁ、魔術が解かれるのと、正気に戻れるのは、必ずしも同義じゃないけれど」

「ギブアップを条件に魔術を解除してあげる、か」
「言っておくけど、だったらギブアップしなければいいじゃん! なんて作戦はジェレミアに通用しないわ。五感を全て弄られて、ギブアップしなければ、それが体感時間とはいえ永遠に続くんだから、耐えられるわけがない」

「さっき言っていたもんね。幻影魔術にハマったら、ジェレミアが中断しない限り、脱出できない、って」
「ええ、そのとおりよ」

 だが、実のところ、アリスの言っていることには、何ヶ所か間違えているところがあった。しかし、ロイは、あえてそれに言及しない。自分とジェレミアが実際に戦えば、その答えは必然的にアリスに届く。ここで教えるか、あとで教えるかの違いだから。

「さて、昨日の夜、イヴにヒーリングをかけてもらったから体調は万全!」
「ロイ――」

「あまり積極的に使う気はないけど、魔力だって溜まっているし、異常なし。エクスカリバーだって、いつでも顕現できる。それにやる気だって充分!」
「――本当にやるのね?」

 ふと、アリスは心配そうな表情をして、同じく心配そうな視線をロイに向ける。
 アリスだってわかっている。この時点で「やっぱりやりません」と言っても、後戻りできないことぐらい。誰も許してくれないことぐらい。

 でも、だとしても、不安なモノは不安なのだ。
 人の心も、エルフの心も、頭にとって都合がいいようにできていない。

「アリス、ボクは戦うよ」
「――――っ」

「ボクは逃げたくないんじゃない。シィとの約束を破りたくないだけなんだ」
「――わかっているわ」

 言うと、アリスは自分の片手を握って、拳にして、ロイに突き出す。
 その意味を察すると、ロイも自分の片手を握って、拳にして、アリスが突き出した拳に、こつん、と、ぶつけた。

「ロイ、やるからには絶対に勝ちなさいよね?」
「そういうアリスこそ、祝勝会の準備をよろしくね?」

 言うと、2人揃ってはにかんだ。

「さて、そろそろ時間だね」

「私もそろそろ観客席に戻るわ。ねぇ、ロイ」
「ぅん?」

「いってらっしゃい」
「うん、いってきます」



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コメント

  • 空挺隊員あきち

    ねぇ、ロイ?
    ぅん?
    いってらっしゃい
    行ってきます
    夫婦かな?

    1
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