ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
4章5話 シーリーンの自室で、特別講義を――(1)
シーリーン、イヴ、マリアの3人という、それぞれ属性が違う美少女に囲まれながら、ロイは遅くならないうちに寄宿舎に戻ってきていた。
寄宿舎に戻ると、イヴは友達となった同級生の女の子と庭でテニスの真似事をし始めて、マリアは自室で趣味の1つであるお裁縫に熱中し始めた。
そしてロイは、今、シーリーンの自室に招かれている。
(そういえば、この世界のこの時代にもテニスはあるんだね。まぁ、ボクの前世でも、テニスの原型は中世の時点ですでにあったし、この世界のこの時代に存在していても、おかしくないけど)
と、ロイは椅子に座りながら、ボンヤリと思った。
窓から外を見ると、西の彼方に夕日が半分沈んでいて、暗くなった部屋を明るくするために、壁面に設置されたガス灯が、仄かに、淡いオレンジ色に揺れる。換気は1時間に1回と言われていた。
やはり、シーリーンの部屋はいい匂いがする。ミルクのような匂いというか、バニラのような匂いというか、とにかく甘くて甘くて胸が切なくなるような女の子の香りである。
「ロイくん、ここ、教えてくれる?」
「王国の歴史の問題か……。教科書の56ページのどこかに載っているよ?」
ロイは椅子に座っていたが、その隣で、同じくシーリーンも椅子に座っていた。そして机に向かって教科書とノートを広げている。
不登校でも、いつか講義に出席した時に困らないように、ロイにその日学院で行われた講義の内容を教えてもらっているのだ。
2人並んで椅子に座る姿は、人によっては恋人同士のように映るかもしれない。
「むぅ……直接答えを教えてくれてもいいのにぃ……」
「それじゃあシィが自分で解いたことにならないでしょ?」
「ロイくん、先生みたい……」
一瞬だけシーリーンは頬を子供っぽく膨らませるも、すぐに楽しくなって笑顔になる。
表情がコロコロ変わる、一緒にいて楽しい女の子というのは、今のシーリーンみたいな女の子のことだろう。ロイとしては学院の中では無理でも、今、寄宿舎の中でだけでもこうして笑ってくれるならば、なにも言うことがないぐらい満足だった。
「そういえば、ロイくんって頭いいんだよね? すごいなぁ、憧れちゃう」
「ボクの場合、剣術の稽古をすることも、魔術の訓練もすることも、普通の勉強をすることも、みんなみんな、苦に感じないんだよ。むしろ楽しくて楽しくてしょうがない感じだね」
「あっ、シィ、知っているよ? 〈零から始める無限の修練〉ってゴスペルだよね?」
「うん、そうそう」
「ゴスペルホルダーって、カッコイイなぁ、みんなが憧れるのも、よくわかる」
「ゴスペルを持って生まれたのは、完全に運のおかげだからね。だからそれに見合うように、きちんとした人として誇らしい性格にならないと、とは、常々気を付けているよ」
「ロイくんは立派だね。それに比べてシィのスキルなんて、そのぉ……、ぅ、なんていうか……、口にするのが恥ずかしいんだけど……、〈永遠の処女〉なんてネーミングなんだよ?」
「ゲホっっ!?」
別になにかを飲んでいたわけでもないのに、ロイは思わず咳込んでしまう。
一応、思春期の男の子として、流石のロイもそのスキルの内容を知りたかったが、なんとか理性を総動員して、スルーすることに成功する。
ちなみに、この世界では、ゴスペルはスキルの上位互換と言われていたりする。ゴスペルは保持者だって珍しいし、能力の内容の方も珍しい。一方でスキルは、主に種族によって受け継がれていて、例えばフーリーの場合、〈永遠の処女〉を受け継いでいない個体の方が珍しかった。
「やっぱり、そのスキル……」
「うん、イジメの対象だね……。男の子からはからかわれるし……、女の子からは気持ち悪がられるし……」
悲しそうに、シーリーンは目を伏せた。自分の身体的な特徴、それも、思春期の女の子なのに性に関することを弄られるのは、シーリーンでなくても普通イヤだ。
「ねぇ、シィ」
「ん? なぁに?」
「シィは、自分で自分のスキルを、どう思っている?」
「――フーリーという種族としては、神話の時代から受け継がれている、自分たちの一存で途切れさせてはならない、大切なモノだって思っているよ? でも……」
「でも?」
「なんで性に関するスキルなのかなぁ、って。エルフが魔術の適性に長けているように、ドワーフが手先の器用さで誰にも負けないように、創造主さま! もっとまともなスキルはなかったのですか~っ! って。そうすれば、自分はコンプレックスに感じることもないし、逆に友達みんなに自慢できたのに……」
「そうだよね。でもね、シィ」
「――、なぁに?」
「シィが自分で自分のことをコンプレックスに感じるということは、誰かがキミをイジメていい言い訳にならないんだよ?」
「ほえ?」
「もっと突き詰めて言うなら、イジメの原因があることが、イジメていい理由にはならないんだ」
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