ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章8話 喫茶店で、放課後デートを――(2)



「アリスさんはそういうのがないから安心だよ~」
「そうですよね~」

 本当に安心しているような表情で、イヴとマリアはロイとアリスを交互に見やった。

「ロイとは友達だもの。信頼を裏切るようなことはしないわ」
「もしかしたら今後、恋人同士になる可能性は否定できないけど、少なくともボクは、今の関係を気に入っているんだよ」

「ん?」
「ん?」
「ん?」

「あれ? 今、ボク変なこと言ったかな?」

「お兄ちゃん! アリスさんと恋人になるかもしれないの!?」
「か、可能性の話だよ!?」

「それでも! 可能性だけでもあるってことですよね!?」
「姉さん、落ち着いて!」

「わ、わわ、私、と、……、ろろ、ロイが? こここ、恋人?」
「アリスも戻ってきて! お付き合いする可能性もあれば、当然、ずっと友達って可能性もあるから!」

 今にも泣きそうなイヴに、動揺しまくりのマリア、そして先ほどの数十倍は赤面しているアリス。
 3人をロイだけで宥めるには、多少、長い時間を要した。

「コホン、そもそもこの王国、グーテランドは一夫多妻制を認めているのよ? 多数の女の子から告白されたのなら、同時に付き合うわけにはいかないのかしら?」

 アリスが咳払いをして仕切り直すも、いささか微妙な仕切り直し方だった。

「意外だね。アリスは1対1でお付き合う方に賛成だと思っていたよ」
「大事なのは相手に対する愛情と、なによりも真剣さでしょ? 本当に真剣なら何人とでも愛情を深めればいいと思うし、逆に微塵も真剣じゃないなら、たとえ1人でもたぶらかしちゃダメよ」

「で、弟くん?」
「実際はどうなのよ?」

「そうだねぇ……、アリスはお付き合いに『真剣さ』が必要って言うけど、ボクは『誠実さ』が必要だと思う」

「「「うんうん」」」 と、3人の頷きが重なる。

「でもそれ以上に、ボクは誰かと付き合いたいんだ! っていう恋愛感情がないと、恋愛って成立しないよね? お恥ずかしいことに、ボク、初恋がまだなんだよ」

 愛想笑いを浮かべるロイ。

「でも――そうだね、仮にボクが複数人の女の子を好きになったら、全員を幸せにしてあげたいかなぁ」

 と、一先ずロイはここで締めくくった。

 ロイの言う、全員を幸せにしてあげたい、とは、一夫多妻制を認めるということで、少なくとも、ロイはそういう意味で発言した。
 なぜなら、ハーレムに憧れるとか、そういう話ではなく、誰か1人でも恋が報われない女の子がいたら悲しいし、寂しい。ロイは本気でそう考えているから。

「ところでお兄ちゃん、妹と結婚するのはどうなのよ?」
「!?!?」

 イヴが可愛らしく小首を傾げてとんでもないことを訊いてきた。

「ちなみにお姉ちゃんと結婚する場合も答えてね?」

 さらにマリアも乗っかってくる。

 無論、ロイの前世の日本では、家族同士で結婚するのを法律で禁止している。

(――けど、この国って、そもそも王様からして、王家の血筋を他家の血筋で薄めないように血縁者同士で結婚しているし、科学が進歩していないから、血が近い人同士で子供を作ると、子供に悪影響ってことも証明されていないんだよね)

 よって、グーテランドでは本人たちの同意があれば、妹とでも姉とでも、結婚し、子供を作ることが可能だった。

 言わずもがな、ロイの前世で近親相姦はドン引きの対象であったが、この世界ではそのようなことはなく、むしろ一部の貴族の間では推奨までされている。この王国の民の全員に、近親相姦=インモラルという発想はない。

「い、イヴと姉さんはどうなの?」
「わたしはいいよ? もしお兄ちゃんが許してくれるなら、幸せな家庭を作りたいよ」
「わたしもですね。弟くんに対する感情は恋愛とは違うんだろうけど、生まれてこの方、弟くんよりもすごい男の子、いい男の子と会ったことないから、責任を取ってもらわないといけませんね」

 マリアの言うことにも一理ある。
 ロイはゴスペルホルダーで、聖剣使いなのだ。このまま、今後の人生で一切なにもしなくても、王国全土の教育機関の教科書で名前が載ることが確定している。

 そのような偉人が身内にいるのだから、マリアの異性に対するハードルが超絶高いのも仕方のない話だった。

「じゃ、じゃあ、考えておくね?」
「は~い!」「うん、ありがとっ」

 余談だが、グーテランドの女性の平均出産年齢は、王都周辺と地方では多少差があるが、25歳前後だった。10代で結婚している男女も少なくない。

 ロイが覚えていた前世の情報曰く、近親相姦でできた子供よりも高齢出産でできた子供の方が、言い方を非常に慎重に選ぶ必要があるが、悪い影響が出る可能性が高い。社会的にどうとか、倫理的道徳的にどうとか、そういう強い批判もわかるが、数字上の事実としてそうなのである。
 ゆえに、グーテランドでは、近親相姦でできた子供でも普通に暮らしている子供が多かった。

「そういえば、アリスって兄弟や姉妹はいるの?」
「姉が1人いるわ」

 と、ここでアリスが立ち上がる。

「ちょっと長居しすぎたわね。あまり席に座っていてもダメでしょうし、そろそろ出ましょうか」
「うん」「は~い」「そうですね」

 苦笑交じり言うアリスに、3人は賛成して、同じく立ち上がった。

「あれ? そういえばロイは第2寄宿舎に住んでいたのよね?」
「え? うん」

「と、いうことは、シーリーンさんと同じ寄宿舎じゃない!」
「そうなの!?」


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