ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

3章5話 実戦演習で、女の子たちから歓声を――(2)



「 顕現せよ、エクスカリバー 」

 ロイが唱えると、王に勅令を出されて、颯爽と馳せ参じる騎士のごとく、彼の右手には、聖剣・エクスカリバーが握られていた。
 神々しく、暴力的なのに聖なるオーラを感じて、圧倒的で絶対的なのに、その外見は芸術的で、まさに聖剣と呼ぶに相応しい一振りである。

 エクスカリバーがロイの右手に顕現したのと同時。

「「「「「きゃああああああああああああああああ~~っっ!!! ロイく~ん、カッコイイいいいいいいいいいいいいいいいいい~~っっ♡♡♡」」」」」

 女の子たちが惚けたような、ロイという男子を目の前にして自分は女の子なんだ、と、心底自覚したような乙女の顔で、ラブラブな声援を送る。
 ロイに送る視線は熱っぽく、瞳は潤んでいて、色白の頬には赤みが差し、表情はもはやロイのせいでトロトロになっているではないか。

「じゃあ、行こうか、アリス」
「ええ、そうね。私もロイに負けていられないわ」

「わかっていると思うけど、ボクが前衛で――」
「――魔術師である私が後衛、でしょ?」

 アリスはロイに応えるように、にっ、とはにかんだ。
 ロイはエクスカリバーを、アリスは自分の右手を、眼前のゴーレムにかざす。

 そして講師が宣言した。

「模擬戦、開始ッッ!」

 疾ッッ! 模擬戦開始の宣言と同時、ロイはゴーレムに突撃する。速い、速い、速い。生身の人間の限界に挑戦するかのように、ロイは全力で突っ走る。

 5秒、否、3秒もかからずロイはゴーレムに接近完了した。

 ロイの聖剣、そしてゴーレムの土塊を圧縮して固めた剛腕。両者共に、互いを互いに、攻撃の間合いに入れている。だが、ゴーレムはロイより腕力があっても、関節の可動域が狭く、小回りが利かない。

 ゆえに――、
「最初の一撃さえかわせばッッ、懐に入れる!」

 轟、ッッッ、ッ! と、ゴーレムはおのが剛腕を振り上げた。ロイの眼前に広がるのは黄土色の一色だけ。回避するタイミングなど、とうの数瞬前に過ぎ去っている。今さら回避など不能。

 剣でガードする? 否、力負けしてしまう。
 無理矢理、強引に回避行動に移る? 否、どう考えても不可能だ。

 だからこそロイは叫ぶ。

「アリス!」
「聖なる光、形を以って、顕れよ! 神のご加護を、その者に! 【聖なる光の障壁バリエラン・ハイリゲンリヒツ】!」

 ロイの顔面にゴーレムの四角っぽいゴツゴツしい拳が当たりそうになる。その数瞬前、ロイの前に純白色に光る硝子ガラスのような障壁が出現する。言わずもがな、アリスの魔術だ。

 その1000分の1秒にも満たない間隙をロイは見逃さない。流水のような動きで、ロイはゴーレムの懐に潜り込む。

「ッッ、ダッ、ア、ッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 振るわれる聖剣・エクスカリバー。風を斬る音を鳴らして力強く一直線にゴーレムの身体に斬撃を撃ち込む。その衝撃で大気は軋み、空間に浮遊するマナは吹き荒ぶ。

 だが――、ゴーレムの身体に切れ目を入れることができても、切断とまでにはいかなかった。

 そして最悪なことに――、

「エクスカリバーが抜けない!?」

 と、ここで模擬戦を遠くから見守っていた講師が、ロイとアリスにアドバイスを送る。

「ゴーレムは確かに粘土でできている。しかし! 今の段階では、その身体は岩石そのもののような硬さを誇っているぞ。聖剣とはいえ、剣で一刀両断するのは難しいからな!」

 講師の発言に、2人の戦いを見守っていた生徒からも残念そうな声が漏れる。

 しかしロイは焦らない。戦いとは常に、氷のような思考を以って、炎のように苛烈な策で挑まなければならない。考えろ、考えろ、考えろ。

 一度止まってしまった斬撃に再び力を入れても、切断できるわけがない。そして岩のように硬いゴーレムの身体に中途半端に切れ目を入れている剣はなかなか抜けない。押しても無駄。引いても無駄。
 早々に次の一手を決めないと、ゴーレムからの反撃がやってくる。しかしエクスカリバーを手放すのは論外だ。ロイの攻撃の手段がなくなってしまう。

 ならば、ロイが取れる次の一手は1つしかない。

「アリス! 肉体強化と体重増加の魔術をボクに!」
「体重増加!? 重力操作じゃダメなの!?」

「それでいい! 早く!」
「わ、わかったわ! 詠唱破棄! 【強さを求める願い人クラフトズィーガー】! 【黒よりシュヴァルツ・アルス・黒いシュヴァルツ・星の力ステーンステーク】!」

 詠唱破棄はアリス、つまりエルフのように魔術適性が高くないと、なかなか容易くできるようなモノではない。長所は詠唱を唱えなくていい分、発動まで時間がいらないこと。短所は詠唱を唱えない代償として、魔術の効果が多少減ること。

【強さを求める願い人】によって肉体強化。
【黒より黒い星の力】によって、自身とその周辺にかかる重力を増加。

 そしてロイは、一瞬だけエクスカリバーから手を離すと、エクスカリバーの特性を思い出す。

 エクスカリバーは絶対に折れない。
 エクスカリバーは刃が幅広の剣で、横向きにすれば人が乗ることも可能。

 即ち――、ロイは肉体強化したその身体で、その場で跳躍。

「アリス! ボクはもう落ちるだけだ! 重力をもっと強くしてくれ!」
「了解! そういうことね!」

 グン……ッッ! と、ロイの身体に重力の負荷がかかる。まさに星の中心から発生する引き寄せるチカラとして偽りなし。

 そしてロイは――、
「いっけええええええええええええええええ!」

 重力が増加された状況で、ゴーレムの身体から抜けないままのエクスカリバーの柄に、隕石のように勢いよく乗っかった。

 刹那、崩壊の轟音。
 一部分ではあるが、ゴーレムの身体が砕けたのである。

 ロイは自身を力点、エクスカリバーが抜けないままのゴーレムの身体を作用点として、梃子てこの原理を利用し、エクスカリバーを境目に、ゴーレムの身体を上半身と下半身とで分離するようにぶっ壊した。

「ロイ! ゴーレムは中途半端にしか壊れていない!」

 そう、アリスの言うとおり、ゴーレムは人間の身体でいう左の脇腹を破壊されただけで、右の脇腹の方で繋がっていた。

 しかし、ロイはそれすらも見越している。
 戦場と化したグラウンドに、ピシ……、と、なにかがひび割れる音がしたではないか。

 刹那、重低音を響かせて、今度こそ本当に、ゴーレムの上半身は傾き、上半身と下半身が離れ離れになった。

「そうか、自重で……っ、ゴーレムは人間よりも重いから……っ!」
「これで物理的には、ゴーレムの額の羊皮紙は手の届きやすい高さに!」

 再びロイは疾走する。標的は数m先で上半身だけもがいているゴーレム。

 走りながら聖剣を構えるロイ。一方でロイを援護するために、いつでも魔術を撃てる状態で待機するアリス。

 ロイが迫り、アリスが後方で待機する状況で、ゴーレムは、腕だけで移動を開始する。

「 GAA , GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!! 」



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コメント

  • ONロック

    思った以上にゴーレム強かったです。
    聖剣の能力
     収納機能
     絶対に折れない

    強いんですけどね。
    もっとカッコいい能力があっても良かったと思います。それともこれから出てくるのかな?

    0
  • 空挺隊員あきち

    ゴーレムワンパンするかと思った

    1
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