現代地獄
一丁目の前兆
もう随分と歩いている。
もう1時間くらいは、歩いているだろう。
一体どこへ行くのだろう。
彼は学校の門を抜けてすぐ右へ曲がり、それからひたすらに歩いている。
家の方向とは全く違う。
彼の家は、僕の近くだからよく知っている。
何か忘れたのであればこの道では無い。
じゃあもしかすると彼の親に何かあったのか?
だとしたら嫌だな。
小さい頃から遊んでいる分彼の親も知っている。
彼は、母子家庭でお母さんだけだがとても優しくて、彼もとても感謝していると前に言っていた。
彼のお母さんは、朝からずっと仕事をしているらしく家にはたまにしかいない。
だけど、遊びに行くとたまにいて働き詰めで疲れているはずなのに僕たちをいろんな場所に連れて行ってくれた。
とても優しい人だ。
「…」
多分違う。
彼の親に何かあったのなら多分教師から連絡が来て彼は急いで病院へ向かうか、もしくは教師も一緒に車で病院へ向かうだろう。
でも彼は一切そんな素振りは見せない。
ショックでああなっているのならそれこそ教師が一緒に行くはずだ。
でもそうじゃ無い。
多分、そういうものじゃ無い。
いじめ?
わざわざこんなに遠くまで呼び出すか?
多分違う。
うちの学校を自慢するわけじゃ無いがそう言う噂は聞いたことがない。
それにもし仮にイジメがあったとしたら多分学校でやるだろうしそういう事する奴らが朝からわざわざこんな遠くに来るはずもない。
それとも別の学校の奴とかチンピラとかか?
それならあるかもしれない。
だとしたら止めた方がいいかもしれない。
言われるがままに行ったらそれこそ相手の思う壺だ。
脅迫されているのなら警察に相談するという手もある。
よし。彼に話しかけよう。
僕は、自分が考えた結果から勝手に納得して彼に話しかけようとしたその時だった。
彼は急にその場に止まり空を見上げ始めた。
とっさに僕は近くにあった電信柱に何故か隠れてしまった。
別に悪い事考えているわけでもないのに。
僕のいる所の少し離れた場所に立っている彼の事を僕は何故かとっさに隠れてしまった電信柱から出て確認した。
「… … …」
僕は彼を見て不安になった。
彼の口元が動いている。
彼は空見上げて何かを言っているようだった。
彼の顔はすごくやつれたように見えて今にも消えてしまいそうな、そんな風に僕には見えた。
僕は見ているうちにいつの間にか歩き始めて彼の方に向かっていた。
「………ちょう……。」
「つぎは…………め。」
「そして…さん……。」
「そして最後は四丁目。」
近くに行くに連れてだんだんと声がはっきりと聞こえてきた。
そして彼のすぐ近くまで来るとそれははっきりと聞こえた。
「最初は地獄の一丁目。」
「つぎは孤独の二丁目。」
「それから絶望三丁目。」
「そして最後は四丁目。」
彼が言っていた事は何のことかわからないけれど何故かそれがとても不気味でそしてすごく怖く感じた。
そのせいか頭が回らなくなりよくわからないまま少し強気な声で彼に話しかけた。
「こんな所まで来て何言ってんだよ。早く学校戻るぞ。じゃないと今頃先生たち怒ってるぞ。早く戻ろう?な?」
だが彼からの返事は無かった。
そしてまた彼はさっきの言葉を繰り返す。
「最初は地獄の一丁目。」
「つぎは孤独の二丁目。」
「それから絶望三丁目。」
「そして最後は四丁目。」
「おい!ふざけるなよ!早く戻るぞ!お前なんか変だぞ!」
凄く怖くなった。
彼は僕の事なんか全く気にせず、ずっと同じ言葉を繰り返していた。
「いいからもう行くぞ!」
怖くなった僕は彼の手首を強く握り強引に引っ張りながら連れて帰ることにした。
グチャッ
急に後ろから大きな鈍い音がした。
その瞬間急に握っていた彼の腕が重くなり体制を崩しそうになった僕は思わず彼の腕を離してしまった。
凄く嫌な予感がした。
僕はゆっくり後ろを振り返ると彼の胸に大きな鉄骨が刺さっていた。
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