モテない俺にある日突然モテ期が来たら
転校してきた理由
「なんで?約束したじゃない!」
少女の声が公園に響く。
ブランコの手すりの感触が、そろそろ桜も咲こうかと言う3月の終わりにも関わらず、俺の手を冷やしていた。
少女はいつだって前向きで明るくて、俺を元気付けてくれるのに…今日だけは涙を溜めた目で俺を睨むように見つめる。
「違う、俺だって本当は行きたくない。だけど仕方ないじゃないか。もう決まった事なんだ。」
せめて誠実に見せたくて、俺はブランコからゆっくり降りると少女をまっすぐ見た。
少女は目を細めると思いっ切り《上段回し蹴り》を俺に放ち、側頭部にクリーンヒットさせ公園を走り去っていった。
何故こうなったのか?俺の頭の中には只々後悔しか無く、泣きてえのはコッチだよとツッコミをいれたい気持ちを抑えながら意識を失っていくのである。
「昴さーーん、起きてください!」
そろそろ慣れてきたマイムの声に反応するように身体をベッドから起こし
「おはよう、マイム」
と気だるそうに挨拶した。
何か夢を見ていた気がするけれど、思い出せないもどかしさで胸がモヤモヤした。
「おはようございます昴さん。本日こそはモテ期を存分に味わって貰うべく、私頑張りますから♪」
モテ期が始まって3日目。
もはや始まってるのかどうかすらの確認をしないまま日にちだけが過ぎていたが、俺にとってはマイムの存在だけで超常現象は十分だった。
というか、こんな不思議な事が起きているのにイキナリその状況を前向きに捉えられる人間など実際にいるのだろうか?
ラノベばかり読んでいる俺だけれど、だからこそ現実に起きたこの状況に毎日《不安》や《恐れ》が先行して自分を支配してるのが解る。
マイムは確かに俺の好みの女の子の設定だけど、イキナリ自分の影に入ったり、瞬時に服を着てみたり…それを
「可愛い娘と同棲ラッキー♪」
と前向きに捉えられるのは、俺の知る限りではデスノートの夜神○イトくらいだろう。いや、彼だって漫画の中だからこそのあの精神力だろうけども。 
俺が考え込んでいると、マイムはそんな事お構い無しといった風に明るく話しかけてきた。
「ところで私気になってたんですけど昴さんは一人暮らしなのですか?ご家族と全く顔を合わせませんが?」
あぁ家族ね。
俺の両親は共働きで殆ど家にはいない。
子供の頃からだから特にもう気にもしていないが、父と母は若い頃に二人で立ち上げたIT企業の社長と副社長である。
今年の春の転校も、新しい事業の拡大とかで慌ただしく決まり、そこに俺の意思の介入は許されなかった。
というよりもう数ヶ月はまともに会話もしていない気がする。
「いや、両親も一緒に住んでるよ?あんまり家に居ないけどね」
もう慣れているから寂しくも何とも無いが、やはりこの手の質問に答えると同情されるんじゃないか?等と余計な事ばかり考えて、結局は微妙な表情になってしまう。
「そうなんですか…一度ご挨拶でもと思ったんですけど…。仕方ありませんね。またの機会にしましょう」
いやいや、挨拶って。なんて説明するつもりなんだよ。
モテ期のナビゲーターなんて仕事はこの世には存在しないだろ。
いや、そもそも…
「あのさ。マイムってやっぱりみんなにも見えるの?ほら、マイムの存在だけでも俺にとっては超常現象な訳でさ。実は俺にしか見えない〜くらいの事もあるのかと思って。」
影に入るくらいの事が出来るのだからそれぐらい出来るのかも知れないと思って聞いてみただけなのだが、マイムはむ〜っと頬を膨らませ、俺の頬を両手で掴むと顔を近づけてきた。
「え、ちょっと、待って」
マイムの顔がどんどん近づいてくる。
キ、キスされる!?
目を閉じるべきなのか、それとも人生初めてのこの行為をマジマジと観察すべきなのかと悩んでいる間に、マイムの顔は唇からあと10cm程度の所で止まって
「この顔が見えませんか!?私はちゃんとここにいます!」
と、少し寂しそうな顔で俺を見つめた。
この、怒っているような寂しそうな表情を見て、俺はようやく今日見た夢の内容を思い出して胸のモヤモヤが取れていくのを感じた。
「ご、ごめんマイム。ちゃんと見えてるよ」
俺が謝ると、マイムはニコっと笑顔を見せて顔を離した。
少し残念なようなホッとしたような感覚に悔しさを覚えていると
「今日こそ一緒にモテ期を体験しましょうね♪さぁ外にレッツゴー!」
とマイムは元気良く俺の腕を引っ張ったのであった。
マイムのころころ変わる表情の一つ一つが
夢の少女にそっくりだった。
少女の声が公園に響く。
ブランコの手すりの感触が、そろそろ桜も咲こうかと言う3月の終わりにも関わらず、俺の手を冷やしていた。
少女はいつだって前向きで明るくて、俺を元気付けてくれるのに…今日だけは涙を溜めた目で俺を睨むように見つめる。
「違う、俺だって本当は行きたくない。だけど仕方ないじゃないか。もう決まった事なんだ。」
せめて誠実に見せたくて、俺はブランコからゆっくり降りると少女をまっすぐ見た。
少女は目を細めると思いっ切り《上段回し蹴り》を俺に放ち、側頭部にクリーンヒットさせ公園を走り去っていった。
何故こうなったのか?俺の頭の中には只々後悔しか無く、泣きてえのはコッチだよとツッコミをいれたい気持ちを抑えながら意識を失っていくのである。
「昴さーーん、起きてください!」
そろそろ慣れてきたマイムの声に反応するように身体をベッドから起こし
「おはよう、マイム」
と気だるそうに挨拶した。
何か夢を見ていた気がするけれど、思い出せないもどかしさで胸がモヤモヤした。
「おはようございます昴さん。本日こそはモテ期を存分に味わって貰うべく、私頑張りますから♪」
モテ期が始まって3日目。
もはや始まってるのかどうかすらの確認をしないまま日にちだけが過ぎていたが、俺にとってはマイムの存在だけで超常現象は十分だった。
というか、こんな不思議な事が起きているのにイキナリその状況を前向きに捉えられる人間など実際にいるのだろうか?
ラノベばかり読んでいる俺だけれど、だからこそ現実に起きたこの状況に毎日《不安》や《恐れ》が先行して自分を支配してるのが解る。
マイムは確かに俺の好みの女の子の設定だけど、イキナリ自分の影に入ったり、瞬時に服を着てみたり…それを
「可愛い娘と同棲ラッキー♪」
と前向きに捉えられるのは、俺の知る限りではデスノートの夜神○イトくらいだろう。いや、彼だって漫画の中だからこそのあの精神力だろうけども。 
俺が考え込んでいると、マイムはそんな事お構い無しといった風に明るく話しかけてきた。
「ところで私気になってたんですけど昴さんは一人暮らしなのですか?ご家族と全く顔を合わせませんが?」
あぁ家族ね。
俺の両親は共働きで殆ど家にはいない。
子供の頃からだから特にもう気にもしていないが、父と母は若い頃に二人で立ち上げたIT企業の社長と副社長である。
今年の春の転校も、新しい事業の拡大とかで慌ただしく決まり、そこに俺の意思の介入は許されなかった。
というよりもう数ヶ月はまともに会話もしていない気がする。
「いや、両親も一緒に住んでるよ?あんまり家に居ないけどね」
もう慣れているから寂しくも何とも無いが、やはりこの手の質問に答えると同情されるんじゃないか?等と余計な事ばかり考えて、結局は微妙な表情になってしまう。
「そうなんですか…一度ご挨拶でもと思ったんですけど…。仕方ありませんね。またの機会にしましょう」
いやいや、挨拶って。なんて説明するつもりなんだよ。
モテ期のナビゲーターなんて仕事はこの世には存在しないだろ。
いや、そもそも…
「あのさ。マイムってやっぱりみんなにも見えるの?ほら、マイムの存在だけでも俺にとっては超常現象な訳でさ。実は俺にしか見えない〜くらいの事もあるのかと思って。」
影に入るくらいの事が出来るのだからそれぐらい出来るのかも知れないと思って聞いてみただけなのだが、マイムはむ〜っと頬を膨らませ、俺の頬を両手で掴むと顔を近づけてきた。
「え、ちょっと、待って」
マイムの顔がどんどん近づいてくる。
キ、キスされる!?
目を閉じるべきなのか、それとも人生初めてのこの行為をマジマジと観察すべきなのかと悩んでいる間に、マイムの顔は唇からあと10cm程度の所で止まって
「この顔が見えませんか!?私はちゃんとここにいます!」
と、少し寂しそうな顔で俺を見つめた。
この、怒っているような寂しそうな表情を見て、俺はようやく今日見た夢の内容を思い出して胸のモヤモヤが取れていくのを感じた。
「ご、ごめんマイム。ちゃんと見えてるよ」
俺が謝ると、マイムはニコっと笑顔を見せて顔を離した。
少し残念なようなホッとしたような感覚に悔しさを覚えていると
「今日こそ一緒にモテ期を体験しましょうね♪さぁ外にレッツゴー!」
とマイムは元気良く俺の腕を引っ張ったのであった。
マイムのころころ変わる表情の一つ一つが
夢の少女にそっくりだった。
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