モテない俺にある日突然モテ期が来たら

ドラオ

力の使い方

そんなこんなでモテ期が始まって2日目。


「ちょっと対策を考えますのでしばらく時間をください」


そう言い残したマイムは影に戻ると昨日は一度も影から出てくる事は無かった。


魔力の過剰供給の件はどうなったのかと聞くと、悩んだり考えたりすると人間と同じようにエネルギーを消費するのでバランスが取れるらしい。


その言葉通りなのか何なのか、影からブツブツとマイムの独り言のようなものが一日中聴こえて、あぁこりゃエネルギー使うわなと納得する。



せっかくの夏休みの初日を、謎の女の子の独り言を一日中聞いて、後は目的も無く本を読んだり、勉強をしたりして過ごした。


俺が眠る頃にはマイムの声も聞こえなくなっていたが、また朝起きたらマイムが裸で横にいるんじゃないかと想像したらドキドキしてどうも寝付けない。



グダグタとスマホなんかを見ていたら気付けば意識も遠のいて深い眠りについていたのである。



そして期待はあっさり裏切られ、俺が目を覚ますとマイムはベットの前に正座していた。



「おはようございます!昴さん!」


いつも通りの満点の笑顔で俺に挨拶したマイムは自信に満ち溢れたような顔に見える。何か良い方法でも見つかったのだろうか。


「昴さん!学校へ行きましょう!学校へ行けばまだ関わりの無い方でもこれから話しかけたりすればすぐに関係を構築出来ますよ!」


成る程。

いままで確かに誰も俺に話しかけて来なかったし、俺も基本的に自分から誰かに話しかける事も無かったけれど、クラスメイトなら流石に俺の存在くらいは認知しているし、今からでも遅く無いと言う事か。良い案だ。だが・・・



「マイム、昨日から夏休みなんだ。」



根本的な問題があるんだよな。
もしかしたら部活に入ってる人間とかはいるかもしれないけれど、高校3年の夏休みに部活やってる人は少ないだろう。


「え?そうなんですか?どうしましょう。では街に繰り出して片っ端から女性に声をかけるとか」


うん。どこからが俺との関係性を意味するのかは知らないけれど、そんな事が出来るなら独りぼっちの学校生活なんて過ごして無いんだよね。ナンパなんて当然ながらした事も無いし。


「もうちょっと他の案は無いか?昨日一日中考えてたみたいだし、もう少し俺にも達成可能なプランが良いのだけど」



マイムは、ん〜と唸りながら唇に人差し指を当てながら考え込んでしまった。
そして一言。



「無いですね♪詰みました♪」


と可愛く笑って言い放ったのである。


え?まさかコレだけなのか?あんなにブツブツ言ってたのにコレだけ?どうなってるんだこの娘は。ナビゲーターじゃないのか?


いやちょっと待てよ。確かナビゲーターは俺の思う理想の異性が具現化するって言ってたよな。


もちろん俺がアンケート用紙に書いた理想の異性は人気ラノベの四大精霊を召喚したら全員嫁になった略してぜんよめのマイムちゃんな訳だけれど。


確かこの娘の特徴は…


俺は本棚に走って全嫁ぜんよめをもう一度パラパラとめくり、マイムちゃんの出ている場面を読み返した。


そして確信に変わる。アンケート用紙には書かなかったが、マイムちゃんは・・・



《アホの娘》



な設定である。アンケート用紙に書いてないのにこんな所までもキッチリ設定通りに具現化するなんて、恐らくコレはアンケート用紙だけでは無い何かの力が働いているとしか思えなかった。



もし仮に本当に俺に女の子を言いなりにする力が宿ったのだとしたら、本気でこの力の事を知る必要があるなと感じた瞬間だった。


俺が難しい顔をしているとマイムは


「もう、昴さん文句ばっかり!もっと前向きに当たって砕けてくださいよ!せっかくの無料キャンペーンなのにもう2日も能力使ってないんですよ!勿体ないです!勿体ないオバケでますよ!」


とキレてきた。



そういや《優しいけどキレ体質》だったなマイムというキャラは。



「もう、なんでそんなに冷静なんですか昴さんは!?普通はこんな特別な力が宿ったら一度は使って見るのが人間ってものでしょう!?異性に興味無いんですか!?○モなんですか!?」



んな!?それだけは断じて無い!俺は間違いなく女の子が好きだ!
けれど、どうしてもこの夢のような今を現実の事として捉えられない自分がいて、どこか俯瞰ふかんで見てしまっている。


多分、きっと、俺はそれこそラノベの世界の中のようなこんな状況が心底



《恐い》だけだった。

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