End Cycle Story

島地 雷夢

第59話

 リャストルクは語る。 彼女達の種族――オグドはこの世界とは違う異世界で繁栄していた種族だそうだ。 科学技術と魔法の併用により、人々は豊かな暮らしを手に入れた。 科学と魔法は垣根を越え、融合を果たし、科学魔法という新たな法則を生み出した。 その法則により、彼女達の世界は発展を続け……滅びた。 発展とは切っても切り離せない現象……戦争が勃発し、生命が存在出来ない程に荒廃してしまった。 僅かに生き残ったオグド達は次元の歪みを生み出し、そこから世界の狭間へと逃げた。 しかし、そこはオグド達にとって過酷な場所だった。 世界の狭間は、本来生命が存在しない場所。生命が生きる為の環境が全く整っていない。 科学魔法によってなんとか対応する事は出来た。しかし、完全ではなかった。 一人、また一人と、オグドは数を減らしていった。 このままでは、全滅してしまう。 ある者は、当然の報いだと滅びを受け入れた。 ある者は、打開策がある筈だと抗い続けた。 ある者は、自分達がこのまま滅んでいい筈がないと狂気を帯びた。 その狂気を帯びた者が苦心の末に、ある科学魔法を生み出した。『リクリエイト』。それが全ての元凶となる科学魔法の名前。 その魔法は本来あるものを別の物へと変換する魔法。それは物体に限らず、世界そのものの法則にさえも作用する。『リクリエイト』を生み出したオグドは、早速『リクリエイト』を使い、自分達を世界の狭間でも息絶える事のない存在へと昇華させた。 これにより、滅びの運命は回避された。 しかし、それだけでは終わらなかった。『リクリエイト』を生み出したオグドは、他の者達にこう語りかけた。 我々の世界を作り直さないか? と。 すなわち、世界の再編。普通ならば出来ないが『リクリエイト』の科学魔法がそれを可能にする。 しかし、世界の再編を行うには力が足りなさ過ぎた。『リクリエイト』は一回の発動に尋常ではない力を要した。世界の狭間に対応するように作り変えるだけでも、根こそぎ力を持っていかれた。 例え時間を掛けて力を回復したとしても、世界の再編をするには程遠い。 ならば、と『リクリエイト』を生み出したオグドはこう語った。 元ある世界を作り変えよう、と。 無からではなく、有から作り変えるのならば、力の消費は少なく済む。 そこで、意見が二つに分かれた。 他の世界に迷惑を掛けてはいけない。別の方法を探そうとする者達。 他の世界なぞどうでもいい。早々に世界を作りかえようとする者達。 両者は対立し、熾烈な争いが繰り広げられた。 そして、決着がついた。 他の世界を気に掛けていた者達は敗れ、亡き者へ。 勝利したオグド達は候補となる世界を探しに出た。 しかし、その数を減らした事により、自分達だけでは決して世界を作りかえる事が出来なくなってしまった。 それでも、打開策はあった。『リクリエイト』を生み出したオグドはその打開策を行うに相応しく、作り変える事が容易な世界を捜した。 そして、一つの世界を見付けた。 その世界は俺の知るような、魔物と亜人がいない、まるで地球のような世界だったそうだ。 すなわち、人類が頂点に君臨している世界だった。俺の世界と違うのは、科学が台頭しておらず、魔法が発展しかけていたと言う所。 科学の発展よりも、魔法の発展した世界の方が、いじくりやすい。 オグドはその世界の人々が使う魔法に干渉し、世界を書き換えた。 その世界に君臨する人類の三分の二を作り変え、レガン、ノーデムへと変貌させた。 そして、転生に関する法則も書き換えた。 人類が死ねば、レガンへと。 レガンが死ねば、ノーデムへと。 ノーデムが死ねば、人類へと。 一度生を終えると、今とは別の種族へと転生するように。 オグド達は、人類だけを世界に残し、レガンとノーデムをそれぞれ別の亜空間へと押し込めた。 更に、認識改変を行い数の減った人類が異変だと気付かないよう、レガンとノーデムは最初からそのような種族だと認識させた。 そして、人類、レガン、ノーデムの三種族の中で一番力が強い者をそれぞれの中から選び、不老長寿にし、それぞれの長とした。 その三者に、オグドは語り掛けた。 三種族で一千年争え。さすればお前達には我らと共に歩む権利をやろう。 そう語ると、彼等の目にオグドが栄華を誇っていた時代の映像が映し出されたのだ。今とは違う、何歩も進歩した世界。一千年程度では到達する事が出来ない魅惑の世界だった。 そのような世界を生きる事が出来る。 三者はオグドの甘言に疑うそぶりを見せず、首肯して答えた。 こうして、人類、レガン、ノーデムの三種族は争いを始めた。 オグドが三種族を争わせた訳は、力を蓄える為。 生命が死ぬ際に魂だけとなって転生する。その際に死んだ肉体に残された力を回収し、蓄える。蓄えた力は世界を作り変える為の原動力となる。 ただ、そうして得られた力は微々たるものだ。なので、世界を作り変えるのに必要な力が溜まるおおよその年月を叩き出し、少し余裕を持たせて一千年としたのだ。 そして、その間オグド達は自身の力を蓄えつつ温存する為に感傷は極力最小にとどめた。 事は順調に運んでいたかに見えた。 確かに、四百年経った頃までは何も問題はなかった。 しかし、突如死んだ肉体に残された力を蓄える事が出来なくなった。 全てではなく、ある者達が関与した場合にのみ起こった事象だ。 その者達は、四百年前、意見が対立し滅ぼされたオグド達の特徴を持っていた。 ある者は竜の特徴を。 ある者は鬼の特徴を。 ある者は狼の特徴を。 ある者は不死鳥の特徴を。 ある者は妖精の特徴を。 共通して瞳の色が左右異なり、通常は人類と同じ姿をしていた。だが、一度レガンやノーデムと戦うと姿を変えた。そして、その者達に倒されたレガンとノーデムからは力を回収出来ない所かその魂は元の姿である人類へと転生された。 少しずつだが、人類の数が増え始めてしまった。三者が均衡するよう、転生の輪を弄っていたがそれが阻害された。 オグド達は確信した。四百年前に滅ぼした同朋は死して尚、自分達の邪魔をしているのだと。 死した同朋はその魂の一部を人類と融合させ、力の一部を顕現出来るようにしていた。 死した同胞を恨む一方、腑に落ちない点があった。 それは、数。 滅ぼした同朋の数は六。しかし、その力の一部を扱える者達は五人だけだ。 残る一人は、滅ぼした中でも厄介な力を使う者だった。その力の一部を扱える者がいないだけでも対策はしやすい。 だが、五人の力の一部を扱う者達が同時に現れて、その者の力を扱う者が出現しないのか? 単に完全に消滅しているだけなのか? はたまた何かの罠か? 奇襲を掛けてくる作戦なのか? 様々な可能性が頭を巡り、大手を振ってレガンとノーデムを殺す力の一部を扱う者達へ迂闊に手を出す事が出来なかった。 そして、それから更に二百と三十年。 オグドの中で一人離反する者が現れた。 それが、リャストルクだ。 リャストルクは滅ぼされた者達の仲間で、機が熟した頃を見計らい世界へと逃げおおせた。 その際に、一人の人間と出逢い、契約を交わしてレガンとノーデムを屠って行った。 しかし、リャストルクを追ってきたノディマッドによって薙ぎ手は殺され、レガンへと転生された。 リャストルクは薙ぎ手の最後の力で逃がされ、偶然の出会いを果たす。 残る一人の力の一部を扱える者……『エンプサ・ブラッド』を扱える俺との出会いを。 俺がこの世界に来た事により、同朋の六つの力がこの世界に現れた。 機は、完全に熟した。『……薙ぎ手達よ、妾の同胞の力を受け継ぎし者達よ』 リャストルクは一度間を取ると、俺とレガンロイドに問い掛けてくる。『妾の同胞達の凶行を止め、全てを元に戻す手助けをしてくれまいか?』 リャストルクは懇願する。作り変えられてしまった世界を元に戻す為に。 俺とレガンロイドは、躊躇う事無く首を縦に振る。

「End Cycle Story」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く