End Cycle Story

島地 雷夢

第47話

「ちぃ!」 ノディマッドは舌打ちをすると、俺から距離を取ろうとファイネを操り上昇して右方へと飛んで行く。俺はファイネを追い掛けるが、その際にノディマッドの銃口が俺に向けられて光弾が発射されてしまうものの、未だにライトスフィア継続中故にダメージには至らない。 逃げるファイネだが、俺は一向に追い付ける気配が見えない。『ドラゴン・ブラッド』は敏捷力も上げてしまう『ブラッド・オープン』なので、素の状態でも素早さで負けていた俺が追い付ける道理が無かった。いや、飛翔ならばもしかしたらとも思ったが、敏捷力は飛翔にも影響を与えているようなのだ。俺の『エンプサ・ブラッド』は運命力以外は全く上がらないので飛行速度に影響しない。それによって距離が開いてしまっていく。「ウィンドヴェール」 少しでも近付いてノディマッドに攻撃を加えられるようにと『ウィンドヴェール』を唱えて敏捷力を上げる。
『精神力:195/240』
「ウィンドヴェール」 しかし、俺とほぼ同時にファイネが同じ魔法を唱える。これによって速度が総合的に先程と全く変わらなくなってしまった。くそ、ファイネも『ウィンドヴェール』が使えたなんて。いや、『ファイアショット』が使える時点で予想しててもよかったものの、それ以外を全く使ってなかったから油断してた。 こうなると、俺は遠距離系統の攻撃をしてファイネにダメージを与えて行けばいいのだろうけど、それは何としても避けたい。ノディマッドに当たれば御の字だが、ここまで距離が離れているとそもそもノディマッドどころかファイネにも当たらないだろう。当たったとしても、最悪ファイネ自身にだ。 今のファイネは攻撃特化となっており、防御力が常時の半分以下にまで落ち込んでしまっている。俺の何気ない『ファイアショット』や『刃波』が真面に当たってしまった場合、『エンプサ・ブラッド』の運命力三倍によるクリティカル補正の上昇によって思ってもみない大ダメージを与えてしまいかねない。それは何としても避けたいが為に、危険だろうが近距離でノディマッドにダメージを与えていくしかない。「バーストショット」 何時の間にか光を収束していたらしく、後方で逃走している俺を見ながらまたもや『バーストショット』を放ってくるが、やはり『ライトスフィア』に阻まれて俺に1のダメージも入らない。このまま『ライトスフィア』が消えてもまた唱える。それを続けていけば、血継力が尽きるまでの間は俺にダメージは通らない。 リャストルクの装備効果故にか、血継力の減少速度が平常時の半分程にまで抑えられているので、俺が『エンプサ・ブラッド』を維持出来るのは一分にまで伸びた。それを踏まえると、『ライトスフィア』を三回唱えれば『ブラッド・オープン』を解放したままダメージが通らないようにする事が出来、更には精神力が増えているので120も消費しても他に魔法や特殊技が放つ事が出来る。 けど、いくらダメージが入らないからと言ってもこのままだと分が悪い。何とかして打開しないとな。 と、ノディマッドの銃口に光が収束し出した。また『バーストショット』を放つのかと思ったが、そうではなかった。「スパイラルショット」 収束した光が放たれたが、それは複数の弾に分裂する事も無く、前後に細長くなって球と言うよりも棒に近い形状になりながら俺の方へと向かっていく。光の槍は光の障壁に触れると、それが回転していた事に気付かされる。スパイラルと言った割に螺旋の軌道を描いていなかったが、要は回転する光弾と言う事であった。 俺の展開している『ライトスフィア』にぶち当たりながらも回転を続けて、障壁を形成している光を抉り取っていく。不味いと思い、俺は即高度を下げる。案の定とも言うべきか、『スパイラルショット』はその回転を用いて俺の『ライトスフィア』を貫通した。光弾は俺の頭上を通り過ぎて行き、『エリアブロック』の障壁にぶち当たってもなお消える事無くその場で回転を続けていた。 正直、『バーストショット』を食らっても平気だった『ライトスフィア』が破られるとは思ってもみなかった。そして『エリアブロック』の強固さが尋常でない事も再三確認させられる。何あの桃色の障壁? あの材質で防具が欲しいんだけど。「スパイラルショット」 と、後ろを向きながらそう思っていると、またもやあの回転する光弾の名前が聞こえてきたので、前に向き直り、直ぐに高度を上げて弾の軌道から逸れる。銃口の向きから何処を狙ってるのかはもう分かっているのだが、速度があって軌道上から体を退かしても『ライトスフィア』には当たってしまい、どんどん削られていく。「スパイラルショット」 通常弾と同じく、単発なのは救いである。これで連射性能があれば展開している『ライトスフィア』は瞬く間に穴だらけになり俺の体にも穴が開いていた事だろう。けど、楽観視は決して出来ない。「スパイラルショット」 ファイネの精神力――魔力の最大値がどれ程か分からない今、何発『スパイラルショット』が放たれるか分からない。「スパイラルショット」 が、少なくとも俺より上である事は窺える。そうでもなければここまで乱発は出来ないだろう。「スパイラルショット」 次々と放たれてくる回転弾により、俺の守りとなっている光の障壁は見るも無残な状態へと変貌してしまう。こんなに穴だらけになるとは、『ライトスフィア』を張り直したい気持ちに駆られるが、それは出来ない。「スパイラルショット」 これは『ライトスフィア』だけでなく、『フロストカーテン』、『ウィンドヴェール』、『サンダーフォール』にも言える事であるが、一度唱えた魔法は効果の重複を狙っての連続使用が出来ない。例えば、『サンダーフォール』と二回唱えて前後に雷の壁を出現させる事は出来ないし、『ウィンドヴェール』の二重掛けも出来ない。「スパイラルショット」 なので、いくら穴だらけになったとしても今俺を守っている『ライトスフィア』が消えない限り、新たな『ライトスフィア』を展開する事が出来ない。「スパイラルショット」 くそ、まだ十秒も経ってないのにここまで連続で特殊技を放ち続けるなんて。少しは精神力を温存しようって気は無いのかよ。 と、また光が収束し出したので俺は今度は高度を下げて避けようとする。 が、今度は『スパイラスショット』ではなかった。「バーストショット」 光の弾がそのまま解き放たれ複数の弾丸となって俺に降り注いでいく。だけど、『バーストショット』は効かない筈――あ、不味い! 解き放たれた光弾は雨霰となって穴だらけとなった『ライトスフィア』を通過し、そして内部の障壁で跳弾して次々と俺に被弾してくる。「いったぁ……っ!」 全弾当たった訳ではないけど、それでも半分程度は直撃して俺にダメージを与える。当たった箇所はそのまま光弾が貫通して孔が開き、血が流れてくるがリャストルクを装備する前よりも血の出具合が少ない。そして、被弾した箇所に石英の左腕があったのだが、そこに関しては傷一つついていない。
『生命力:2323/2400』
 おおよそ100の生命力が削られてしまった。けど、体は何処も欠損無く五体満足であるから、追跡するのにまるで支障はない。「くそがっ!」 あまり効いていない俺の様子が気に食わないのか、ノディマッドは舌打ちをしているように言葉を吐く。攻撃と言う面での形勢は逆転され、あとは俺がファイネに追い付きさえすれば全ては終わる。 けれど、それが難しい。 俺とファイネとでは空を飛ぶスピードに差があり過ぎる。『ウィンドヴェール』を発動しても今のように相手も発動してしまっては結局速度差に変化ないから永久に追い付く事は出来ない。 かと言ってこのまま飛び続けて『ドラゴン・ブラッド』の持続時間終了まで待つと言うのも無理だと思う。俺はリャストルクの御蔭で一分間『ブラッド・オープン』をしていられるけど、それはノディマッドに操られてるファイネも同じで、もしかしたら俺よりも血継力の持続時間が長いかもしれない。 なので、このまま追跡を続けるだけでは先にこちらの『ブラッド・オープン』が切れてしまい、空中にいるノディマッドの的になってしまう可能性が出てくる。幸いなのは『ライトスフィア』で『スパイラルショット』以外の光弾を無効化出来る事だが、精神力が続く限りと言う制約が存在する。 っと、そろそろ『ライトスフィア』の持続時間が終わるから、新たに掛け直さないとな。 しかし、本当にどうするべきか? このまま追い付けないとなると、何か作戦でも考えないといけないな。 …………ん? 追い付けない?『薙ぎ手よ、「ライトスフィア」が無くなったぞ』「え、あっとライトスフィアっ」 リャストルクに言われて慌てて『ライトスフィア』を掛け直す。それに一瞬遅れる感じで光弾が俺目掛けて飛んで来て光の障壁に阻まれる。あ、危ねぇ……。うかうかと考えながらの追走は駄目だな。意識が散漫になって隙が出来る。
『精神力:155/240』
 でも、何かいいアイディアが思い浮かびそうなんだけどな。 えっと……追い付けないなら、追い掛けなくてもいいとか? いや、それだと結局意味ないしな。だとしたら追い付けるような工夫をする? 工夫はもう『ウィンドヴェール』で敏捷力を一時的に上昇させた事があるけど、相手も同様にしてるからプラスマイナスゼロになってるし。 ただ追い掛けるんじゃなくて変な軌道を描きながら回り込んだりする……ってのも無しだな。そんな事をしているうちに『エンプサ・ブラッド』の状態が終わるかもしれないし、それにノディマッドもその動きに対応してきそうなんだよな。如何せんこっちに攻撃が効かないからって少しキレてきてるけど、そこまで短絡思考ではないだろうから期待薄の案だな。 こっちは遠距離攻撃は防御力低下中のファイネに当たる可能性を考慮して実質使えない。だから近距離まで近付かないといけないけど素早さで負けてるので話にならない。『のぅ、加藤正樹よ』 と、ここでリャストルクが俺に話し掛けてきた。何? もしかしてもう『ライトスフィア』が切れそうとか?『いや、どちらかと言えば「ウィンドヴェール」の方じゃが、それよりも妾に一つ策があるぞ』 策?『うむ。恐らくだが、あの竜娘に傷を負わせる事も無く、捕まえる事が出来る筈じゃ』 えっ? そんな画期的な方法があるのか?『ある。と言うか多分じゃがな。妾だって試した事はないのでの、確証は無い。しかし、確率としては成功しやすくなっておると思うぞ。何せ、お主は今通常時よりも力が沸いておる筈だしの』 あ、まぁ、確かにリャストルクを装備した御蔭で攻撃力とか生命力とかが劇的に増幅されてるけど、それと関係あるのか?『あるぞ。何せ、お主の魔法を使うのだからの』 魔法って……。有用そうなのないと思うけど、『ファイアショット』は論外だし、『フロストカーテン』は一回使っちゃってるから何しようとするのか丸分かり以前に範囲外だから攪乱にも使えない。『サンダーフォール』は攻撃跳ね返す壁だし、『ウィンドヴェール』に『ライトスフィア』は向いてない。 拘束系の魔法である『ウッドプリズン』も『ブラックバインド』も覚えてないから使えない。『メンタルドレイン』で精神力を吸い尽くす……それで虚脱の状態異常に出来ればいいんだけど、生憎とノディマッドを装備してると状態以上に掛からなくなるから駄目、と言うかそれ以前に『メンタルドレイン』の吸収量と発動する為の消費量が割に合ってないから吸収しきる前にこっちの精神力が尽きるかもしれない。 って、こう考えると俺の魔法で有用なのはないんだけど?『いや、あるぞ。恐らくだがこれが一番確実であると思う』 あるの? 今のラインナップの中に?『ある。まぁ、竜娘が怪我をしないようにするには加藤正樹、お主がどうにかして庇う等をする必要があるのじゃろうが』 それでも出来るなら、一つお教え下さいな。『なら、まずは頭の中で……いや、頭の中で考えずともよい。『サンダーフォール』を竜娘の目の前に落ちるように発動せよ。それだけで事は終える筈じゃよ』 …………えっと、『サンダーフォール』を?『そうじゃが?』 あれって攻撃系の魔法じゃないけど、当たったら感電とかしそうなんだけど。と言うか確実に感電するだろ。『安心せい』 安心出来ないんだけど。『竜娘に当てるのではなく目の前にと言ったであろう。そうすれば進行の邪魔になり、戸惑っておる間に至近距離まで近づけると言う寸法じゃ。おっと、その前に「ウィンドヴェール」を掛けておいた方がよかろうて』「ウィンドヴェール」 俺を纏っていた風が切れたので、リャストルクの言った通りに掛け直す。
『精神力:150/240』
「ウィンドヴェール」 と、ファイネの方も切れたらしく掛け直している。やっぱりこのままだと速度差によって追い付けないよな。『じゃから、『サンダーフォール』を発動せよと』 けどさ、『サンダーフォール』って幅およそ一メートルくらいだし、直ぐに避けられると思うんだ。『それは今心配せずともよい筈じゃよ』 そうは言ってもなぁ……。やっぱりあんまり足止めには向かないと思うんだよ。『……妾の言う事が信じられぬか?』 いや、信じるよ。折角の策なんだし、俺だけだともう追い付ける自信が無いから採用させて貰います。「サンダーフォール!」 俺はファイネの目の前に雷の壁を出すイメージで魔法を唱えた。
『精神力:145/240』
 すると。
 ピシャァァアアアアアアアアアアンッ‼
「うっそぉ……」 雷の壁は一瞬にして視界を真っ白に染め上げる程の光を纏いながら降り注いだ。それに、幅が五メートルになり避けにくくなっている。さっきまでの俺ならここまでのものは出せなかっただろう。リャストルク、恐るべし。 なんでここまで大きくなってるんだろう? って言うのはやっぱりリャストルクが影響してるんだろうなぁ。本当、チート武器だよ。 ノディマッドに操られたファイネは突如として現れた雷の壁に身を強張らせ、羽ばたかせていた翼を横いっぱいに広げて空気抵抗を増し、急ブレーキを掛けて突撃を回避しようとするが、止まり切れない。制動距離は足りずに接触してしまうと言った所で、一度上昇し、そのまま蜻蛉返りを撃ってUターンをして避ける事に成功する。 で、避けた場所に丁度良く俺がいる訳で。「っ⁉」 ファイネは俺を避けようとするが、失速状態にあったので俺がそのまま真っ直ぐと進む速度の方が早いので避けきれないだろう。まぁ、俺は当たる気は毛頭ないけどな。だって当たってしまったら展開中の『ライトスフィア』で怪我をさせかねないからな。「ちぃ!」「スパイラルショット」 ノディマッドはファイネを操って銃口を俺に向けて先端に光を収束させていく。ここまでの近距離ならば『スパイラルショット』を俺に当てやすいと踏んだのだろう。けど、指せてたまるか! 俺は両手で握り直したリャストルクを右に構え、迫り来るファイネの手に握られた偽金剛銃目掛けて振り抜く。「ぐがっ!」 銃身の中程に当たった石英の刀身はそのまま真っ二つにする事は無かったが、ノディマッドにひびを入れさせることに成功する。収束していた光は霧散していき、このまま力を込めて振り抜けば砕け散るだろう。そうなれば、ファイネはノディマッドの呪縛から解放させる事が出来る。「これでっ!」「終わりじゃっ!」 俺は愛した人と酷似している少女を助ける為に、リャストルクは薙ぎ手の敵を討つ為に、互いに声を荒げ、持てる限りの力を解き放って、一気に振り抜こうとする。 漸く終わる。そう思った。
 ――――――しかし。
「ディプライブメモリー」
 力を籠めようとした瞬間、偽金剛銃ノディマッドの銃口から一筋の光が解き放たれ、それは俺の『ライトスフィア』を壊す事無くすり抜けて行き、突然の事態に体が硬直してしまった俺はその光を避ける事も出来ず、ただただ眉間に吸い込まれていく様を見ているしかなかった。

 # # #
「う……うぅ……」 頭が痛い。節々も嫌に動かしづらくて、体が重い。 私は額に手を当て、何時もよりもごつごつした手の感触であったので竜の血を解放している事に気付き、そして背中の翼を羽ばたかせて宙に浮かんでいる事も認識し、自分の身に何が起きていたのかを思い出す。 けど、矛盾を感じてならない。 私は自分の胸を撃ち抜いて、これ以上彼に危害を加えないようにとした筈だけど、胸には傷一つついていない。 どうして? いや、考えるまでもない。 私は操られてたんだ。今も手にしているノディマッドと言う何かに。私は死ぬ程の重傷を自ら負ったけど、即死はしなかった。だから、操られて回復魔法を唱えたんだろう。 ふと、ノディマッドへと視線を向ける。 ノディマッドは私が意識を失う前までは無傷であったけど、今はどうしてだかひび割れていて、少しの衝撃で壊れそうだった。 ……これがなかったら、彼は左腕を失くす事も無かったのに! 私は言い知れない衝動に駆られ、力任せにこのノディマッドを真っ二つに折ろうと掴みかかる。「娘、やめておけ」 が、それはノディマッド自身の声によって遮られる事になる。「我を殺せば、そこに転がっているわざわざ貴様を解放した異端者は元に戻らなくなるぞ」 異端者、とは何を指すのか私には分かっている。このノディマッドがそう呼んでいるのは彼だ。どうして異端なのかは分からないけど、操られていても意識がまだあった時にそう言っていたので間違いない。 私は視線をノディマッドから外し、下を見渡す。舞台は無残なまでに破壊されていて、平らな部分があまり存在しなかった。が、そこはあまり気にならない。 四メートルばかり向こうの地面に仰向けになって横たわっている彼を見付けたからだ。 彼の背中には翼が生えていて、左腕が元に戻って……いや、何か透明感のある何かで作られた物を嵌めていた。体中に怪我をしており、眼を閉じ、胸を上下させているのを見ると彼は生きている。 よかった。けど、外傷はなくとも内臓にダメージを受けているかもしれない。そう思ういてもたってもいられなくなり、背中の翼を羽ばたかせて宙を飛び、瞬時に彼の下へと降りる。「ハイヒール」 左手を翳して回復魔法を唱え、それによって生じた光が彼の全身を包み込み、みるみるうちに治癒していくのが見て取れる。「…………ん」 光が収まるのと同時に、口から声が漏れて、ゆっくりと眼が開けられる。「えっと、大丈夫?」 彼は軽く視線を彷徨わせたが、直ぐに私の存在に気が付いたのか、ぼぉっとしながらも私の顔を覗いてくる。「迷惑を掛けて御免。そして……助けてくれてありがとう」 私は彼に謝罪の言葉と感謝の言葉を掛けた。ノディマッドの言葉通りなら、操られた私を元に戻してくれたのは彼なんだ。だから、礼を述べないと。「……何が?」 彼は惚けてるのか、はたまた意識がぼやけていて何を言われたのか分からなかったようだった。「何がって」 私は彼の意識の覚醒を促すように、何に対して迷惑を掛けたか、そして何に対してありがとうと言ったのかを口にしようとする。
「――――と言うか、君は誰?」
 けど、それは彼の放った言葉で口を閉ざす事になった。「…………え?」 代わりに、そんな声が漏れる事になった。 何を言ってるの? いえ、やっぱりまだ意識が朦朧としてるだけなんだ。礼を言うのは彼がある程度回復してからでも。 しかし。
「それと、ここは何処?」
 次々と出てくる彼の言葉に。
「俺は何でここにいるんだ?」
 不安が積もっていき。
「……俺は、誰だ?」
 未だに手にしていたノディマッドを強く強く握りしめていた。「ねぇ、貴方は、彼に何をしたの……?」「知れた事。この異端者の状態を見れば一目瞭然ではないか」 私は途切れ途切れになりながらもノディマッドに問い掛けると、鼻で私を笑うようにしながらも、律儀に答えた。
「我が、この異端者の記憶を奪ったのだ」



第2章・了

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