End Cycle Story

島地 雷夢

第1話

 『エンド・サイクル・ストーリー』――通称『E.C.エクス』――。 俺が今やろうとしている今日発売されたアクションRPGの名前だ。 据え置きのゲーム機で6年前に発売された物を携帯ゲーム機用にリメイクし、追加要素を加えたものである。 現在ではMORPGやMMORPGとかが流行っているのだろうけど、俺はやり辛さを感じてそちらには手を出してはいない。 一応、この『E.C.S』のリメイクでは無線ランを用いての多人数プレイも可能なのだが、それはオマケ要素としての意味合いが強く、ボスラッシュや大乱闘を目的としたコロシアムモードだけの機能だ。 内容としては、大まかに説明するとこちらで言う天使のような存在の『レガン』と悪魔のような存在『ノーデム』の強大な二種族が延々と覇権争いをする世界で主人公が争いに巻き込まれた世界を救うと言う恐らく王道もののゲーム。 敵――レガンとノーデムとは基本的に町や都市以外の人族が住んでいない場所を歩いてるとエンカウントする。エンカウント後はアクティブフィールドからバトルフィールドへと移行(ゲームの仕様。説明書にはレガンとノーデムの力により一時的に異世界へと連れて来られる場所との事)し、ボタンによる簡単な操作で戦闘をこなしていく。 ジャンルがアクションRPGなのでターン制ではなく、自らが動き回って同じく動き回る敵の攻撃を防御したり攻撃を加えていくものである。反射神経がものをいうので苦手な人にはお勧めしないが。 主人公はレガンとノーデムを倒して経験値を取得し、レベルを上げていく。レベルを上げてステータスポイントを貰い、それを各能力値に振り込む事で能力が上昇する。レベルは最大で100。これは一般的な数値だと思う。 ステータスポイントを使用する能力値は全部で八つ存在する。 生命力――所謂LP。この数値が0になるとゲームオーバー。減る要素は様々。 精神力――所謂MP。これを消費して魔法攻撃や特殊技を繰り出す。 物理攻撃力――値が大きければ通常攻撃と特殊技による与ダメージが増す。 物理防御力――値が大きければ通常攻撃と特殊技による被ダメージが減る。 魔法攻撃力――値が大きければ魔法攻撃による与ダメージが増す。 魔法防御力――値が大きければ魔法攻撃による被ダメージが減る。 敏捷力――攻撃の出や回避、移動速度に影響。 運命力――敵から得られるドロップアイテムと攻撃のクリティカル補正に影響。 表記が漢字なので分かりやすいと個人的に思う。最近のゲームでは英語の略称で能力値が表示されているものがあるが、あれは英語の意味を知っていないと分かり辛いので個人的にはあまり好みではない。 そのようなゲームが増えてるのは英語での表記が格好いいというのが一番の理由だと思う。実際英語表記とかは格好いい。なのでこのゲームでも広く一般的に知られているLPやMPくらいは英語表記でもいいのではないか? と思えてしまう。 話が逸れたので軌道修正しよう。 金銭はレガンとノーデムを倒すと手に入る。またアクティブフィールドに点在する宝箱の中に入っていたりもするし、アイテムや装備を売却する事でも入手が可能。これはRPGのお約束である。ただし、このゲームにはギルドが存在しないので薬草採取や討伐等の依頼による報酬が存在しない。ハンティングアクションをしている人にはやり辛さを覚えるかもしれない。俺はハンティングアクションのゲームをした事が無いのでよく分からないが。 依頼が無い代わりに、ノンプレーヤーキャラクターに話し掛けるとクエストが発生する場合がある。クエストはストーリー進行に関係するノーマルクエスト、ストーリー進行に関係ないサブクエスト、ある一定の条件をクリアする事によって解放されるレアクエストの三つがある。それらをクリアするとノーマルならストーリーの進展、サブならばアイテムの入手、レアならばレアアイテムの入手、魔法もしくは特殊技の取得をする事が出来る。 装備やアイテムは店で買うか、敵が落とすドロップアイテム、宝箱で賄う。このゲームでは主人公による調合や合成、強化と言った生産系の要素は皆無だ。その代わりにノンプレーヤーキャラクターが調合や合成、強化を全て行っている。自分で装備やアイテムを作りたいと思っている人には向かないげゲームだ。 このゲームの特徴の一つに『ブラッド・オープン・システム』が存在する。これはレガンとノーデム以外の主人公や人族といった者は全員が様々な種族の混血と言う設定であり、遥か昔の祖先の血を甦らせて各能力値をアップさせるという強化システムだ。ストーリーを一定の所まで進めるとイベントが発生し、六つの可能性の内、現在の主人公の能力値によって半自動的に決定されるそうだ。 一つ目は『オーガ・ブラッド』。祖先の荒ぶる鬼の血が目覚め、発動中は魔法が一切使えなくなる。敏捷力と運命力が〇・三倍に低下する代わりに物理攻撃力が三倍、生命力、物理防御力、魔法防御力が一・五倍になり、敵の攻撃で仰け反らなくなる。 二つ目は『フェニクス・ブラッド』。祖先の聖なる不死鳥の血が目覚め、生命力が〇・七倍に低下するが物理防御力と魔法防御力が二倍になり、十秒毎に生命力の五パーセントに当たる数値を自動回復する。 三つ目は『ドラゴン・ブラッド』。祖先の気高き龍の血が目覚め、物理攻撃力、魔法攻撃力が二倍になり、敏捷性が一・三倍になる。その代わり物理防御力と魔法防御力が〇・三倍まで低下する。また、眠りと混乱以外の異常状態に掛からなくなる。 四つ目は『エルフ・ブラッド』。祖先の神聖なる妖精の血が目覚め、精神力と魔法攻撃力が二倍になる代わりに物理攻撃力と物理防御力、運命力が〇・七倍に低下する。しかし魔法を一度の選択で二回連続で発動する事が出来る。ただし消費する精神力は使用する魔法二回分の一・一倍。 五つ目は『フェンリル・ブラッド』。祖先の孤高なる狼の血が目覚め、物理防御力と魔法防御力、運命力が〇・七倍になるが、敏捷力が二倍、物理攻撃力が一・五倍となる。また、特殊技を一度の選択で二回連続で使用する事が出来る。ただし消費する精神力は使用する特殊技二回分の一・一倍。 六つ目はリメイクに当たって新たに登場したもので、発売したての今日の現状までで詳細は公にされていない。 この『ブラッド・オープン・システム』を使うと画面の右上に『血継力』と呼ばれるゲージが出現し、『ブラッド・オープン』状態となり、強化が行われる。『ブラッド・オープン』時にはこのゲージが毎秒低下していく。このゲージはレベルアップによるステータスポイントで最大値を増やす事は出来ず、『ブラッド・オープン』を習得してからボスを倒す事によって少しずつ上昇していく。ゲージ量の回復はアクティブフィールドを歩く事によって徐々に行われる。また、特定のアイテムを使用する事でも回復をする。 俺はリメイク前のソフトが発売した時にプレイをしたかったのだが、生憎とまだ小学生で『E.C.S』をプレイする為の据え置きゲーム機を所持していなかった。親に頼んでも買って貰えず、お年玉は強制的に貯金。クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントは家にあるゲーム機に対応したゲームソフトをこちらの意に反して贈ると言う事態に陥ったのでプレイ自体を断念した。 が、高校生にもなり、小遣いが増えると自分でゲームを買えるようになった。折角なので据え置きのゲーム機を買って『E.C.S』をプレイしようとした矢先にゲーム雑誌でリメイク版が携帯ゲーム機で発売するとの情報を得る。リメイクするのであればそちらを買おうと思い、幸いにも携帯ゲーム機に関しては一年前に買っていたので出費はリメイクソフト分だけであった。 俺は『E.C.S』をプレイするにあたって攻略サイト等でゲームの攻略に関わる下調べを一切行わなかった。してしまえば面白みが半減してしまうし、攻略チャートなぞ見てしまった日にはエンディングまでのあらましを知ってしまうので『E.C.S』に関する情報は公式サイトとゲーム情報誌だけで最低限の操作と世界観の知識を集めた。「……さて」 自分の部屋のベッドで横になりながらソフトをケースから取り出して、ゲーム機に入れる。何やらダウンロード販売も行われてるのだが、メモリーカードが破損してしまった場合には再度買い直さなければいけないと思ったのでソフト本体を買った。また、ソフトならばもし遊び飽きても売る事が出来る。そう言った意図もあってのソフトだ。 ソフトを入れてゲーム機の電源を入れる。 ホーム画面から『E.C.S』のアイコンをタッチして選択する。最近のゲームは触れて操作するものも存在するのでスティックやボタンの有意義が薄れていってしまう気がする。 暫くすると画面が変わり、『E.C.S』を発売した会社のロゴが映し出され、ゲームをプレイするにあたっての注意文が掲示される。所謂ゲームは一時間プレイする毎に十五分の休憩を、というものだった。 そしてデモが流れる事も無くタイトル画面へと移る。どうやらデモはゲームを開始した時に流れるようだ。
『初めから← 続きから 』
 俺は初めからにカーソルを合わせてボタンを押す。
『難易度を設定して下さい イージーモード ノーマルモード ハードモード ←   』
 俺はアクションRPGをかなりの頻度で遊んでいるので慣れている事もあり、ハードを選択する。一応厳しいと思えばメニュー画面の設定変更で難易度の変更も行えるので、心配は要らないだろう。
『性別を決めて下さい 男性← 女性       』
 自分の本来の性別である男を選択。性別によってストーリーが若干の変更がある用だが、このゲームは周回性があるのでその時に変更すればいいだろう。
『名前を入力して下さい』
 今度は名前入力。なんでも姓と名を分けて入録するらしい。因みに日本語圏内ではないようで名が先で姓が後になるそうだ。ここで本名である加藤正樹でマサキ=カトウと入力してもいいのだが、折角なので少し名前をもじって入力する事にする。
『名前:ソウマ=カチカ』
 名前をローマ字にしてアナグラム変換した。……何か中二病的な事をしてしまったが、どうせ多人数プレイはしないので気にしない事にした。自己満足だ自己満足。
『年齢を入力して下さい』
 今度は年齢か。別に今の年齢でもいいか。
『年齢:17歳』
 年齢を入力しながら思うのだが、三ヶ月後には高校三年生になり、本格的な大学受験の勉強が待ち構えている。……高校二年である今のうちに『E.C.S』を遊び倒してしまおう。
『身長、体重、体形を設定して下さい』
 事細かに設定するのは公式サイトで確認済みだが、意外と面倒になって来てしまっている。が、ここで投げ出さない。まだ初めても無いし。でも、小学生の頃にやらなくてよかったって思う。絶対当時だったらこの辺で投げてたと思う。
『身長:171センチメートル 体重:53キログラム   』
 身長、体重、体形は現実のものを。流石に小数点以下は面倒な用で最初から設定出来なかったので小数点以下は四捨五入した。体形は比率を調整して少し痩せ型に。筋肉はあまりなさそうに見えるが、どっちにしろゲームではステータスポイントで強化されていくので問題ない。
『顔の造形を行って下さい』
 次は顔の造形。一応現実の顔に似た部分を合わせて造り上げ、髪の毛の形もなるべく似たものにして見る。髪は少し長くて項を隠し前髪以外を軽く後ろに流す。頭頂部分の髪が少し撥ねる。現実でも俺は寝癖でもないのに同じ個所が撥ねているので、この仕様だ。俗にアホ毛と呼ばれる髪だが、どうしてアホ毛と呼ばれるのか今一分からない。顔は少し幼くて、眼が同年代男子より大きめ。代わりに口と鼻は小さ目で少しだけ副耳。そして頬の肉を気持ち少な目にする。 肌と瞳、髪の色は変更可能であったので、肌は少し白くし、ゲームという事もあって瞳は右は緑、左は橙のオッドアイにする。なんか中二病度合が増してしまった気がするが、気にしない。ゲームくらいは夢を見てもいいだろう。髪は地毛と同じく少しだけ灰色に近い黒にした。銀髪だったりメッシュにしたりはしない。ちょっと違和感を感じるからと言う個人的な見解からだ。 服装は……体系選択時に最初からズボンにシャツ、ジャケットと言う恰好に決められていたので変更は出来ない。 装備選択はこの段階ではまだのようで、次は能力値の割り振りだった。
『能力値を設定して下さい レベル:0 ステータスポイント:24 生命力:0 精神力:0 物理攻撃力:0 物理防御力:0 魔法攻撃力:0 魔法防御力:0 敏捷力:0 運命力:0        』
 ステータスポイントが24あるので、均等に割り振ればどの能力値に対しても三ずつ割り振れる計算だ。
『レベル:0 ステータスポイント:0 生命力:300 精神力:30 物理攻撃力:12 物理防御力:12 魔法攻撃力:12 魔法防御力:12 敏捷力:12 運命力:6       』
 俺は今回新たに追加された六つ目の『ブラッド・オープン』を目指しているので、平均的に割り振ってみた。追加分のか分岐条件が不明で、且つ他の五つが物理と魔法、敏捷の能力値が影響しているので、運命力だけを上げようかとも思ったが、それだと戦えないのでやめた。 ステータスポイント1で上昇する能力値はそれぞれで異なり、生命力は100、精神力は10、運命力が2でその他が4上昇する。これも公式サイトで知っていた事だ。
『以下の設定でよろしいでしょうか? ハードモード 男性 名前:ソウマ=カチカ 年齢:17歳 身長:171センチメートル 体重:53キログラム レベル:0 ステータスポイント:0 生命力:300 精神力:30 物理攻撃力:12 物理防御力:12 魔法攻撃力:12 魔法防御力:12 敏捷力:12 運命力:6           』
 と、最後に今まで入力した設定の確認画面に移った。見直しをして、間違いが無い事を確認する。
『はい ← いいえ 』
 俺は『はい』にカーソルを合わせてボタンを押す。画面が暗くなり、いよいよ待ちに待ったゲームが開始される。 その時だった。 地面が揺れ始め、自分の部屋の電灯の紐がゆらゆらと動く。「地震か?」 それでも揺れが小さいので、このまま放っておいても大丈夫だろうと思った矢先、揺れが勢いを増した。 本棚は本を撒き散らしながら倒れ、勉強机は動き、テレビは落ちた。震度としては五以上は確実だった。 俺は流石に危機感を覚え、携帯ゲーム機を持ったままベッドに敷いてある掛布団と毛布に包まった。勉強机の下に隠れたかったが、動いてしまうので安全とは言えない。なので緩衝材として布団類を選んだ。 地震は十秒経っても鳴りを潜める気配が無い。このままでは家が倒壊するのではないかという心配さえしてくる。我が身も大事だが、棲む家が無くなってしまうのは勘弁だ。実際、去年に起きた記録的な災害を叩き出した大地震で俺の家は半壊してしまったので、倒壊の心配が強い。 と、そんな事を思ってたら。「うおっ!?」 一際デカい揺れが訪れ、俺はベッドの上から転げ落ちた。と言うか、ベッドのスプリングの影響で跳ね飛ばされた。 そして。 ガンッ!「がっ!?」 布団から出てしまった頭――それも額に位置する部分に勉強机の上に置いていた長年愛用している鉛筆削りが落下してきた。しかも角だった。 それを認識したのは机がぶつかった一瞬の時で、その後、未だに揺れる部屋の中央で俺は意識を刈り取られた。

 この時は、死んだと思った。 でも、違ったんだ。 俺は死んでなんかいなかった。 死ぬ代わりに、俺は――――。


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