喚んで、育てて、冒険しよう。
170
「とぅ!」
リースは華麗な二回転半捻りを決めながらよろける事も無く着地。地味に凄い事やってのけるな。ステータスがレベル1相当まで下がっているのに。。
と、いう疑問はさておいてだ。
「やぁ、おはよう! 今朝もいい天気だね!」
一気に直立し輝かんばかりの爽やか笑顔を向けながら、俺と颯希に挨拶をしてくる風騎士リース。
「おはよう。そうだな、いい天気だな」
「お、おはよう……」
俺と颯希は挨拶を返すが、颯希は何やら微妙な顔をしている。リースが苦手……と言う訳ではなく、何か言い掛けたちょうどその時にリースが降って来て言の葉を紡ぐタイミングを逃したからだろう。
「さて、唐突で悪いのだが! オウカくんにナナセさん! 今日のチーム競技の事で作戦の最終確認を取りたいと思っているのだが!」
と、リースがそんな事を言ってくる。俺と颯希、そしてリースはチーム競技で同じチームを組んでいる。ただ、チームワークは悪くはないが良いとも言えない。連携するよりも個々の能力での打破を目的としたチームなので、問題はないのだが。
だからと言って完全にワンマンプレイをしてしまうと勝てる勝負も負ける可能性が高まる競技なので、チーム内での作戦は必要である。
その確認は開会してからの空き時間にでもやればいいかと思ってたが、まぁ、早めにしておいた方が何かと後が楽か。
「俺は大丈夫だ」
「え…………あぁ。大丈夫」
颯希は一瞬何かを言おうとしたが、それを呑み込んで首肯する。
「よしっ! では作戦の最終確認をしようではないかオウカくんにナナセさん!」
その様子に気付いているのか気付いていないのか、リースは何時もの如くニカッと白い歯を見せながらサムズアップをしてくる。
「ではまず、最初の方の動きなのだが……!」
俺と颯希、リースは道の端に寄り、そこで腰を下ろして作戦の最終確認を行う。確認している最中に他にいい案が浮かんできたり、それを交えて更に作戦の内容を膨らませたりもした。
そんなこんな話しているうちに、もう朝の七時を回った。
「いやはや、朝も早くからすまないな!」
「いや、別に」
「……私も、必要な事だし。早めに確認取れてよかった」
取り敢えず話はまとまった。あとは本番で各々が役割を果たすように動けばいいだけ。
で、俺はコテージに戻らねば。カゲミには朝食までには戻ると言っていたので、そろそろ戻らないと朝食に間に合わなくなる。
「じゃあ、俺はもう戻る」
「あ、じゃあ私も」
颯希もコテージに戻ろうと動き出す。
「では私も戻るとしよう!」
そしてリースも共に動き出す。三人横並びになりながらコテージのある方へと歩く。
その間、会話はしていない。颯希は先程言い掛けた事を口にするかと思ったが、それもなし。リースもうるさいくらいの声で何か話題でも振ってくるかと身構えたが、珍しい事に黙ったまま歩いている。
人によってはこの沈黙が苦痛に思えるのだろうが、俺は特に気にしていない。リースの方も気にしていないように見える。対して颯希は表面上は気にしている素振りは見せていないが、何処となく所在なさげでいるような感じがする。
特に誰も声を投げ掛ける事なく、俺達はコテージに到着した。流石に七時を回ったので、他のプレイヤーやパートナー達の姿が多く見受けられるようになった。
「私はあちらなのでな! オウカくん! ナナセさん! また会おう!」
リースは自分が泊まっているコテージの方へと向けて歩き出す。
「じゃあ、俺はこっちだから」
「あっ、ちょっと」
残された俺もルーネ達が待つ方へと向かおうとするが、颯希に呼び止められる。
「何だ?」
「…………」
問うが、颯希は口を一文字に閉じて目を伏せる。暫し待つが颯希は俺を呼び止めた訳を話さない。
「……何もないなら行くぞ」
一向に話そうとしないので、俺はその場を後にしようとする。
「……ちょっと待て」
歩き出した俺に、颯希は先程よりも低い声で俺を呼び止める。
「……何だ?」
「ついて来てくれ」
そう言うと颯希はコテージから離れるように歩き始める。俺は颯希の後に付いて行き、森の中の少し開けた場所へと出る。
そこで立ち止まった颯希はウィンドウを呼び出し、何やら操作を始める。
「桜花」
俺の名を呼ぶと同時に、俺の眼の前にもウィンドウが表示される。
『ナナセからPvPを申し込まれました。
ルール
・1vs1(パートナーモンスター、召喚獣の介入はなし)
・アイテム使用禁止
・魔法使用禁止
・制限時間:無限
・範囲制限:直径十メートル
勝利条件
・最後まで生命力の残ったプレイヤーの勝利(PvPで生命力が0になった場合、死に戻りせずPvP終了後に全回復します)
プレイヤー:ナナセとPvPをしますか?
はい
いいえ 』
颯希からPvPを申し込まれた。
「私と、一度戦ってくれないか?」
「何でだ?」
「私自身の気持ちを整理したいからだ」
そう告げる颯希の瞳には、何かしらの覚悟を決めた色が見受けられる。颯希が今どのような気持ちなのかまでは分からないが、覚悟を決めた相手の申し出を無碍には出来ないな。
「分かった」
俺は『はい』をタップする。
『プレイヤー:ナナセとのPvPを開始します』
俺と颯希は距離を取り互いを見据える。
『Count 3』
颯希は深く呼吸をし、顔を軽く叩く。
『Count 2』
俺は軽く首を回し、軽く息を吐く。
『Count 1』
ほぼ同時に構えを取る。
『Count 0
Start! 』
カウントがゼロになるのと同時に、俺と颯希は相手に向かって駆け出す。
リースは華麗な二回転半捻りを決めながらよろける事も無く着地。地味に凄い事やってのけるな。ステータスがレベル1相当まで下がっているのに。。
と、いう疑問はさておいてだ。
「やぁ、おはよう! 今朝もいい天気だね!」
一気に直立し輝かんばかりの爽やか笑顔を向けながら、俺と颯希に挨拶をしてくる風騎士リース。
「おはよう。そうだな、いい天気だな」
「お、おはよう……」
俺と颯希は挨拶を返すが、颯希は何やら微妙な顔をしている。リースが苦手……と言う訳ではなく、何か言い掛けたちょうどその時にリースが降って来て言の葉を紡ぐタイミングを逃したからだろう。
「さて、唐突で悪いのだが! オウカくんにナナセさん! 今日のチーム競技の事で作戦の最終確認を取りたいと思っているのだが!」
と、リースがそんな事を言ってくる。俺と颯希、そしてリースはチーム競技で同じチームを組んでいる。ただ、チームワークは悪くはないが良いとも言えない。連携するよりも個々の能力での打破を目的としたチームなので、問題はないのだが。
だからと言って完全にワンマンプレイをしてしまうと勝てる勝負も負ける可能性が高まる競技なので、チーム内での作戦は必要である。
その確認は開会してからの空き時間にでもやればいいかと思ってたが、まぁ、早めにしておいた方が何かと後が楽か。
「俺は大丈夫だ」
「え…………あぁ。大丈夫」
颯希は一瞬何かを言おうとしたが、それを呑み込んで首肯する。
「よしっ! では作戦の最終確認をしようではないかオウカくんにナナセさん!」
その様子に気付いているのか気付いていないのか、リースは何時もの如くニカッと白い歯を見せながらサムズアップをしてくる。
「ではまず、最初の方の動きなのだが……!」
俺と颯希、リースは道の端に寄り、そこで腰を下ろして作戦の最終確認を行う。確認している最中に他にいい案が浮かんできたり、それを交えて更に作戦の内容を膨らませたりもした。
そんなこんな話しているうちに、もう朝の七時を回った。
「いやはや、朝も早くからすまないな!」
「いや、別に」
「……私も、必要な事だし。早めに確認取れてよかった」
取り敢えず話はまとまった。あとは本番で各々が役割を果たすように動けばいいだけ。
で、俺はコテージに戻らねば。カゲミには朝食までには戻ると言っていたので、そろそろ戻らないと朝食に間に合わなくなる。
「じゃあ、俺はもう戻る」
「あ、じゃあ私も」
颯希もコテージに戻ろうと動き出す。
「では私も戻るとしよう!」
そしてリースも共に動き出す。三人横並びになりながらコテージのある方へと歩く。
その間、会話はしていない。颯希は先程言い掛けた事を口にするかと思ったが、それもなし。リースもうるさいくらいの声で何か話題でも振ってくるかと身構えたが、珍しい事に黙ったまま歩いている。
人によってはこの沈黙が苦痛に思えるのだろうが、俺は特に気にしていない。リースの方も気にしていないように見える。対して颯希は表面上は気にしている素振りは見せていないが、何処となく所在なさげでいるような感じがする。
特に誰も声を投げ掛ける事なく、俺達はコテージに到着した。流石に七時を回ったので、他のプレイヤーやパートナー達の姿が多く見受けられるようになった。
「私はあちらなのでな! オウカくん! ナナセさん! また会おう!」
リースは自分が泊まっているコテージの方へと向けて歩き出す。
「じゃあ、俺はこっちだから」
「あっ、ちょっと」
残された俺もルーネ達が待つ方へと向かおうとするが、颯希に呼び止められる。
「何だ?」
「…………」
問うが、颯希は口を一文字に閉じて目を伏せる。暫し待つが颯希は俺を呼び止めた訳を話さない。
「……何もないなら行くぞ」
一向に話そうとしないので、俺はその場を後にしようとする。
「……ちょっと待て」
歩き出した俺に、颯希は先程よりも低い声で俺を呼び止める。
「……何だ?」
「ついて来てくれ」
そう言うと颯希はコテージから離れるように歩き始める。俺は颯希の後に付いて行き、森の中の少し開けた場所へと出る。
そこで立ち止まった颯希はウィンドウを呼び出し、何やら操作を始める。
「桜花」
俺の名を呼ぶと同時に、俺の眼の前にもウィンドウが表示される。
『ナナセからPvPを申し込まれました。
ルール
・1vs1(パートナーモンスター、召喚獣の介入はなし)
・アイテム使用禁止
・魔法使用禁止
・制限時間:無限
・範囲制限:直径十メートル
勝利条件
・最後まで生命力の残ったプレイヤーの勝利(PvPで生命力が0になった場合、死に戻りせずPvP終了後に全回復します)
プレイヤー:ナナセとPvPをしますか?
はい
いいえ 』
颯希からPvPを申し込まれた。
「私と、一度戦ってくれないか?」
「何でだ?」
「私自身の気持ちを整理したいからだ」
そう告げる颯希の瞳には、何かしらの覚悟を決めた色が見受けられる。颯希が今どのような気持ちなのかまでは分からないが、覚悟を決めた相手の申し出を無碍には出来ないな。
「分かった」
俺は『はい』をタップする。
『プレイヤー:ナナセとのPvPを開始します』
俺と颯希は距離を取り互いを見据える。
『Count 3』
颯希は深く呼吸をし、顔を軽く叩く。
『Count 2』
俺は軽く首を回し、軽く息を吐く。
『Count 1』
ほぼ同時に構えを取る。
『Count 0
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カウントがゼロになるのと同時に、俺と颯希は相手に向かって駆け出す。
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