喚んで、育てて、冒険しよう。
168
「……そうか、桜花もSTOをやっていたのか」
暫し俺の顔を見詰め、颯希はそう呟く。
俺としても、まさか颯希がSTOをやっていたとは思わなんだ。まぁ、可能性としてはない訳ではない。もしかしたらお互い気付かないままプレイしていたかもしれない。が、生憎とお互いにリアルの顔立ちでやっていたので直ぐに分かってしまった。
「とぅ!」
変な沈黙が流れようとした時、上空からリースが掛け声と共にアメコミのヒーローみたいに降り立つ。その横をフートルが追従し、デカいトルドラゴが舞い降りてきた。
「はっはっは! やぁオウカ君にサクラさん、そしてアケビさん! 久しぶりだねっ!」
「とるっ!」
「ぎゃぎゃう!」
何時ものように張り上げた声で、キラッと歯を光らせた笑みを浮かべながら俺達に挨拶をしてくる風騎士。それに続いてフートルとトルドラゴも挨拶してくる。
因みにリースは半袖半ズボン姿で、肩に長袖のジャージをマントのように羽織っている。そう言う風にも装備出来るのか。と言うか、あんな風に上から降りて来たのに長袖ジャージ落ちないな。まるで縫い付けてあるかのようだ。まぁ、それもゲームだからの一言で片が付いてしまうのだが。
「そしてナナセさんとリリィさんも久しぶりだな!」
「とるっ!」
「ぎゃぎゃう!」
で、続いてリース達は颯希とサクラに向かって土下座している変態コート女にも挨拶をしていた。
「あ、あぁ久しぶり」
颯希……STOではどうやらナナセとしてるらしい、はリースに挨拶を返しつつ、土下座してる変態コート女に視線を移す。変態コート女は挨拶を返さず、不動のまま。
「うむ!? リリィさんは土下座をして……あぁ、成程成程!」
リースは頭に疑問符を浮かべたが、即座に状況を理解したらしく疑問符を打ち消し、手をぽんと鳴らす。
そして土下座しているリリィを難なく肩に担ぎ上げる。
「ナナセさん、ちょっとこちらへ!」
「あ、うん……」
リースは空いてる方の手でナナセを手招きする。
「ではまた会おうっ!」
俺達に向けて手をビシッと掲げ、ナナセと変態コート女を伴って明後日の方へと足早に去って行った。
これは……気を遣ってくれたって事か?
風騎士リース、風を操るからか、場の空気を読むのが上手いらしい。だが、元々はリースの大声で居場所がばれてしまったのだが。
「……え、えっと」
「大丈夫、嵐は去った」
俺の後ろに隠れていたサクラはおずおずと出て来て、リース達が去って行った方へと目を向け、アケビはサクラを安心させるように優しく頭を撫でていた。
「みー……」
「れにー……」
ルーネやファフィー達もサクラを心配し、身体を擦りつけている。
「まさか……あの野郎と同じ組になるとはな」
俺は思わず溜息を吐く。まさか、あの変態コート女もこのイベントに参加していたとはな……しかも、あれとパーティーを組んでいたのがまさか颯希だったとは思いもよらなんだ。
「ねぇ、オウカ」
「ん?」
「あのリリィと一緒にいたプレイヤーって、オウカの知り合い?」
「あー……」
そう言えば、アケビとサクラには颯希とは知り合いだと言うのを言っていなかったな。とは言っても、STO内での知り合った訳でもなく、現実世界での知り合いだから話さなくてもよかったので話さなかっただけなのだが。
「まぁ、知り合いだ。だが、あれとパーティー組んでるとは思わなかった」
颯希がSTOをやっている事にも驚いたが、それはまだ可能性のあった話だ。まさかあの変態コート女とパーティーを組んでいた事が予想外だ。
必然、颯希と顔を合わせるような事になれば、変態コート女とも顔を合わせる羽目になる。それだけは難とか避けたいものだ。
幸い今回は気を利かせてくれたリースがあれを運んでくれたが、そんな事は実際は稀だろう。出くわしたらまたこちらに駆け寄って来るに違いない。
イベント開始早々、頭が痛くなる。
「オウカさん、大丈夫ですか?」
未だにパートナーモンスター達に身体を擦りつけられているサクラが心配そうに俺の顔を覗き込んで来る。どうやら顔に出てしまっていたらしい。
「大丈夫だ。それよりもサクラは大丈夫か?」
「僕は、大丈夫です……」
そうは言っているが、若干顔が強張っているな。それと、顔色も少し青く見えるな。
「取り敢えず、これ食って落ち着け」
俺はメニューを開いて、こういう時はくどくない優しい甘味を食べれば落ち着くだろうと【ハビニーハニークッキー】を取り出してサクラに渡す、
「あ、はい」
サクラは静々と受け取ると、少しずつ齧って食べていく。食べ進めていく内に顔色が戻って行く。
「すまないが、ちょっといいかな?」
「ん?」
ふと、横から野太い声を掛けられる。声を掛けてきた人物は初めて見る顔で、燃えるような紅い短髪にがっちりとした体躯の見た目二十代後半くらいの男性アバターのプレイヤーだ。
隣りには赤く燃える二足歩行の蜥蜴が腕を組んで立ってる。この蜥蜴、俺よりも背が高く、そして筋肉質だ。尻尾も丸太みたいに太いぞ。
「いきなり話し掛けてすまない。実は複数のパーティーの代表とソロプレイヤーが集まって、紹介がてらどの競技に誰が出場するかの話し合いをしようという流れになってな。出来れば君達の代表に来て貰いたいんだが……来て貰っても大丈夫だろうか? 今無理ならもう少し時間を空けてから行うようにするが」
男はそう言いながらリースが去って行った方を横目でちらちらと見る。どうやら先程の騒動を目撃していたらしい。そして、俺達の現状を見て気を遣ってくれている。
さて、どうしたものかと俺はアケビに目配せをする。
「行って来て大丈夫。私がついてるから」
アケビは頷き、サクラの肩を優しく抱き寄せる。
「分かった。今からでも問題ない」
「そうか、すまないな」
「気にするな」
「では、付いて来てくれ」
俺はサクラのケアをアケビ達に任せ、男の跡に付いて行く。
「……そうか、桜花もSTOをやっていたのか」
暫し俺の顔を見詰め、颯希はそう呟く。
俺としても、まさか颯希がSTOをやっていたとは思わなんだ。まぁ、可能性としてはない訳ではない。もしかしたらお互い気付かないままプレイしていたかもしれない。が、生憎とお互いにリアルの顔立ちでやっていたので直ぐに分かってしまった。
「とぅ!」
変な沈黙が流れようとした時、上空からリースが掛け声と共にアメコミのヒーローみたいに降り立つ。その横をフートルが追従し、デカいトルドラゴが舞い降りてきた。
「はっはっは! やぁオウカ君にサクラさん、そしてアケビさん! 久しぶりだねっ!」
「とるっ!」
「ぎゃぎゃう!」
何時ものように張り上げた声で、キラッと歯を光らせた笑みを浮かべながら俺達に挨拶をしてくる風騎士。それに続いてフートルとトルドラゴも挨拶してくる。
因みにリースは半袖半ズボン姿で、肩に長袖のジャージをマントのように羽織っている。そう言う風にも装備出来るのか。と言うか、あんな風に上から降りて来たのに長袖ジャージ落ちないな。まるで縫い付けてあるかのようだ。まぁ、それもゲームだからの一言で片が付いてしまうのだが。
「そしてナナセさんとリリィさんも久しぶりだな!」
「とるっ!」
「ぎゃぎゃう!」
で、続いてリース達は颯希とサクラに向かって土下座している変態コート女にも挨拶をしていた。
「あ、あぁ久しぶり」
颯希……STOではどうやらナナセとしてるらしい、はリースに挨拶を返しつつ、土下座してる変態コート女に視線を移す。変態コート女は挨拶を返さず、不動のまま。
「うむ!? リリィさんは土下座をして……あぁ、成程成程!」
リースは頭に疑問符を浮かべたが、即座に状況を理解したらしく疑問符を打ち消し、手をぽんと鳴らす。
そして土下座しているリリィを難なく肩に担ぎ上げる。
「ナナセさん、ちょっとこちらへ!」
「あ、うん……」
リースは空いてる方の手でナナセを手招きする。
「ではまた会おうっ!」
俺達に向けて手をビシッと掲げ、ナナセと変態コート女を伴って明後日の方へと足早に去って行った。
これは……気を遣ってくれたって事か?
風騎士リース、風を操るからか、場の空気を読むのが上手いらしい。だが、元々はリースの大声で居場所がばれてしまったのだが。
「……え、えっと」
「大丈夫、嵐は去った」
俺の後ろに隠れていたサクラはおずおずと出て来て、リース達が去って行った方へと目を向け、アケビはサクラを安心させるように優しく頭を撫でていた。
「みー……」
「れにー……」
ルーネやファフィー達もサクラを心配し、身体を擦りつけている。
「まさか……あの野郎と同じ組になるとはな」
俺は思わず溜息を吐く。まさか、あの変態コート女もこのイベントに参加していたとはな……しかも、あれとパーティーを組んでいたのがまさか颯希だったとは思いもよらなんだ。
「ねぇ、オウカ」
「ん?」
「あのリリィと一緒にいたプレイヤーって、オウカの知り合い?」
「あー……」
そう言えば、アケビとサクラには颯希とは知り合いだと言うのを言っていなかったな。とは言っても、STO内での知り合った訳でもなく、現実世界での知り合いだから話さなくてもよかったので話さなかっただけなのだが。
「まぁ、知り合いだ。だが、あれとパーティー組んでるとは思わなかった」
颯希がSTOをやっている事にも驚いたが、それはまだ可能性のあった話だ。まさかあの変態コート女とパーティーを組んでいた事が予想外だ。
必然、颯希と顔を合わせるような事になれば、変態コート女とも顔を合わせる羽目になる。それだけは難とか避けたいものだ。
幸い今回は気を利かせてくれたリースがあれを運んでくれたが、そんな事は実際は稀だろう。出くわしたらまたこちらに駆け寄って来るに違いない。
イベント開始早々、頭が痛くなる。
「オウカさん、大丈夫ですか?」
未だにパートナーモンスター達に身体を擦りつけられているサクラが心配そうに俺の顔を覗き込んで来る。どうやら顔に出てしまっていたらしい。
「大丈夫だ。それよりもサクラは大丈夫か?」
「僕は、大丈夫です……」
そうは言っているが、若干顔が強張っているな。それと、顔色も少し青く見えるな。
「取り敢えず、これ食って落ち着け」
俺はメニューを開いて、こういう時はくどくない優しい甘味を食べれば落ち着くだろうと【ハビニーハニークッキー】を取り出してサクラに渡す、
「あ、はい」
サクラは静々と受け取ると、少しずつ齧って食べていく。食べ進めていく内に顔色が戻って行く。
「すまないが、ちょっといいかな?」
「ん?」
ふと、横から野太い声を掛けられる。声を掛けてきた人物は初めて見る顔で、燃えるような紅い短髪にがっちりとした体躯の見た目二十代後半くらいの男性アバターのプレイヤーだ。
隣りには赤く燃える二足歩行の蜥蜴が腕を組んで立ってる。この蜥蜴、俺よりも背が高く、そして筋肉質だ。尻尾も丸太みたいに太いぞ。
「いきなり話し掛けてすまない。実は複数のパーティーの代表とソロプレイヤーが集まって、紹介がてらどの競技に誰が出場するかの話し合いをしようという流れになってな。出来れば君達の代表に来て貰いたいんだが……来て貰っても大丈夫だろうか? 今無理ならもう少し時間を空けてから行うようにするが」
男はそう言いながらリースが去って行った方を横目でちらちらと見る。どうやら先程の騒動を目撃していたらしい。そして、俺達の現状を見て気を遣ってくれている。
さて、どうしたものかと俺はアケビに目配せをする。
「行って来て大丈夫。私がついてるから」
アケビは頷き、サクラの肩を優しく抱き寄せる。
「分かった。今からでも問題ない」
「そうか、すまないな」
「気にするな」
「では、付いて来てくれ」
俺はサクラのケアをアケビ達に任せ、男の跡に付いて行く。
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