複垢調査官 飛騨亜礼

坂崎文明

クリムゾンソード、ドローンマスター

「ワトソン、あのウサギのナノマシンを操れるか?」

「もちろん!」

「じゃ、少しの間、抑えておいてくれ」

「それだけ? いろいろとできるんですけど…」

「いや、それだけいい。すぐ終わるから」

 言うやいなや、真田幸村は聖刀<真田丸>を一閃した。
 ウサギ耳少女は念動力サイコキネシスを封じられて、文字通り手も足も出ずに身体を両断された。

「何か、言い残すことはないか?」

 幸村はウサギ耳少女に最後の情けをかけた。
 上半身だけになったウサギ耳少女は事切こときれる寸前だった。

「………これを渡し…」

 幸村の機体の右手にピンクのボールのようなものが手渡された。
 ウサギ耳少女が最後ににやりと笑った。

「幸村さん、それは!」

 幸村はとっさにピンクのボールを空に向かって投げ捨てる。
 ボールは派手な閃光を放って空中で爆発した。

「幸村さん、ちょっと人が良すぎではないですか?」

「武士の情けというやつだよ」

 真田幸村らしい答えだった。



    †



 一方、石田三成の<ニンジャハインド ドローンマスター>は鳥型<AIヒューマン>に苦戦していた。
 鳥型<AIヒューマン>のドローン爆弾が三成の羽根型ドローンを徐々に圧倒しはじめていた。

(三成さん、援護射撃しましょうか?)

 衛星軌道上の遊星<クルド>から月読真奈つくよみまなの通信が入る。

(うん、それは助かるけど、ドローン爆弾を掃討して欲しい)

(リョーカイです)

 衛星軌道上からホーミングレーザーの精密射撃で鳥型<AIヒューマン>のドローン爆弾が駆逐されていく。 
 しかし、これでは三成が戦ってるのか、月読真奈が戦ってるのか全く分からなくなってしまう。
 三成さんらしいなとメガネ君は思う。
 そもそも三成に自分ひとりの力で勝つという発想がない。
 当然、幸村がいつ頃帰ってくるのかも計算に入れてるだろう。

 突然、鳥型<AIヒューマン>が両断された。
 錐揉きりもみしながら地表に向かって墜落していく。
 案の定、真田幸村の聖刀<真田丸>による斬撃である。
 真紅の機体が空中に浮遊している。
 おそらく、ナノマシンを利用した空中浮遊能力だと思われた。

(三成、大丈夫か?)

(何とか持たせたよ。そちらは?)

(まあ、ワトソンのお陰で何とか勝てた)
 
 意外と謙虚な幸村である。

(北朝鮮のミサイルは?)

 三成は気になっていることを訊く。

(私の方で遠隔操作して日本海に落としました) 

 月読真奈の方で処理してくれたらしい。
 戦闘しながらそんなことしていたようだ。
 メガネ君はちょっと感心した。

(とりあえず、島根に向かいますか)

 三成のひとことで幸村の機体がボトムキャリアーに帰還してきた。
 三成の機体もキャリアーに帰還して格納された。
 あとは島根までの旅を楽しむだけだ。
 メガネ君はハンドルを握りなおした。

 

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