安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚

坂崎文明

最強のふたり

「まあ、かわいい女の子が来たわね」

 魔導師アリス・テスラは黒いフードの奥からまるで月読波奈が見えるかのようにつぶやいた。
 波奈の乗る式鬼<銀鋼シロガネ ゼロ>が上昇していき、魔導師アリス・テスラと対峙する。

「五色龍の術! 炎龍召喚!」

 いきなり、神沢優の黄金の瞳が輝き、魔導師アリス・テスラに炎龍が襲いかかった。

雪嵐の盾ブリーザードガード!」

 魔導師アリス・テスラは雪嵐の盾を召喚し、炎龍を防御する。
 が、炎龍は雪嵐の盾をすり抜けて、魔導師アリス・テスラの黒フードを焼き払った。
 月読波奈の<時空眼>との合わせ技で、敵の防御を無効化したのだ。
 
「まさか! お前は!」
 
 メガネは驚愕の声を上げた。
 焼き払われた黒フードの下から白銀の装甲服のかわいこちゃんが現れたのだ。
 しかも、金髪碧眼の美少女だった。
 腰には黄金の鞘に収められた大剣が見える。

「何か文句あるの?」

 魔導師アリス・テスラはメガネを睨みつけた。

「───ジャンヌ・ダルクとか?」

「だから、アリス・テスラと言ってるでしょう!」

「すいません」

 メガネはうなだれた。
 むしろ、その突っ込みは当然であろう。

「それにしても、なかなかのコンビネーションね。ちょっと見直したわ」

 アリス・テスラはメガネを無視して、神沢優、月読波奈のふたりを見つめた。

「あなたも、相当、やるようね」

 神沢優は厄介な相手だと思い、凄い勢いで頭脳を回転させていた。
 相手が使った術の正体が全く分からなかったからだ。
 月読波奈は無言で銀色の双眸を輝かせていた。

「さて、そろそろ、雑魚は消えてもらおうかしら」

 アリス・ステラは左手の指でプラズマ球体をもて遊び始めた。
 誰を生け贄にするか、考えあぐねてる魔女の瞳はエメラルドの光を放ちはじめた。

「やっぱり、あなたから消えてもらうわ」

 アリス・ステラはメガネを馬鹿にするように嘲笑うと、プラズマ球体を巨大化させた。

 メガネを護ろうとして、<ボトムストライカー>隊全機、神沢優、月読波奈も立ち塞がる。

「仲がいいわね。それならみんなまとめて消えなさい!」

 <ボトムストライカー>隊全機を包み込むような巨大なプラズマ球体をアリス・ステラは左手から放った。
 
 神沢優は水龍を召喚して、ブラズマの球体の速度を緩める。
 雷は陰陽五行では木行に当たり、水に弱いからだ。

 そこに、月読波奈が<時空眼>を重ねて、球体をどこかに飛ばしてしまった。

 だが、アリス・ステラはその球体の後ろにもうひとつの小さな球体を隠していて、それがメガネたちに襲いかかった。

 だが、それも水龍剣の水龍により辛くも防御された。

 逆に、迷彩装甲ステルスで近づいていた夜桜機から放たれた<雷神斬>により足元から突き上げられて回避していた。

 そこにハネケの聖刀<オリハルコン>が炸裂して、半透明な防御シールドが浮かび上がった。
 いつのまにか復活したようだ。

(なかなか、手強い敵だな。だか、メガネたちも負けてはいない)

 信長が戦況を見極めていた。

(ですが、押され気味なのも確か。さっきの<時空魔法>を使われると厄介です)

 清明も<ブラックナイト>から<ボトムスストライカー>隊を転移させた<時空魔法>を気にしているようだった。
 しかも、<ブラックナイト>はアリス・ステラに戦いを任せ切って静観していた。

 もしもの時は清明も戦場にでる覚悟はしていた。

(清明殿、何か気がかりなことがあるのかな?)

 信長は清明の気配を感じてるようだった。

(私の予知夢では、ここで重大な決断をすることになります)

(それはどういう?)

(部隊を二手に分けて転移する必要があるかもしれません)

(やはり、天女の舞いの術式が解明できないか?)

(そうです。信長さまも気づいてましたか)

(まあ、舞いは好きでな。少しは知っている) 

(やはり、柿本人麻呂、猿丸丈夫に会う必要があります)

(ならば、清明殿は飛鳥に行く必要があるな)

(わしはこの時代で踏ん張ればよいのか?)

(かなりつらい戦いになります)

(わしはすでに死んだ身、余生だと思って楽しませてもらおう)

(ひかり姫と波奈殿は連れてゆけ。こちらは現地調達でなんとかなる)

(陰陽道、道術のマジックアイテムを置いて行きます)

(それは助かる)

 信長はいたずらっ子のように笑った。

 最近、何か吹っ切れたのか、伸びやかで朗らかな波動をまとうようになっている。
 この方ならやり遂げてくれると思い、清明は重大な決断を下そうとしていた。

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