悠くんと純伶ちゃん

王帝月ノ宮

約束と、血の涙

小学4年生になった俺は、現在4年1部の1人だが、クラスの中で対立が起きている。
男子4人(俺含め)と女子全員+先生でだ。
向こうは先生を擁しているため、向こうが正しいとされてしまう。
例えば、『鉄馬』と呼ばれる竹馬の鉄バージョンを女子がわざと倒して、男子の頭にぶつけ、頭蓋骨にヒビを入れる大怪我をさせても、怒られるのは男子。
女子が窓ガラスを割っても、怒られるのは男子。
そんな理不尽なことが続いていたある日、女子は、やっちゃいけないことをした。
当時俺は、食物アレルギーを持っており、麦ご飯が給食で出るので、毎朝家で炊いた白米を持っていき給食室に出す。また、うどんやスパゲッティの日は、母が探して買ってきてくれた米粉で作られた麺を持っていく。だが、今日は主食がパンなので、母がいつも以上に早起きして作ってくれたパン(以下母パン)を持っていく。いつもは、学校に着いてすぐに給食室へ出しに行くのだが、今日はお腹の調子が悪く、学校に着いたら、自分の席に荷物を置いてトイレに行った。
そこで、事件が起きた。
トイレから戻ってきたら、机の上に置いといた母パンと、母パンやら水筒やらを入れていた袋が消えていた。
軽く周りを探していると、女子の1人が
「何かゴミ箱に落ちてるよ~ww」
と、俺とは離れたところにいるのに聞こえるように言ってきた。
俺は嫌な予感がして、ゴミ箱を覗いた。
そこには、ご丁寧にサランラップを剥いだ母パンや、忙しい仕事の合間をぬって買ってくれた水筒や、挙げ句の果てに純伶ちゃんにもらった手帳やナフキンが無残にも捨てられていた。
俺のなかで、何かが切れる音がした。
だが、それを理性で押さえ込もうとしていると、男子の1人が、
「女子がそれ捨ててて、止めたのに聞かなくて、ごめん。」
と謝ってきた。
その瞬間、目の下から頬にかけて、熱いものを感じた。
俺は、
「母さん、純伶ちゃん、ごめん、約束、守れそうにないや。」
そう呟いて、俺の理性が音をたてて飛んだ気がした。

目を覚ますと、保健室にいた。
養護教諭の上條先生(以下順ちゃん)が、俺の頬や目元を濡らしたガーゼで拭いていた。
「順ちゃん?」
「おはよう。少しは落ち着いた?」
順ちゃんは、そういってはにかむと、また俺の顔を吹き始めた。
すると、廊下で待機していたであろう仲間たちが保健室になだれ込んできた。
「ゆうと!」
と1人が叫び、他の者たちは安堵の息を漏らした。
「何があったんだ?」
俺がそう聞くと、1人が淡々と語りだした。

俺の理性が音をたてて飛んだ気がした。
俺は、すぐ後ろで笑っていた女子の胸ぐらを掴み、投げた。
その女子は、突然のことで何が起きたか分からないという表情をしていた。
しかし、周りの女子たちは隠していたと思われる細い角材やら何やらを取り出した。
「お前ら、下がっとけ。」
俺はそういうと、構えを作った。
その瞬間、女子たちが襲いかかってきた。
「」
俺は無言で角材を弾き飛ばしながら、女子たちをなぎ倒していく。
その時、俺は血の涙を流し、薄ら笑いを浮かべていた、らしい。
「キエロ!キエロ!キエロ!キエロ!キエロ!」
叫びながら女子たちをなぎ倒していく。
少しして、担任が刺又を持って、教室へ入ってくると、その顔が怒りに震えていた。
だって、俺が一人で武器持ち女子16人を倒したから。
先生は刺又を振りかざして、襲いかかってきた。
「ジャマダ!キエロ!」
俺はそう叫び、刺又をかわして、先生の顔面に重い一撃を打ち込んだ。
先生が倒れると、俺はみんなの方を向いて、ぶっ倒れた。
それを、保健室まで運んできてくれたらしい。
「ありがとな。」
その先生は、鼻の骨を折っており、しばらく休業することになった。

「ってことがあったんだ。」
「昔は結構やんちゃしてたんだね。」
彼女はそういってはにかむ。
「でも、君の血の涙は見てみたいな。」
「簡単にはでないから難しいかな。」
「だよね。」
少し拗ねた感じを出しながら、彼女は爪先をいじる。
「でも、見せられる時が来るかもしれない。来るかは分からないけど。」
俺はそういって彼女の頭を撫でる。
「じゃあ、見せられる時が来たら見せてね。約束だよ?」
「ああ、約束だ。」
彼女との話は、まだまだ続きます。

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