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狼の野郎

ひとりぼっちの作戦2


この子はどこまで優しいんだろうか…自分の身を犠牲にしてまで俺が怪我をしないようにとこちらに笑顔を向けてくる子だ多分だがいや十中八九この子は手を貸してくれるだろう

「あの……貴方の名前を聞いてもいいですか?私を助けてくれたのでお名前でも……」

「時雨って言うんだが君の名前も教えて欲しいんだけど良いかな?」

「私はユキです、時雨さん、本当に助けてくださってありがとうございます」

ユキは深々と頭を下げた

「いやいや、本当にいいからそれに俺のことは時雨でいいよ....そうだな、じゃあ色々と教えて欲しい事があるから、それをお礼として貰っていいかな?」

「はい、喜んで」

ユキは笑顔でそれに応じた、予想どうり、手を貸してくれたありがたや、ありがたや


「それじゃあ、まず一つ、この世界の知性がある生物ってどんなのがいるんだ?」

「……?えーとですね、この世界は亜人と人間に別れてますよ?」

まぁそうだよな、相手からすれば一般常識を聞かれたらそりゃあ疑問に思うだろうな……俺だって車を指さしてあれは何ですかって聞かれたら少しは困惑するよな

「疑問に思うだろうけど俺が聞いた事を答えてくれるだけで良いから」

時雨は相手を怯えさせないようにできる限り明るい声を出した

「わかりました、それじゃあ、亜人といっても人間みたいに一種類ではなく人間ではない知性を持った生物を一括りにして亜人と呼んでいます」

「亜人はどんな奴がいるんだ?」

情報さえあればこの世界で少しでも優位に立てるだろう、だったら今必要な情報を引き出しておこう

「そうですね……森妖精に獣人、土妖精、鬼人、夜人、水妖精、火妖精、天人とかとかですね」

「とかってまだいるのか?」

「まだいますが後は少数種族、あまり関わり合いがない種族じゃないですかね?」

近くにある薪を拾いながら次の質問を時雨は投げかける

「君は今何語を話してるんだ?」

「私は人語を話していますよ?……もしかして…あなた記憶が吹き飛んでいるんですか?」

どう答えるべきか…記憶を失っているって答えたほうが後々…楽か?楽なのか?楽だな

「そうなんだ、名前は憶えているんだそれと最近の記憶しかないんだだから色々と教えてもらわないといけないんだ、ごめんな」

時雨は演じた、記憶を失っているように見せるために、自分が記憶を失ったらこうするのだろうなと思い描きながら

「いえいえ、頭をあげてください、私が一から教えますから」

ユキはこちらに寄ってきて手を差し出して来る

「すまん、助けてくれてありがとうな」

「いえいえ、私は貴方に助けてもらえたのですから……」

有り難い、やはりこの世界の事を知っておかないとまず生きられないし、さっきの村の奴らにも殺さるかもしれないしな……しかも食料も無限にあるわけでもないし

ふわふわと時雨の周りからわずかながら甘い香りが漂っていた

今、一瞬だけ微かだけど甘い匂いがしたな…この辺にフルーツでもあるのだろうか?

時雨はユキに少しだけここを離れることを伝え周りを探索し始めたが特に目に留まるわけでもなく、元いた場所に戻ることにした


あれから少し移動に時間をかけながら森の中を警戒しながら進み、進んでいるうちに日が暮れてきた

ここから移動するのは危ないな

薪を空気が適度に入るように調整をしてライターで火をつけて、カロリーメイトなどで食事をすませて、夜を過ごそうとしていた

「ユキ?大丈夫か?少し震えているようだけど」

「えっ、あっ、はい!大丈夫ですよ」

にこやかに笑顔を見せて元気だという風を見せてきた

「本当に大丈夫か?風邪とかだったら大変だからな」

ここに病院があるのかもわからないし、こんなところで風邪を引かれたら結構困る

「時雨さん、話の続きをするんでしたよね?だったら早くしましょ!私をドーンと頼ってください」

どんと胸を叩き任せろという意思を見せていた

「じゃあ…ユキが喋っているのは人語だっけ?」

人語というらしい、日本語とは違うが今現在ユキとコミニュケーションを取れている事から日本語と人語は特に変わらないと思うんだが

「人語は人間だけが使う言葉ですね」

「文章に起こす時は?どんな字を書くんだ?」

ユキは棒を使い地面に書いてくれている、だが俺はそれを読めない、読む事ができない、日本語とはかけ離れていて何が書いてあるのかが理解ができない

「この字がなんて書いてあるのか分かりますか?」

「いいや、分かんないな」

「これが、わかんないか……どうしましょうね」

うーんとユキは唸っている、まぁ文字は諦めるしかない言葉が通じるんだからどうにかはなるだろう

「ユキ、次いいか?人語は後でどうにかするとして」

「そうですか…分かりました次は何ですか?」

「次はだな、君が襲われていた理由と襲っていた相手のことを知りたいんだが、大丈夫か?」

ユキはローブを被っていた奴らに襲われていたんだ、襲われる理由があったからこそ襲われたのだろう、だったらその理由は聞くしかないのだがそれは聞いていい理由なのか、聞かれたくないのかは判断できないからユキに直接聞くしかない

もっとも確実にユキがローブの奴らに殺される理由があるのならば俺はユキを全力で守らなければならない

「………分かりました、そうですねまずは獣人と人間の関係を話しておいたほうがいいかもしれませんね」

「……?獣人がどうして出て来るんだ?」

「ローブを被っていたのは獣人です、それにあそこは獣人の村ですし」

はぁー成る程だからかな?あの木の要塞というか砦をどうやって作ったんだろうか疑問だったんだよな、あの木の棒はただただ地面に突き刺さっていただけだからなぁ、ローブなどで固定するわけでもなくどうやって木を刺したのだろうかと少し考えた事もあったな

まぁだけどそれには獣人に筋力があるっていう事が前提だけど

「なぁユキ少しだけ良いか?疑問なんだが、獣人って人間の何倍くらい筋力があるんだ?」

「えっ、あー分かりませんが人間と獣人とじゃあ比にならない程度の差がありますよ」

……………どういう事だ?わけがわからない?何故?どうしてだ??

「シグレ?大丈夫ですか?」

「あぁ、すまん少しぼーっとしてたわ、続けてくれ」

もしもそうだとしたら何故だ?どうしてそんな事をしたんだ?それにどんなメリットがある?

それからユキは丁寧に時雨にこの世界の常識を教えた、獣人について、人間と他種族の関係など後はこの世界の一般常識、魔法についてや魔術について、魔法と魔術の違いについてや地形についてなどなど……etc

「さ、こんなもんでしょうか」

夜も深くなってきたしと付け加えるユキは寒々と体をさすりながらこれからを時雨に問う

「これからどうするんですか?」

どうする?そんな事はもう決まっている

「俺はこれから人を探さないといけないんだ」

ユキは成る程と何か理解をしたらしい

「自分を知っている人を探すんですね、そして探してからその人から自分の記憶を元に戻すんですね!」

んん?と時雨は首を傾げようとしたが、どうしたもか、自分の良い加減なただのアホ発言によって記憶喪失になっている設定という面倒臭い事になっている事に今更気づいた

「あ…ああ、そうだよ、そうそう」

「やっぱり、そうでしたか、だったら私にもそれ手伝わせてくれませんか?私はあなたに助けられました、だから今度は私があなたを助けたいのです」

頼もしい素直にそう思うのだが、引っかかるどうしても分からないな....でも今は人が多いほうがいいだろう俺の戦力なんぞ紙切れに等しいからな

「ああよろしく頼むよ、俺は多分使い物にならないだろうしな.....これからもよろしく頼むよ」

ユキは時雨の返答に頷いた、時雨はこれからを考える...多種族と人間の関係にもよるが多種族が人間と敵対しているのであれば見つからないように行動しながら妹を探さないといけない、それにこの世界にはユキの容姿と比較しても元の世界と同じ容姿をしているが、中身までは分からない

「難易度ベリーハードだなこりゃ」

「?ハード?どういう意味かは分かりませんが、その時雨を知っている人の容姿はわかりますか?」

「ああ忘れることもないよ多分忘れちゃダメな人だ」

「それはどんな人だったなでしょう?」

というかユキと妹がちょくちょく姿が重なる、温かい笑顔がユキと妹で似ているんだ、しかも飲み込まれる最後の笑顔にも似ているから......ユキといるとどしても思い出すことになってくるな......くそ

この気持ちの中では話をつずけることは不可能と判断した時雨は話し合いをやめて体を休めることにした

「だけどもう夜も深いし休むことにしないか?」

ああ多分表情は変わっていないはずだ、泣き顔なんてらしくない、こんなところで泣いてユキを困らせるわけにはいかないしな

「そうですね、もう夜も深いわけですし」

「そうだな、ユキ俺は周りを警戒しておくからねていいぞ」

ユキは首を横に振った、だが時雨は分かっていたどうせこうなるだろうとだが今は一人になる状況が欲しいんだ

「それはできません、私はまだ大丈夫です!だから時雨こそ寝て体を休んでください」

「そうだなこうしよう一人ずつ交代で周りを警戒をするでどうかな?最初はユキに休んでほしいんだ、君はいろいろあって疲れているだろうし」

だからあらかじめ用意をしていた、セリフを口にする、多分これでユキは......

「分かりました、だけどちゃんと起こしてくださいよ」

少し不服そうにユキは承諾するはずだ

ユキは俺が用意した寝袋に少し困惑しながらどう入ろうか悪戦苦闘していたが目を離した時にはいつの間にか寝袋に入りすやすやと寝息を立てていた

「やっぱり疲れていたんじゃないか」

こんなに寝間きに入りすぐに眠りについたのだそれほど疲れていたのだろう

「はあー何で思い出すんだろうね......」


時雨はこの世界に来てから初めての夜を昔あった思い出を思い出しながら警戒をしていた.........

知らない鳥が鳴き、木々のざわめきも聞こえてくる

ああそういえばこんなこともあったな......

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