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彼の心にわたしはいないシリーズ

ノベルバユーザー225269

幸せだったあの頃

「春、こっちにおいで」
春は父親である京四朗に呼ばれ笑顔で近づいた。腕を大きく広げている京四朗にがばっと抱き付いた。
「春は可愛いな~」
親ばか丸出しの京四朗は抱き付いてきた春の体を抱きしめた。そんな光景を見ながら妻である涼子はほほ笑んでいた。
「お母さんお弁当食べたい」「そうね、もうお昼だし食べようか」「やったあ!」「涼子の弁当は美味しいもんな」「うん!お母さんのお弁当大好き!」「ふふ、ありがとう」
この日、三人は近くの山へ紅葉狩りに来ていた。綺麗に紅葉した葉を見て春は興奮気味に紅葉を拾っていた。それがひと段落したころ京四朗に呼ばれたので、涼子にご飯が食べたいと言った。


「う~ん、美味しい!」
春はおにぎりに噛り付き左手でほっぺを押さえつつ言った。二人は春の幸せそうな顔を見て互いにほほ笑みあった。
「春、お父さんにあーんってしてよ」「いいよ。はい、あーん」
かじっていたおにぎりを差し出すと、京四朗はそれにかぶりついた。
「うん、美味しい!涼子お手製のおにぎりを春に食べさせてもらえるなんて二度幸せを味わえた」「また京は調子のいいこと言って」「本当だよ。俺、きっと今一番幸せな人間だよ」「大げさだな~」「だな~」





弁当を食べ終わると、春は両親に手を繋がれ山を下りた。家に帰るまでに商店街を通るので、そこを歩いていると商店街でお店を出している人たちに春は話しかけられる。
「春ちゃん、今日は楽しかった?」「うん!」「そりゃよかった。ほら、コロッケ食べな」
「おっ!春ちゃん、今日は魚の日かい?」「ううん、今日はお肉の日なの」「ありゃりゃ、そりゃ残念。また来てくれよ」
「春ちゃん春ちゃん、このブドウとっても甘いから持っていきなよ」「ありがとう!」「いいんだよ。貰い物だしね!」


「春はモテモテだね」「モテモテ?」「人気者ってことよ」「春、人気者なの?」「そうよ。春は周りの人を幸せにするオーラを持ってるからね」「ほんと?」「ほんとだよ!春は世界一可愛くて、周りの人をいつのまにか虜にしちゃっててお父さんとしては将来が心配だけど」「お嫁にくださいって、複数の人に言われるかもね」「ちょっと涼子、それは勘弁だよ!それでもないお嫁になんて出したくないのに!」「なら婿養子にする?」「そういう問題じゃないでしょ!」
涼子ははははと笑うと、春を抱き上げた。春はまだ五歳だから涼子にも持ち上げられた。
「春いい?イイ男を見分けるコツはね」「うん」「ちょっ!涼子!」「春のことを自分のことのように一生懸命に考えてくれるかどうかよ」「うん?」「悲しいとき辛いときにそばで支えてくれた人は、春のことを絶対に大切に思ってくれてる。そういう人はだいたい下心があるからね!」「そんなこと教えなくていいから!」
京四朗は涼子の話を止めようと必死になっている。
「お母さんにとってお父さんはそういう人だったの?」「そうね、お互い色々問題を抱えていたけどそれを乗り越えたから結婚したし、春も生まれたのよ」「運命の人ってやつ?」「はは、ドラマの見すぎだぞ」「俺は運命の人だって思ったけどな」「・・・私もよ」「涼子!」







「今日は楽しかったな!」「そうね、次はどこに行こうかしらね。春は行きたいところある?」「う~んとね、水族館でしょ。それに動物園、遊園地にも行きたいし。あとはあとは」「はは、春が大きくなるまで時間はたっぷりあるんだから一つずつ行こうな」「じゃあ、今度は水族館がいい!」「お母さんも水族館好きよ。サメとかカッコいいわよね」「春はね、カメが好き!」「あぁカメな。お父さんも好きだぞ。水族館にいるカメって重そうな甲羅を身に着けてるのにどうしてあんなに綺麗に泳げるんだろうって不思議なんだよな」「京って時々、小学生みたいなこと言うわよね」「いいだろ!」「別に悪いって言ってませんけど~」「けど~」「春、まねしなくていいから!」








京四朗と涼子は疲れて寝てしまった春を見つめていた。
「私ね、自分がこんなに幸せな人生を過ごせるなんて思ってなかった」「俺もだよ」「だからね、これが夢じゃないのかって思ってしまうの。いつか覚めてしまうんじゃないかって不安になる」「大丈夫、現実だから。涼子も春もここにいる。これからはうんと幸せになるんだよ、三人で」「ええ、そうね」「春が小学生になって、中学生になって、高校生になって・・・いつかは恋人を連れてきて結婚して子供を産む。それを一緒に見て行こうね」「もちろんよ。春の幸せは私たちの幸せだもの。・・・孫の顔が楽しみね」「楽しみだけど!春が、春が俺のもとからいなくなるなんて・・・」「親ばかも大概にしなさいよ」
バンッと京四朗は背中を叩かれた。少し、いやかなり痛かったがそれすらも幸せだと思えた。やっと手に入れた幸せを二人は噛みしめていた。


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