私の兄はヤンキーです。

ノベルバユーザー225269

私の兄はヤンキーです。



 私の兄はヤンキーです。不良です。気が付けば不良になっていました。黒髪を茶色や金に染めました。今は赤です。 目にはカラコンをつけています。それも茶色になったり青になったり、緑になったり。様々です。最近はもっぱら赤を付けているみたいです。 結構な頻度で髪の色やカラコンを変えます。謎です。 先ほども言いましたが私の兄はヤンキーです。不良です。ちなみに父も元ヤンキーで、母も元レディースです。不良一家です、うちは。 けれどそんな家の中で私だけは不良少女にならずに育ちました。それは兄の影響です。決して良い影響ではありません。 私と兄は二つほど年が離れています。小さいころは周りからも「仲いいね~」と言われるくらいに兄とは仲良しでした。私がこけたらおんぶをして家まで帰ってくれたり。泣いていたから私の傍にいて泣き止むまで手を握ってくれていました。 しかし次第に兄は私に対して冷たくあたるようになりました。 
 一番印象的なのは、私が小学三年生の時に用事があって兄の教室に行った時のことです。兄はクラスメイトが見ている中、私を突き飛ばし「舞子のこと何て好きなわけないだろ!」と言い放ったのです。 あ、舞子というのは私の名前です。前橋舞子。ちなみに兄の名前は前橋博史です。 それから兄は私を避けはじめ、いつしか私の名前を呼ぶこともなくなりました。たまに話をするときでも、兄は私にブサイクだの気持ち悪いだの散々な口ぶりです。 もちろん最初は哀しかったけれど、次第に慣れました。中学生になった兄は夜でも出歩くことが多くなり、私はあの優しかった兄のことを忘れるようになりました。 遠い遠い記憶の彼方に優しかった兄は追いやられていきました。 まぁそれは仕方ないことでしょう。
 兄はたまに家に帰ってくるとき、必ずと言っていいほど人を連れてきます。 だいたいは同じ学校の男友達です。けれど一回だけかなりセクシーな格好をした女の人もいました。 その女性は何を勘違いしたか「あんたみたいなちんちくりんが博史の妹とかありえない。ていうか、博史は私の彼氏なんだからね!博史を独占しないでよね!!」と言ってきました。 いやいやいや独占って、何のことだよ!と思い、「何のことですか?」と聞き返すとまさかのビンタ!ビンタですよ!ビンタ! 兄は私に対してブスだのデブだの色々言われてきましたが、暴力をふるわれたことはありませんでした。だからこの女性のビンタが私にとっての初めての暴力でした。 ぽかんと私がしていると、それを見ていた兄がその女性を部屋から引きずりだして行きました。残っていた人たちは「あ~あ、馬鹿な女だね。博史を怒らせてさ」と笑っていました。 私が「えっ、何で兄が怒るんですか?」と聞くと、すごく残念そうな顔をされた。なぜか、垂れ目の人から頭を撫でられた。背の高い人からは飴を貰った。 そんなことがあってから兄は女の人を家に連れてくることはなくなった。あの女性がどうなったのか私は知らない。兄はそれだけは絶対に教えてくれなかった。

 それにしても兄の周りには喧嘩の強い人も多いですが、それと同時に口の悪い人も多いです。先ほど出てきた垂れ目の人は、(名前は忘れました)何でもとんでもなく女好きらしく女性にはとんでもなく優しいらしいです。でも裏では、その女性の悪口をたくさん言っているらしいです。 そう言えば私も一度聞いたことがあるような気もします。「…子ちゃんを馬鹿にするとかあの女まじありえなくない~?だからさ、そいつと寝た後に背中にマジックで「ブス」って書いちゃった!」というのを聞いたような。 それにしても「…子ちゃん」って誰でしょう。本命がちゃんといるんじゃないですか。今度会った時に「本命の人を大事にしないと駄目ですよ?」と言おうかな。でも会うのはいつになるか分からないし、いいか。 
 あと長身の人(この人も名前忘れました)は、あまり女性が好きじゃないらしく「女と寝るとかありえない」とよく言っています。触れるのも嫌だと言っていました。 あれ?でも私よく長身の人に触れているような気もする。…お茶を出すときか、お菓子を出すときとか…。もしかして顔にも口にも出さないけどあれも嫌なのかな。…今度から気を付けます。 まだ他にもいるけれどここでは割愛します。類は友を呼ぶ、まさにその通りですね。まぁ兄の口の悪さには誰も勝てないような気もしますが。


 そうそう兄はこの辺では有名な不良高校に行っています。一年生の時には、その学校の頂点に君臨したそうです。昔でいう番長です。ちなみに父は昔その高校の番長だったそうです。 毎日のように喧嘩、喧嘩、喧嘩、喧嘩。病院に入院したこともたくさんあります。けれどいつも超人的な回復力をみせます。…恐ろしい。 兄は私が病院へお見舞いに行くといつも「さっさと帰れ。お前が来るところじゃないだろ」と睨みつけながら言います。だから私は兄の荷物を病室に置くとさっさと帰ります。最悪、兄のお仲間さんに荷物を預けます。 行くたびに「帰れ帰れ」言われるので、病室に入らないこともままあります。けれどそういう日に限って兄からメールが来ます。「何で来なかったのか」と。 私はそれを一度読むとパタンと携帯を閉じます。返信はしません。私だって腹が立つことがあります。 私が返信をしないと兄は次の日、私の中学校に現れます。入院中じゃないのか。しかも兄だけでなくお仲間さんたちも一緒です。
「何で返さない」
 主語が抜けていますが、理解できました。
「ごめんね。忘れてた」
 私はそう言うと、兄の隣を通り過ぎようとします。しかし私の腕を兄はぎゅっとつかみます。
「何?」「怒ってるのか」「別に」「怒ってるだろ」「……」「何でだ」
 私は兄の顔を見て、大きなため息をつきました。
「怒ってない。メールを返さなかったのは眠かったから。今から返そうかと思ってたところ。だからはなして」
 最後の方は嘘。返す気はありませんでした。 兄はしばらく私を見つめていたが、何も言わずにその手を放しました。

 こんなやりとりが病院に見舞いに行かなった時、またはメールを返さなかったときに繰り返されます。 中学校側も、あぁまたか、という感じです。最初は警察を呼ぶ勢いでした。そりゃそうですよね。バイクや原付、スクーターに乗ったいかにもヤンキーが、喧嘩とは無縁のこの中学校に来るわけですから。 私は兄が嫌いではないし、ましてや怖いと思ったことはないです。何度か兄の喧嘩を実際に見たこともあります。あぁ痛そうだな、という感想しか持ちませんでした。怖いと思わなかった時点で私も両親の血を受け継いでいるのかもしれません。 兄の戦い方を見ていて思ったのは、あれでは何度も入院するわけ…ということでした。兄は良くも悪くも仲間想いみたいです。それが喧嘩にも時々出てます。兄の怪我の理由はたいていが仲間をかばってのものです。 まぁトップはってるなら仲間を守るのも仕事のうちですかね。

 とまぁ、今まで兄のことを中心に語ってきましたが最後に私の話をしておきます。 先ほど言いましたが私は前橋舞子。中学三年生です。ちなみに中学校は兄の通っていた中学校とは違います。私はあんなに荒れた学校に行く勇気はありませんでした。 私の容姿はいたって普通です。特に目鼻立ちが整っているとか、目を見張るほどの美少女ではありません。本当にどこにでもいるようなモブ顔です。兄はイケメンです。両親も美男美女です。おいどうしてそこから私のような顔が生まれるんだ、というようか顔です。 胸もBカップで、普通。学力・体力ともに平均。人に誇れることといったら歌が上手いことです。これは兄にも負けていないと思っています。 兄は学力・体力もとに良いです。私にないものを兄が全部持っていったみたいです。あ、でも不良要素は私には必要なかったので良かったですが。 話がそれました。私は髪も染めていませんし、カラコンもしていません。セミロングの黒髪に、前髪は友達からもらったカバのピンでとめています。ピンは他にも、ライオン・蛇・象など色々あります。学校に行くときはたいていカバです。生徒指導には引っかかりません。これくらいは容認してくれます。(やったね!) 身長も157㎝と平均くらい。体重も痩せすぎず太すぎず、といったところです。これだけ言えば分かってもらえるでしょう?私がいかに平凡か! ちなみに私が好きなのはマンガです。腐ではありません。健全なマンガが好きです。アクション系やファンタジー系が特に好きです。 今は『カデル』というマンガにはまっています。急に異世界に呼ばれて魔王を倒すために勇者として旅に出るという話です。私はその中でギリスという盗賊が大好きです!最初は主人公の敵だったのに、あることから友情が芽生え仲間になるんです!一度は主人公の代わりに敵陣に単身乗り込み、生死の境をさまよいます。そこで片目を失うという哀しい事件もあります…。けれどギリスは仲間のために立ち上がるのです!!もう主人公よりもカッコいいです!なんですかあのカッコよさ!!まじ男前!こんな人が現実にいたら!!……ってあれ、そういえばギリスの容姿は赤の髪に赤の瞳。……どこかで見たことあるような。…………う~ん、誰だったのでしょう。まぁいいです。それは。
 あ、兄が帰って来たみたいです。2日連続家に帰ってきました。珍しい。今日は3,4,5…うん6人ですね。ではお茶を出さないといけないのでこれで失礼します。

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