【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

最終戦

「リン=フリークス。テルメン陛下に、お目通り願いたい。」
そう発せられたセリフと共に、6人は両手をあげて出てきた。残りの4人は、二人を押さえつけているようだ。
二人には、隷属の首輪が嵌められている。
リンは一歩前に出ると、一人の男が目の前までやってきて臣下の礼を取った「クラウスといいます。テルメン陛下。首謀者二人を捕えてまいりました。我らに寛大なご処置を・・・。」「クラウス殿。二人とは?」「パーティアック教の枢機卿とエスタール・ティロンにございます。」「そうか、二人は僕が処理していいのだな?」「はい。あの者達に我らは騙されていました。」「騙されてか・・・。クラウス殿。貴方の忠誠心は二人には向かっていないのですね?」「忠誠心。最もなお話だと思いますが、我らを飢えさせない者に対して向けるのが忠誠だと思っております。最低限の事が出来ていない二人に忠誠を誓う事は出来ません。」「忠誠心の何たるかを、貴殿とここで議論するつもりはない。解った、貴殿達の生命は保証しよう。二人を置いて、どこへなりと行けばよかろう。」「ありがとうございます。出来ましたら、テルメン王家にお仕えしたく思います。」「僕の所に?」「はい。」「パーティアック教の布教なんてさせないぞ」「構いません。」「改宗させるぞ」「構いません。宗教や主義主張など、生きるための方便です。」「そうか、解った。貴殿達の身柄を預かる。」「ありがとうございます。」
「リン。どうするの?」「あぁアッシュに任せる。眷属ではなく、自然な状態で人が必要な諜報活動も出てくるだろう。それに、死んでも別に心が痛まない人材は貴重だからな。」
「リン。山崎ティロンはどうするの?」
タシアナだ。
「そうだな。僕も有ったら殺してしまいそうだから、隷属の首輪をしたまま。片腕と両足を切り落として、監獄に入れておけばいいだろう。立花を捕縛した後で、お互いに罵倒し合えば面白いだろうからな。」「そうだね。」「僕は、リンに任せるよ。僕も殺してしまいそうだから、暫くは、立花を捕縛する事に集中するよ」「うん。ミル。タシアナ。ありがとう。」
こうして、山崎・西沢・細田の捕縛が完了した。後は、一人立花だけだ。
山崎が立てこもっていた街はすでに荒廃していると言ってもいいくらいになっているので、放棄する事になる。その時に、盗賊たちが棲み着いても困るので、街を破壊していく事にした。城壁を完全に破壊して、建物も全て壊した。そして、最後に赤魔法で街中を浄化するように燃やす事にした。
「ミル。タシアナ。最後のパーティアックに立てこもる奴を捕えに行こう。」
リン達は、一度オルプネ神殿に戻って一休みしてから、パーティアックに向かった。全ての門を閉ざして徹底交戦の構えのようだ。
さっき捕らえた枢機卿を門の前まで連れてこさせて、この場でパーティアック教を辞める様に告げた。やめれば、命だけは取らない。
パーティアックの門の前100m程度の距離だ。出撃してくれば、救えるかも知れないが、出てきたら、そのまま門になだれ込む事になる。射程が長い武器を持ち出しては居るようだが、結界で全て防がれてしまっていて、リン達が居る場所まで届かない。
リン達は、国王が出てくれば、枢機卿は開放すると放送をしている。しかし、一向に出てくる気配はない。それこそ、枢機卿ごと尋問している人間を殺そうとしているようにも思える。
枢機卿への改宗の意思確認は、日に何度もおこなうわけではない。不定期に行われる。それも、改宗を迫るのではなく、パーティアック教の経典の説明をさせて、それらに関して質問をしていくという内容の放送を行っている。リン達もミーシャ達後方に陣を張っている者以外全員が集まっている。それぞれが矛盾点を付いて、同じような質問で違う返事が来たら、その真意を問いただすと言った尋問が続いている。
まずは、人族とは何かから始まっている。パーティアック教では、エルフや獣人は、人族では無いと定義されている。それでは、世代またがりではどうか?1/4ではどうか?1/8ではどうか?1/16ではどうか?そんな事を聞いている。全部に人族ではないと答えると、アッシュが調べてきた現在のパーティアックの何人か居る司祭や枢機卿の中で4世代前にエルフと交わった記憶を持つ者が居たりする。それは、矛盾していないかと詰め寄ったり、文化の事や犯罪を聞いたり、一つ一つ細かく問い詰めていく。どうせ、時間はたっぷりとある。すこしでも答えられなかったり、答えが曖昧だったりしたら、パーティアック教の経典がおかしいのではないかと詰め寄る。今まで、その経典で好き勝手してきた奴らにはふさわしい責めだろう。
昼夜を問わず不定期に行われる尋問で、精神の異常が見られても、最初の事に人族絶対主義を掲げている。獣の様に出来ないと言っている人間が獣と同じようになっていくのは、かなりの動揺を誘う事になる。そして、国王が未だ出てこない事を、パーティアックの国王は、神の代理人となっているので、”パーティアック”神は存在しないのではないかという風聞に繋げる暴論を放送し続けている。
四方向の門で一箇所だけ破壊した門がある。その門から出てくる奴は全て殺すと宣言している。しかし、この門からは一般市民のフリをして逃げ出そうとして貴族や教会関係者が後を絶たない。その者達を一箇所にとらえている。
五日目の朝。捕らえた者が100名を越えたので、尋問している門の前に、それらの者達を全員並べた。そして、街の中に呼びかけた
「これらの者は、パーティアックを見捨てて逃げようとした者達だが、テルメン王家にも必要ない者達で、貴殿の国の貴族や教会関係者を名乗っている。お返しするので、どうぞお引き取り下さい。我らは、今からこの場から2キロ離れます。」
そう言って、首輪でつながれた者達を全員その場において、陣を2キロ後方に下がらせた。
1時間後に、その者達が全員パーティアックの味方だと思っていた連中に殺された。
この事実を持って、「パーティアックは、守るべき者を守らない。貴族も教会も関係なく、自分に都合がいい人間だけが、必要な子供の宗教だ。」と宣伝する事が出来た。
それから、内部に潜入していた眷属たちが、街中に火を放ち始めて、暴動が広がっている。ただ、街から逃げ出す事も出来ない。外には、敵兵が居る状況で、内側も誰が守ってくれる者なのか解らない状況になってしまっていた。
7日目の朝。リン達が居る場所近くの門が降ろされた。
一人の老人がリン達の所に歩いてくる。
「私は、国王の使者です。リン=フリークス様。ウォルシャタ・フォン・アゾレム陛下が一対一での戦いでの決着を望んでおられます。」「リン。そんな話し乗らなくていいよ。わざわざ、リンがでなくても、僕で十分。」「いいよ。ミル。怖くて、自分ひとりで歩けないみたいから、使者をよこしたのだろう?そんな臆病者に僕が負けるわけは無いからね。」「テルメン陛下。どうでしょうか?アゾレム陛下は、貴方との一対一を望んでいます。」「いいよ。その代わり条件はこちらで付けさせてもらうよ。」「私では判断出来ません。陛下に伝えますので、条件の提示をお願いします。」
リンが出した条件はまっとうな物だ。立花アゾレムに優位だと言ってもいい。聞いただけならだが・剣と魔法での勝負とする・死ぬか、気絶したら負け。戦意喪失でも負け・場所は、パーティアック国内・開始時に500m居ないに居ないようにする。・勝者が全ての勝利となる。
2時間後に、受諾する旨の連絡が来た。そして、使者がリンを連れて街の中に入っていく。ミルとタシアナがついていくと主張したが、リンが笑ってそれを静止した。ちょっとピクニックに行ってくるだけだから、気にしないで、それも僕は大丈夫だからね。とだけ告げて中に入っていった。
暫く進むと、宮殿と呼んでも差し支えない建物が見えてきた。「あの中で陛下がお待ちです。」「解ったありがとう。ここまででいい。」「かしこまりました。」「最後に聞いてもいいですか?」「はい。何でしょう。」「貴方の名前と、貴方の立場を教えてください。」「これは失礼致しました。私は、マルセルといいます。前、パーティアック教の司祭をしておりました。」「そうなのですね。マルセル殿は、アゾレム殿の事はどう思われているのですか?」「陛下です。パーティアック様が決められた事に異議を唱える立場にはございません。しかし、出来ましたら、私はこのお役目を終わりましたら、隠居したいと思っております。獣人の孫と一緒に暮らすのが私の夢でございます。」「そう・・・パーティアックでは出来ない事だね。」「はい・・・・。」
リンは、マルセルと握手をしてその場を離れた。そして、まっすぐに絨毯の上を歩いて行く。方向は解っている。玉座の間だろう。
玉座の間に近づくと、異臭がしているのが玉座の間からだとはっきりと解る。正面の扉を大きく開けると、そこには積み上げられた死体。すでに白骨化している物もあるようだ。大人だけではなく、子供や胎児、妊婦さえも見られる。人族からエルフ、獣人関係なく殺されているようだ。それらが放つ死臭と共に、端の方で震えながら入ってきたリンを見ている無数の目がある。性別年齢種族関係なく固まってうずくまっている。そこから放たれる糞尿の臭いや強烈な汗の臭いが混じり合っている。正面の玉座には一人の青年が王冠を頭に載せて座っている。
その周りでは、女たちが煽情的な服装で、お香を炊いている様だ。香だけではなく、多分”薬物”も使っているのだろう。
「神埼ィィィぃ」「おまえは誰だ?」
リンは、正面に座っている青年に話しかける。
「俺は、おまえを殺すぅゥゥゥ」「解った。解った。それで、おまえは誰なのだ!」「俺か?俺は、ウォルシャタ・フォン・アゾレム。この国の国王だ。」「そうか、そうか、国王様なのだね。」「そうだ。だから、おまえはそこで跪け。神埼ィィィぃ」「やだよ。」「何ィィィ。おまえ、俺の言うことが聞けないのかァァァァ」「当たり前だろう。なんで、俺よりも弱い奴の言うことを聞かなきゃならないんだ。おまえ、馬鹿なの?」「馬鹿だとぉォォ。おい。山崎ィィィ。あいつを、うすのろを殺せよォォォォ。西沢ァァァァ。どうした、いいぞ。手加減しないで殺してしまえェェェ。女は、俺がァァァァ使うからなァァァァ」「立花!残念だな。山崎も西沢も細田も三塚も冴木も加藤も川島も森中も橋本もおまえなんかと一緒に居たくないってよ。俺の所に寝返ったぞ!」「何だとォォォォ。あいつらァァァ。殺してやるゥゥゥ。パパに言って山崎ィィィ壊してやるゥゥゥ」
「おいおい。パパかよ。オヤジって呼んでいたよな。あぁカッコつけていたのだね。立花肇坊ちゃんは一人じゃ何も出来ないだろうね。」「何だとォォォォ。神崎ィィィ。おまえさえいなければァァァァ。おまえはいつもォォ」「ヨダレ垂らしながら喋るな!汚い。それよりも、ほら、周りに誰も居ないぞ。俺はここから動かないから、来いよ。弱虫!それとも、パパの権力が効かないと何にも出来ないのか?」「神崎ィィィ。その目だ。その目だ。俺を見下すなァァァ。おまえよりも俺の方がァァァ。俺の方がァァ」「なんだよ。何にも経験してこない坊ちゃまにはわからないだろうな。」「なんだと。おまえごときに俺が負けるわけが無いィィィ」
立花は玉座から立ち上がったが、フラフラの状態になっている。自分ではしっかり堂々と歩いているつもりなのだろう。リンの所まで来て、「動くなよぉォォ。今殺してやるからなァァァ」
大剣をフラフラしながら、おおきく振りかぶって、リンに叩きつける。リンは交わすわけでもなく、結界だけで防ぐ。
「逃げるなァァァ。神崎ィィィ。正々堂々と勝負しろォォォ」「逃げても居ないし、勝負する価値もないな。」
立花が上段に構えた瞬間に、リンは持ってきた刀を一閃した。立花の両手首から上が切り飛ばされて、大剣の重みを感じなくなった身体は、そのまま結界にぶつかるように倒れ込んできた。足元には血の海が出来ている。
「ひぃ!」
立花は、自分の両手首が存在していた場所を見ている。そこからは、とめどなく血が流れている。
「なに、なに、痛い。痛い。痛い。痛い。なに、どうして、ええぇぇ死にたくない。死にたくない。死にたくない。」
リンは、手首の止血だけを行った。
「許して、負けたくない。俺は強い。許して、負けない。死にたくない。助けて、俺は強い。俺はすごい。俺は立花。助けて、」
リンがもう一歩立花に近づこうとした時に『力が欲しいか?』「欲しい。死にたくない。助けて。」『助けてやろう。我のちからを使え!』「解った。俺だけの力。」『そうだ。おまえの力だ!』
リンの目の前で、立花の中に何かが入っていくのが解った。身体の中に何かが入ってから、急に光出した。光が落ち着いてくると、地面に倒れ込むようになっていた立花が立ち上がった。切り落とした手首も治っている。フラフラだった足取りも治っている。
「久しぶりの地上はやはりいいな」「パーティアック!」「ホォよく分かるな。あぁスキル持ちだったな。」「・・・。」「はじめましてかな。ことごとく俺の邪魔をしてくれたな。神崎凛。」「いい加減に終わりにしたかったけど、あんたが目の前に来てくれるとは好都合なのかな?」「ハハハ。面白い事を言う。小僧!人間ごときが俺に勝てるはずがなかろう。」「そうかな?やってみなければわからないだろう?それに、おまえ、今は立花のステータス以上は使えないみたいだからな。丁度いい。おまえを滅ぼせば、この下らないゲームももう終わりなのだろう?」「はっ確かに、ステータスはそうだが、人族として最高値になっている身体だぞ。おまえごとき捻り潰してやる。」「それこそ、思い上がりだね。まぁ真相が解らないまま死ね!パーティアック!」
リンは、刀を持ち替えて、立花パーティアックに切り込む立花パーティアックは、大剣で刀を防いでいる。
「ほら、どうしたさっきの威勢は、そんな力では俺には勝てないぞ」「大丈夫。おまえこそ、どうした。攻撃してこないのか?」
立花パーティアックは、リンの攻撃を凌いでいるが攻撃に移る事が出来ない。ステータスも経験も自分の方が上だと思っている状態で、リンを甘く見ていた。リンは更に攻撃の速度を上げ始める。そして、両手に刀を持ち二刀流で切り刻み始める。
「なっどういう事だ。」「ほら、僕はまだ10%開放していないよ。どうした!これから、神殿の最下層の魔物の方が強いぞ。」「なっ。どうして、なんでだ。俺は、俺は、最強の強奪者。パーティアック。」「だからどうした?僕の方がおまえよりも強いってだけだろう?」「そんなはずない。立花のステータス以上になるはずがない。たかが人族が神を超えるわけがない。」「人族?違うな。」「何?」
リンは更に回転を上げる。立花パーティアックの大剣に刀を当て続ける。剣にほころびができ始める。
「何?神剣がなぜ!」「やはりな。おまえの絶対の自信はそこだったのだろう。だったら、まず、そこを砕く!」
リンは、右手の刀に赤魔法で火をまとい。左手の刀に灰魔法と黒魔法で氷をまとう。両方の刀で大剣に攻撃をくわえる。
大剣が悲鳴を上げ始める。ミシミシという音がなり始めている
「これで最後だ!」
リンは、大剣に両方の刀を同時に叩き込んだ。
バンという爆発音と共に、大剣が粉々になっていく。そして、立花パーティアックの片腕を切り飛ばした。
肩で息をしながら、刀を立花パーティアックの首筋にたてた。足元は氷で凍らせて逃亡が出来ないようにもなっている。
「終わりだ!」
「リン兄。」
思いもよらない所から声が聞こえた。天井方向から人が一人とニンフが降りてきた。
「ユウ!」「リン兄。パーティアックは、こっちで処分する。リン兄が殺しちゃうと、世界のバランスが崩れるからね。」「そうなのか?」「うん。それに、もう何も出来ないと思うよ。パーティアックの強奪者としての力は、神剣に注がれていたからね。それが壊れた事で、奴は神としての力のほとんどをなくしているからね。」「そうか、それじゃ任せていいのだな。」「うん。リン兄が神々の住まう場所バルファラに来るまで待っているよ。」「あぁよくわからないが解った。そうか、マノーラ神。パーティアックの処分よろしくお願いします。」「うん。任せて!」
マノーラ神は、立花からパーティアックを分離して連れて行った。残された立花は完全に廃人の様な状況になってしまっている。それはそれで幸せだと思うが、そんな最後は望まない。
「マヤ。ウォルシャタは治せるか?」「うん。できるよ。でも、暫くは、このままでいいと思うよ。」「そうだな。まずは、後始末をしないとな。」「うん。ミルとタシアナが、僕に連絡してきて、かなり怒っていたよ。素直に怒られなさいね。」「あっやっぱり。」「うん。今回は誰も味方は居ないと思ってね。」「・・・やっぱりね。でも、解った、僕は、皆に愛されているのだね。」「そうだよ。僕を含めてね!」

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