【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

もう一つの物語.17

リンは、ミルを連れて、拠点に転移した。そこには、レウスとレイアが待っていた。
「レウス。カエサルは?」「はっアロイ街に行っております」「そうか、オルトは?」「開拓をしていらっしゃると思いますがお呼びしましょうか?」「あぁ頼む。それから、この女性は、ミトナル。ここの説明をレイア頼む。」「かしこまりました」「ミトナル様。かしこまりました」
「ミル」「わかった。レイアさん。お願いします。」「はい。ミトナル様。こちらに」「リン。行ってくる。」「うん」
ミルとレイアが部屋から出ていって、入れ替わりに、レウスに連れられた、オルトが入ってきた。「リン様。」「あぁポルタ村が全滅した。」「・・・・はい。お聞きしました。」「そうか・・・。誰がやったと思う?」「・・・・アゾレムの後継ぎだと思います。」「そうか・・・。サラナとウーレンは、居るのか?」「はい。先程目を覚ましまして、ここが安全だと解ると落ち着きを取り戻しております。」「そうか、話がしたいけど大丈夫か?」「・・・。」「どうした?」「まだ、おやめになったほうがよろしいかと思います。」「わかった、それでは、彼女たちが困らないように対応を頼むな。ウォルシャタ達の所業の生き証人だからな。」「はっ」「ありがとう。また後ですこし頼み事があるけど、それまで下がっていい」「はっ・・・。」「どうした?」「いえ、カエサル殿にお使いを頼んだことを咎められるのかと思っておりました。」「あぁアロイ街に行ってもらっているのだろう?」「はい。食料は魔物や獣で足りるのですが、野菜類や穀物が足りなくなってしまって・・・。あと、いろいろな道具も必要でして・・・。」「うん。いい。ドラウにも相談していいからな。」「ありがとうございます。」「ほかに、困った事はあるのか?」「いえ・・・。あとは、生活が安定してきてからだと思いますが・・・・」「なんだ、歯切れが悪いな。」「いえ、ここは女性があまりにも少なくて・・・。妻子にも会いたいと言い出す者が出てきておりまして・・・。」「そうか、そうだよね。ゴメン。気が回らなかったよ。妻子の件は、連れてきてもいいよ。アゾレムの街に住んでいるのだろう?」「はい。」「あっちに住みたいって言うのなら、それでもいい。妻子を連れて着たいのなら連れてくればいい。」「いえ、皆。ここの生活が気に入っております。」
間髪入れずにオルトはいい切った。拠点は、たしかにイスラ大森林の中にあり、不便でもあるが、アゾレムの様に過度な税を課しているわけではない。実際に、魔物に護衛をお願いしながら、大森林を拔ける事も可能なのだ。それは、アロイ街まで半日程度の場所にあるという立地にも関係している。
「そうか、それならいい。あまり派手にならないようなら、入植も行っていいからな。アゾレムとは一戦交えるつもりで居るし、気にするな」「ありがとうございます。皆にそう伝えます。」「あぁそうだ、オルト。貴族や商人に詳しい奴は居るか?」「ランベク隊長が居れば・・・いいのですが・・・。」「ランベク?」「はい。アゾレムの守備隊の隊長です。」「あぁそうか、寝返りそうなのか?」「はい。私の事で責められる事でしょうし、後継ぎの行動を諌めては男爵から叱責されていました。」「そうか・・・なんとか、ならないか?」「・・・リン様。私を、アゾレムに潜入させていただきませんか?」「そうだな・・・いいぞ。」「・・・いいのですか?」「あぁそうだな。カエサルが戻ってきたら、カエサルと行けば、万が一も無いだろう。」「ありがとうございます。」
オルトが出ていって、ミルが戻ってきた。「ねぇリン。ここすでに村だよ?」「うん。それが?」「だって、いいの?勝手に村を作って・・・。」「いいんじゃないのか?イスラ大森林の中だから、誰も確認に来られないだろう?」「まぁそうだよね。」
「ねぇリン。僕どうしたらいい?」「どうしたらって?」「寝る所とか・・・は、リンの横でいいのだけど・・・。」「うん。そのつもりだったのだろう?」「そうだけど、一応、ダメって言われたらどうしようかなって思っていたからね」「ミル。僕の横で寝ろ!」「はい!」
二人でお互いを見ながら笑いだした。
「そうだ。ミル。武器と防具がボロボロだったよね?」「う~ん。直せばまだ使えるよ。」「マガラ渓谷を探索するのには心もとないね。」「・・・・うん。」「ミル。この中から好きな武器と防具を選んでよ。」
リンは、地下室から持ってきた武器防具をミルに見せた。
「え”でも、これって・・・。」「いいよ。ミルに使って欲しい・・・。(僕の・・・。)」「何?」「なんでもないよ。好きな物選んでよ」「リンはどうするの?」
リンには、オルトやレウス達が作った建物を最初に割り当ててある。モンゴルの”ゲル”の様な建物だがベッドも用意してあるし、入り口は仕切りが作られていて、ドアを開けても奥がいきなり見えるような事はない。その中で、リンは防具を広げた。中に着る物もあった。
「ん?そう言えば、ミル。下着は?」「リンのエッチ。」「エッチって脱いだのは、ミルだよね?」「そうだけど・・・今、着けているよ。」「そう・・・。」「残念って思った?」「違うよ。」「いいよ。後で沢山見ていいよ。」「ミル。馬鹿な事言ってないで選ぼう。」「うん!」
武器は案外早く決まった。今のミルのステータスでは、なんでも使えそうだったが、一つ一つ鑑定していって、刀が一番いいなって、ミルも刀を一本装備した。防具は、それに合わせて動きやすい皮の防具を選んだ。胸の事を気にしていた。まだまだ成長期でこれから大きくなるとブツブツ言っていたが、丁度いいサイズの物が見つかって、それを装備する事になった。それぞれが魔道具化されていて、魔法的な防御も可能になっている物だ。リンも、防具を今の物よりもいい物に切り替えて、脇差しとなるような小刀を一本装備した。二刀流を使う気は無いが、2本持つ事にした。ミルは、刀の他に弓を装備する事にしたようだ。あと、杖も持とうと考えているようだ。
「なぁミル。杖って魔法の為だろ?」「うん。そうだよ。あると威力が違ってくるからね」「増幅とかしてくれるのか?」「う・・うん。そんな感じみたい。」「そうか、ちょっと待っていろ・・・ワク。居るか?」
影からワクが出てきた。
「なぁにあるじさま。」「あぁ。そうか、ロルフも一緒の方がいいか?ロルフ!」
ロルフもワクに続けて現れた。ロルフを見たときの、ミルの目が怖かったのは、この際無視する事にしたようだ。
「ロルフ。魔法を使うときの杖って媒体が入っていれば、なんでも使えるのか?」「はい。あるじさま。できれば、思い入れがある物とかの方がいいですね。」「そうか、それで媒体って何がいいんだ?」「一番はオリハルコンですが、まず無いでしょうし、ミスリルで、最低でも銀に、属性毎の石があれば最高ですね」「ほぉ石は複数でもいいのか?」「そうですね。一般的には、使える魔法が1属性ですから、一つでいいと思いますが・・・。」
ロルフとリンは、ミルを見つめる
「ミルは、使える属性は?」「白以外だよ。今は、でも、多分白も受けたりすれば使えるようになるとおもう。」「だって事だけど、ロルフどう?」「それでワクですか?」「うん。できると思う?」「はい。いい考えだと思います。」「石はあるかな?」「はい。ここにある物を使っていいのなら集まると思います。」
「ねぇリン。さっきから何を話しているの?」「ん。ミルの杖に変わる物を作ろうと思ってね。せっかくだから、全属性可能な物がいいかなって思ってね。」「え”作る?」「うん。それで、ワクに来てもらったのだよ。」「あるじさま。合成するの?」「あぁできるだろう?」「うん!大丈夫!」
リンは、ミルに持たせる物に、魔法の媒体となる石を埋め込んで、杖代わりにしようと考えている。丁度いいのが無いかと探していると・・・。
「ねぇリン。その媒体ってミスリルがいいのだよね?」「あぁオリハルコンがベストらしいけどな。」「石の大きさは?」「それは、ロルフどうなの?」「欠片でも大丈夫です。ミスリルが魔法の増幅をしますからね。」「ねぇそれってなんでもいいの?」「う~ん。ミトナル様の思い入れがある物がベストですね。」「そう・・・リン。これに付けられるかな?」
ミルが、リンに差し出したのは、ミスリル製の指輪とイヤリングのセットだ。
「ミルこれは?」「指輪は、おばあちゃんの形見で、イヤリングはお母さんの形見。」「え?・・・ダメだよ。ミル。これは出来ないよ。」「ううん。これにしてほしいの?ダメ?」
リンはすこしだけ躊躇したが、「・・・・わかった。ロルフ。石を集めてくれ」「はい。あるじさま。ってワクがもう全部の媒体の石を持っているよ。」「そうなのか?ワク?」「うん。あるじさまと魔物倒していた時に集めていたの!」「すごいな。偉いぞ。ワク!」「えっへん!」
指輪だけで、媒体の石が全部はめ込める事ができるので、指輪を杖代わりにする事にした。イヤリングは、ロルフからの提案で、体力の魔法を組み込む事にした。大きさ的に、緊急時対応ができるかどうかの魔法だが無いよりはマシだろう。指輪もイヤリングも、ワクに組み込んでもらって、ミルに渡そうとした。
「リン。指輪はめて!」
そう言って、左手を差し出してきた。そこまで鈍いわけでもないので、リンはミルの”左手の薬指”にワクが作った指輪をはめた。すこし大きいかなと思ったが、自動調整の機能が付いていて、薬指に綺麗にはめる事が出来た。
イヤリングは、二つともミルの耳につけようとしたが、一つはミルが受け取って、リンの左耳に付けた。リンも、ミルの左耳にイヤリングを付けた。
はめられた指輪を見て喜んでいるミルを見ながら、リンも心から喜びを感じていた。武器の一種でもあるが、それでもミルの指にはめられた指輪は心なしか輝いていた。
「リン。ありがとう。」「ううん。ミルが喜んでくれて嬉しいよ。」「すこし試してみたいけど、いい?」「う~ん。ロルフ。」「は~い。」「外にレイアが居ると思うから、ミルと3人で近場を廻ってきてくれ。ロルフは、レイアを探して待機させておいてくれ、ワクは影に戻って・・。」「は~い」「わかった!」「ミルもそれでいいよね?」
ロルフが外に出て、ワクが影に戻った事を確認して
「うん。それじゃ着替えるね!」「え”?」
そう言うと、ミルは今来ていた、サビニの服を脱いだ。インナーとしてシャツは着ていたが、全裸だ!
「ミル。下着は?」「見えない?リンには見えない下着かもね!」「ミトナル!本当に・・・犯すよ!「いいよ!その代わり責任取ってね」」
食い気味に言ってきた。リンは、何を言っても負けるような気がしている。今度、サラナとウーレンが着たら、ミルと3人連れて、ニグラで下着や服を買わせようと心に決めた。ついで、ロルフとワクのヒト型の時の服とかも見繕ってもいいかもしれない。レインは、マガラ渓谷の探索をしていれば自然と貯まるだろうと思っていた。
「わかった。ミル。いいから着替えよう。」「うん!」
ミルは、防具を一通り身につけて、下着ではなくスパッツの様な物を身に着けてから、腰回りと足の防具を身に着けている。結局下着は身につけないつもりのようだ。ブラを付けないのは必要ないからだろうとリンはココロの中だけで思った。
「リン。今、何か失礼な事考えなかった?」「(びっくりした。なんで解るのだ!)何?何も思っていないよ。ミル。綺麗だなって思っていただけだよ」「本当に?」「本当だよ。」「そう・・・それならいい。」
それから、武器を身に着けてから「リン。すこし試してくるね。」「あぁ無理しないようにね。ミルまで居なくなったら怒るからね。」「うん。解っている。リンも一人にはしないよ。」「・・・うん。いってらっしゃい。」「行ってきます。」
カエサルが戻ってきたようだ「リン様。ただいま戻りました」「うん。お疲れ様。何か困った事はなかった?」「大丈夫です。」「そうか、早速で悪いのだけど、オルトを連れてアゾレムに行って欲しい。」「かしこまりました。」「内容は、オルトが知っているから、彼と話をして詳細を決めて欲しい。」「はい。」
入れ替わりに、レウスが入ってきた。「リン様。」「どうした?」「ドラウ殿とヒューマ殿とエルフのゴルド殿が面会を求めて居ます。どういたしましょうか?」「問題ない。入ってもらって」「はい。かしこまりました。」
ドラウを先頭に、ヒューマとゴルドが入ってきた。
「どうした3人で?」「今後の事をご相談に着ました。」「今後の事?」「はい・・・。」
ドラウとゴルドが言うには、リンに”両方の村をまとめて欲しい”という事だ。アゾレムを始め近隣のトリーア王国の貴族が、最近エルフや獣人の子供や女を攫っては奴隷にしているという話だ。連れ去る所を見れば抵抗する事もできるが、自分たちから攻めるような事が出来ない。この状況が続くようではおおきな問題になってしまう。そこで、リンがマガラ渓谷を攻略して、神殿を解放する事が条件にはなるが、両方の村を一つにまとめて欲しいという事だ。安全に過ごせる様になる見返りは、両方の村の住民の絶対の忠誠だという事だ。ヒューマからは、それができるようになれば、意識有る魔物が集まってくる事も考えられる上に、ゴブリンやコボルトといった低位の魔物も集まってくる事が考えられるという事だ。リンがやろうとしている事をサポートする戦力に繋がるだろうという事だ。
なんにせよ。安全に過ごす為のスペースとして、マガラ渓谷の攻略と神殿の解放は絶対条件になってくる。
「わかった。その提案は受けたいと思う。なんにせよ。マガラ渓谷の攻略と神殿の解放が出来てからにはなるが・・・な。」「よろしくお願いいたします。」「よろしくお頼み申す」「もし、今でも問題が有るようなら、一度、ポルタ村の跡地に移動して、出入り口を固める様にしてもいいぞ。滅ぼした村に再度来ようとはそんなに思わないだろうからな。」「あっ村に戻ってから相談したいと思います。」「儂もそうしたいと思います。」
「ヒューマ。村の出入り口は固めてあるのだよな?」「はい。守備隊の10人や20人位なら大丈夫です。」「わかった。」
「それでリン様。いつから行かれるのですか?」「マガラ渓谷か?」「はい。」「夕方くらいに、アロイ街に移動して、暗くなってから、渓谷に黙って入ろうと思っている。」「そうですか・・・。解りました。吉報をお待ちしております。」
「あぁ楽しみに待っていていいぞ」

「【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く