もう一つの物語.05

「リン。帰ったか？」
玄関で馬鹿でかい声が聞こえてきた。
「ニノサ。リンは今疲れて寝ているから静かにして...」「あぁ悪かった。」
リンは、外の雰囲気からニノサが帰ってきた事を察した。身体がだるくないと言えばウソになるが、気を取り直して、動くのなら早いほうがいいと思い直して、ベッドから起き出して、
「父さん。ただいま。」「あっほら、ニノサ。リンが起きちゃったじゃない」「大丈夫だよ。母さん。すこし前に目が冷めたからね。父さんの”馬鹿でかい”声で起きたわけじゃないよ」「おまえな・・・・あぁそうだ。無事パシリカは終わったのか？」「うん。でも・・・。」「どうした？」「ステータスを見てよ」「いいぞ・・・。あぁぁそうか・・・。サビニ。おまえも見たのか？」「いえ。私は見てないわ。」「そうか、俺よりもおまえのほうがいいかもしれないな」「解った。リン。見るわよ」「うん。わかった」
サビニがリンの手に触れて何やら見ている。
「あぁそうね。リン。もしかして、何か隠蔽していない？」「え”？」「そうなのね。あなた。」「あぁやっぱりな。リン。俺のステータスを見たことはないよな？」「うん。」「見てみろ。」「うん」
真命：ニノサ＝フェルテ・フリークスジョブ：動物使い体力：580魔力：780腕力：970敏捷性：450魅力：220魔法：青(6)・赤(5)・黄(3)・灰(4)・黒(5)スキル：短剣武技、長剣武技、弓武技、盾武技ユニークスキル：動物との会話(1)
「え”」「そうだ。ジョブがおまえと同じだ。それから、おまえが、多分俺と同じユニークスキルを持っていると思っている違うか？」「・・・・・うん。隠蔽が有ったから、ヤバそうな物は全部隠した。」「そうか、サビニ見えたのか？」「ううん。リンの隠蔽の方が上みたいで、私の鑑定では見破れなかった、何か違和感は有ったけどね。」
それから、ニノサとサビニは、リンにステータスやスキルの使い方を教え始めた。
「あっそうだ、ナナさんからこれを貰ったんだけど、俺が持っていていいの？」「ナナ？あぁアスタか、勿論だ。おまえのパシリカ記念にしようと決めていたからな。ユウの分もあるから遠慮するな。」「うっうん。でもいいの？とんでもなく高いんでしょ？」「気にするな。そのくらいの事くらいはしてやるよ。」
「ねぇ父さん。俺強くくなりたい。」「どうした？急に」「急って事はないと思うけど・・・。」
シュトライトに頼まれていた事を、リンはニノサに話をした。勿論、サラナとウーレンの事を含めて全部を話した。
「そうか・・・解った、でも、おまえが無理に強くなる必要はないんだぞ」「ううん。今回の事はきっかけでしか無くて、俺は強くならなきゃならないんだ。」「・・・・そうか、あぁサビニ。ドラウ殿の所にリンを預けたいと思うけどいいか？」「そうね。」
二人で何なら考え込んでいる。リンは、その間は黙っている事にしていた
「リン。おまえ、魔物に関して、どこまで知っている？」「魔物って、魔核を持った動物の事？」「そういう認識なのか？」「うん。」「そうか・・・。」
ニノサは、リンに魔物と動物の違い。そして、魔物が魔核を持っている事の意味を話をした。その上で、魔物の中には、出来た魔核が何らかの方法で外れてしまったり、一部意思を持つ魔物が居る事が確認されている事。そして、問題はそれらの魔物ではなく、ネームドと呼ばれる、名前を持つ魔物が存在している事を話をして聞かせている。
「上位種になればなるほど、魔核がなかったり、意思がある魔物が多くなるって事？」「そうだ、それならの中には、名前を持っている魔物も居る。ごく一部だが、俺もしっている。」「え”そうなの？」「あぁそうだ。」「へぇ・・でも、どうして？」
リンが疑問に思うのは当然の事だ。今の話の流れで魔物が何者なのかなど関係がない。話の筋がつながらないのだ
「魔物に関しては、意思ある者の場合には、会話が成り立つとおぼえていて欲しい。」「うん。わかった」「意思があれば、今度は集団生活をする事だって出来る」「そうだね。でも、それならゴブリンやコボルトだって、集団で生活をしているよね？」「あぁそうだな。でも奴らの場合には、意識して集団になっているわけではなく、集団の方が安全だからという側面の方が強い。だから、敵わないと見ると逃げるのが常だ」「そう言っていたね。」「あぁでも意識有る者達の集団だと、力ある者がほかを逃がすために戦う事もある。そういう意味では、ヒト族と変わりがない。」「うん。」「そして、ここからが本題何だけどな」「うん」
ニノサは一呼吸置いて
「リン。おまえ強くなりたいか？」「当たり前。父さんの様に強くなりたい。」「そうか・・・すこし辛いかもしれないけどいいんだな。」「うん。問題ない。早く強くなれるのなら、其の方がいい。」「そうか・・・・。明日、俺と一緒に、イスラ大森林の中にある。ドラウ殿の村に行ってもらう。」「ドラウ殿の村？」「あぁびっくりするぞ！」「え？」「ドラウ殿は、ダークエルフ何だけどな。それ以外の住人が、さっき話をした意識有る魔物や獣人達だからな。」「え？？？」「リン。おまえ、自分ののジョブが”動物使い”でがっかりしただろう？」「・・・・・・・。」「いいよ。正直、戦闘向きじゃないからな。でも、俺はそれでも、なんとかここまでこれた」「うん」「おれが天才だったって事も有るけど、若い時に一度ドラウ殿にジョブの事や魔法の事をいろいろ教えてもらって、それで・・・な。いろいろ有って、いろんな人に助けられながら、サビニの一緒に慣れたんだ。」「へぇその辺りの話は、ナナさん聞こうとしたら、ニノサとサビニに聞いてって言われたけど、いずれ話してくれるんでしょ？」「そうだな。おまえが、ドラウ殿の所から帰ってきたら話してやる。」「約束だよ。」「あぁ必ずな」
リンとニノサは握手をした。リンとしても、強くなるための手がかりがつかめるのは嬉しかった。
善は急げという事で、リンとニノサは明日の朝には、ポルタを出てイスラ大森林の中のドラウ殿の村。魔物の村と呼ばれているらしいが、魔物の村に向けて出発する事になる。魔法の袋マジックポーチの中に日持ちするような食料や水を詰めて二人だけで旅立つ事になる。家の事も心配だったが、サビニが居るから大丈夫だろうという事になった。
全行程で1週間程度は日数が必要になる。帰ってくるのは早くても、1ヶ月後。リンが満足出来なければ、2～3ヶ月後になる。
今日は、サビニが作った料理をいっぱい食べて、早く寝る事にした。
翌朝「母さん。ユウ。それじゃ行ってくる。」「うん。リン兄。行ってらっしゃい。気をつけてね。」「リン。無理しないようにね。行ってらっしゃい。」「ありがとう。」
リンは、ユウとサビニを抱きしめてから、ニノサが待っている所まで早足で後ろを振り返ること無く駆けていった。
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「おまえ知っているか？」「何を？」「青い髪をした剣姫の話だよ」「あぁなんだ、アロイに住んでいて知らない奴はいないと思うぞ」「この前、アゾレムの所のなんとかって役人が声かけていたけど、一切無視したようだぞ」「へぇそりゃぁ見たかったな。でも、あの青剣姫。誰かを待っているんだろう？」「あぁそんな事を言っていたな。」「男か？」「さぁな。でも、大したものだと思うぞ。」「そうだな。今年パシリカ受けたばかりなんだろう？」「そういう話だな。もうマガラ渓谷を一人で越えられるんだろう？」「あぁ今は、毎日マガラ渓谷の奥に入っていっているみたいだぞ」「本当か？」「あぁラーロの所に宿を取っているみたいだけど、そこで聞いた話だから間違いない。」「青剣姫は、何が目的なんだろうな。本当に・・・」「・・・。」
そこに、マガラ渓谷から帰ってきた、青い髪の女の子が通りかかった、着ている防具は魔物の血で汚れているが、髪の毛は埃や土で汚れては居るだけで、顔や身体には傷一つ受けていない。
（凛君。僕は、強くなる。貴方に殺されるかもしれないけど、言わなければ、話さなければならない事がある。凛君。）