【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

和平交渉

ローザスとエミールが、捕縛している貴族の罪状を読み上げている。よく覚えているなと思って居たら、カンペが出ていた。まぁそのくらいはしょうがないだろう。
罪状の読み上げが終わった。それまで目を閉じて聞き入っていた、陛下が目を開いて「マノーラ侯爵。」
僕に話しかけてきた。そんな予定は無いと思っていたら、アデレードから念話が入った。アデレードは今日は来ないはずだった・・・。
『リン。父上は、ローザスに罪状を決めさせないつもりじゃ』『アデレード?』『さっきまで父上に相談されていたのじゃ。遅くなって悪かった。』『いいよ。解った。陛下が何をいいたいのか・・・。』『悪いが頼む。』『いいよ』
「はっ陛下。」「そちはどう思う。」「はい。陛下。実際に戦った僕の意見としては、ホレイズ伯爵に代表される貴族は、領民を家畜とみなしている感じがしております。そんな方々が心を入れ替えて領民側に立った統治が出来るとは思えません。貴族家の当主並びに後継ぎは死罪。それ以外の方は流刑でどうでしょうか?」「流刑地はどこが適当だと?」「はい。恐れながら、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラがよろしいかと存じます。」「ほぉおぬしの領地ではないか?」「はい。そこに鉱石を採掘するための街がございます。そこで労役を務めさせるのはいかがでしょうか?パシリカ前の子供は、私の学校で下働きをさせてるのが良いでしょう。今までどのような教育を受けていたのかわかりませんが、平民や商人や奴隷の子供に混じって過ごせばよろしいかと・・・。」「それでは、そちの命を狙うやも知れんぞ」「構いません。私の命一つを取って、満足ならそうすればよろしい。勿論、その場合にはどうなるのかを考えてから行動してほしいですけどね」「なるほどな。」
「ローザス。侯爵はこう言っておるが、そちはどう思う。」「・・・。マノーラ侯爵の考えがよろしいかと・・・。」
「お待ち下さい。陛下。」「なんじゃ。宰相。おぬしは、まだ休養中ではなかったのか?」「はい。ですが、このような大事な時に、出席しないのは、宰相という地位を頂いているのですから、体調が悪いなどと言っていられません。」
伯爵や子爵家がすこしだけ安堵した雰囲気が流れてくる。宰相が自分たちを助けてくれると思っているのだろう。
次の宰相の言葉で謁見の間の時間が止まった「今回の内乱で、侯爵に捕縛された貴族や貴族の関係者及び教会関係者と豪商は、全員死罪。女性と子供は毒殺で、それ以外は、打ち首が適当かと思います。」
「なっ」「宰相。」僕も、ローザスも固まってしまった。宰相は言葉をつなげる
「これだけの混乱を起こしたのです。陛下、ご退位されて、ローザス殿下に禅譲なさいませ。私の地位も、ミヤナック家のハーコムレイ殿ならば問題なかろう。」
「・・・。」
「伯爵達が死罪になるのですから、それを止める事が出来なかった者も責任を取らなければなりません。」
「そうだな。宰相の言う通りじゃ。余は退位して、ローザスに新しいトリーア王家を導いて貰おう。」
場の趨勢は決した。ただ、全員死罪というのはやり過ぎだとはおもう。
『リン。このまま兄様に禅譲した時に、兄様とハーレイの名前で、恩赦を出すようにさせると言っていた。』『それじゃ僕がかっこよく言ったのは無意味だったの?』『ううん。宰相は、リンが全員死罪とは言わないだろうって言っていてね。そうなったら、宰相が死罪を言い渡すって言っていたんだよ。』『う~ん。そうか、解った。』『なんじゃ納得出来ないのか?』『そうじゃないんだけどね。それじゃ僕がいい人っぽくなっちゃうなって思ってね。』『あぁ宰相は、リンや妾達の事をほぼ正確に把握していて、ハイ・エルフ以上の寿命が有るんだろうと見ていて、トリーア王家を今後数百年単位で見守って欲しいと思っているぞ』『お目付け役ね。』『そうじゃな』『まぁ僕のテルメン王家とトリーア王家の和平交渉もしなきゃならないし、その前哨戦は宰相に一本取られたって事だね』『そうじゃな』『でも、負けっぱなしは好きじゃないから、何か手土産を渡さないとね。』『あぁそうじゃな。』『うん。また後で相談に乗ってね。』『了解。』
それから、宰相と陛下の話が進んでいく。置いてけぼり感はあるが、それ以上に不安で押しつぶされそうな状態になっている面々は、陛下の号令で全員立たされて、謁見の間から外に連れ出された。謁見の間の扉が閉められて、陛下がおもむろに
「リンよ。」「はっ陛下。」「おぬしの勝ちじゃ」「へ?」「丁度、今日で約束の6ヶ月目になる。だから、おぬしの勝ちで、余と宰相は引退する。」「それは・・・。」「なんじゃ、おぬしは、余と宰相に約束も守れない愚か者になれというのか?」
「リン。無駄だよ。父上と宰相は、こうなる事が解っていて、根回しをしていたようだからね。」「ローザス。それは・・・。」「あぁ禅譲までの予定表だよ。おまえの分もある。」「・・・。」「大丈夫。おまえを宰相にしようとか思っていないからな。宰相は、ハーレイにさせる。これはもう規定路線で奴は逆らえない。それから、ミヤナック家も、ハーレイが伯爵になる事が決定した。」「そうか・・・。」
スケジュールを見てみると、ローザスの婚姻式と書かれている。
「ローザス。おまえ、結婚するのか?」「あぁ国王になってから后を迎えるといろいろ面倒になりそうだからな。」「へぇおめでとう。誰?僕の知っている人?」「そうだな。おまえには、後で合わせる。ミル嬢やエミール嬢も一緒に来ればいい。」「わかった。」
「リンよ。そこで一つ頼み事が有るのじゃが?」「はい。何でしょう?」「なに、そんなに難しい事ではなく、余も・・儂も、宰相と同じように、おぬしの海岸街の別荘地に屋敷がほしいんじゃが用意してくれんか?」「えぇいいです。広さはどうしましょうか?あと、施設は?」「そうだな。広さは宰相の屋敷よりも大きければいい。施設も・・・そうだ、おまえの所にあった風呂と遊技場は欲しい。あと、プールも作ってくれ。」「わかりました。支払いは、ローザスにつけておきます。」「あぁそれで頼む。」
どうやら、海岸街の警備体制を、一段階引き上げる必要がありそうだ。詳細な話は後日となって今日はこれで謁見の間での話は終わった。
ローザスとハーレイが、すこし話があるという事だったので、場所を移動して話す事になった。
部屋に入って、いきなりハーレイが頭を下げた「リン=フリークス。今回は本当に世話になった。」「辞めて下さい。僕は、僕に出来る事をやっただけです。それに、ハーレイとローザスにはいろいろ世話になりましたから、すこしでも恩返しができればと思っているのです」「そうか、俺やローザスは、おまえに・・・イヤ、お前たちに返しきれない恩を受けた。なんでもとは言わないが、出来る事ならなんでもする事を約束しよう。」
場になんとも言えない雰囲気が流れるドアがノックされた。ローザスが立ち上がって、ドアを開けて女性を一人誘導してきた。僕やミルがよく知る人物だ。
「え?なんで、フレット?何しに来たの?」
その言葉を無視するように、ローザスの隣の席まで行くと、優雅に一礼して、「リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラ侯爵様。お初にお目にかかります。今後よろしくお願いいたします。」それだけいうと席に座った。ミルは知っていたようで、笑いを堪えている「リン君に紹介する。フレット・コンラート。もうすぐ、フレット=コンラート・フォン・トリーアになる。世間一般では、アルフレッド夫人と呼ばれる事になる。」
にこやかに、ローザスが笑いかける。
「・・・・。いつから?」
それだけ聞くのが精一杯だった。ハーレイが笑いながら説明はしてくれた、当初からコンラート家と王家の間での婚姻の約束は出来ていたそうだが、宰相との確執などもあり婚約の話が伸びていて、自然消滅になっていた。だから、最初に有ったときにも微妙は雰囲気が流れていた(らしい)。その後は、何もなかったんだが、ファンがカルーネにベタ惚れをしていて、それをからかうために、マガラ神殿に通うようになって、フレットとローザスで話すようになって、婚姻するまでの仲になったんだという。ついでに、ファンとカルーネも付き合いだしているという話だ。こちらは、まだ婚姻の話にはなっていない。そして、びっくりしたのが、アルマールとウノテさんが付き合いだしているという話だ。なんでそんな事になったのかはわからないらしいが二人でデートしている所を、何度も目撃されているらしい。
そんなゴシップ情報を一通り聞いてから、「それで、フレットはどうするの?」「ん?どうするって?」「あぁそうね。まだ考えているよ。マヤにも相談しているんだけど、まだ結論が出ないんだよ。でも、ローザスは、リン達とは違うからこのままでもいいかなって思っているよ。」「そうだね。その方がいいだろうね。後は、白い部屋の問題だけだね。」「うん。それも、マヤの話だともしかしたらなんとかなるかもって言っていたよ。」「そうなの?」「うん。マヤが、トリーア王家の話が終わったらリンと話をするって言っていたから、もうすぐ話が来るんじゃない?」「わかった。ありがとう。そして、フレット。おめでとう。」「うん。ありがとう。ダメな人だけど、リン。これからもよろしくね。」「あぁ僕が生きている間は、トリーア王家を見守るって約束するよ。」「それが一番うれしいよ。」
フレットとローザスに子供が出来れば、その子供が王家を紡いでいく事になる。僕は多分”死ねない”だろうから、その子供を孫を見守っていく。あぁアデレードがいいたかった事はそれなんだね。
僕は、恐れられながら、でも恐れられすぎないように、頼られすぎない様にしないとならないんだね。
「ローザス。ハーレイ。もう一人この場に呼んでいい?」「あぁオイゲンだろ?今、呼びに行かせている。」
やっぱりそうか僕達は、立花ウォルシャタとの決着が付いたら、島に引っ込む必要がある。それは解っていた。永遠に近い命を持つ者たちが政治に関わるべきではない。当然の事だ。政治は、その時代。時代で一番力があり優秀な者がやるべきなんだ。
ドアがノックされて、オイゲンとエルフリーデが入ってきた。それから、やはり知らされていなかったオイゲンがローザスとフレットの婚姻にびっくりしていた。同級生の結婚をこんなに早く聞くとは思っていなかったと言っていたが、なぜかミルがすごく拗ねていた。
そんな瑣末な事を話してから、僕とオイゲン達の領地を没収する事が決定した。ただ没収では事情を知らない貴族や国民が納得しないだろうという事で、ローザスが国王になる時に、僕もテルメン王家の初代となる事が告知される。これは決まっていた事だが、その為に、トリーア王家の侯爵の地位を返上する事になったと国民に理解を求める。ただ、終身顧問という形で名誉職としての地位を与えられる事になる。オイゲンは、トリーア王家に残るよりも、マノーラ侯爵についていくと宣言して、男爵を返上してテルメン王家に移動する事になる。僕とは事情が違うので、オイゲンの場合には男爵の返上では認められなくて、男爵のままになって養子を迎えて、その者に男爵家を継がせる事になる。オイゲンの養子の件はまだまだ先の話しになる。
テルメン王家とトリーア王家の取り決めを決めていく事になる。税に関する事や神殿の取り扱い。ギルドの取り扱いなど細かく決めなければならない。僕とローザスとハーレイでは決められない事も多いので、両家の関係だけ僕とローザスで話をして、それ以外の事は、それぞれの対策チームを立ち上げて検討していく事になる。

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